Ep.02【05】「メイドはつらいよ」






「きゃーーーーっ♥かっわぃーーーーっ!!!」

リオとセスティアのメイド服姿を見て、店員一同が口を揃えてはしゃぐ。

「リオナちゃん、完全にツンデレっ娘系じゃん!!ツーサイドでリボンも白だから超似合うぅぅ!

・・・・でさ、ティアちゃん・・・・ヤバくない?金髪で褐色系メイドとか激萌えしかないんですけど!?

しかも、なにこの乳袋ぉ!犯罪じゃん!これ完全はんざいだよ!」

ミカは二人のメイド姿を見てから、興奮しっぱなしだ。

「でも・・・・・この服、ちょっと小さいかなーって。ねぇ姐ぇさん?」

と悪意など微塵もないセスティアがリオを見て尋ねる。

リオも特段、胸が小さい訳では無いのだが・・・何となく理不尽な気分になっていた。

「うっわー・・・でも確かにコレ・・・すごっ・・・!ティアちゃんサイズ幾つなの?」

セリアが物珍しそうな顔でセスティアに聞くが

「へ?測った事無いですよ?ブラとかあんま付けないんで」あっけらかんと答える。

この答えを聞いた瞬間、店員全員がドン引きだったのは言うまでも無い。

「あ・・・・・アハハ・・・あーそうなんだ・・・へー・・・・」とセリア

コホンと咳払いをして、セリアは気を取り直し言う

「んじゃ、ホールのお仕事教えるね。付いてきて!」

そういうと、店内作業をテキパキと教え始めた。

一時間も経った頃、店は本日の営業時間を迎える。

ドアを開け、表の看板を「なぅ♥OPEN!」に変えると、店内に雪崩の如く客が押し寄せる。

一瞬にして店内は満席となり、あまりの熱量にリオとセスティアは気後れしてしまう。

「ほら!2人とも!ステージに!」とセリアに背中をグイグイと押され

半ば強引にステージに立たされる。

「はーぃ!御主人様たちー!今日からお使えする新しいメイドさんでーーーす♥!」

セリアが何処からともなく取り出したマイクで紹介を始めた。

瞬間、店内の客全員から悲鳴にも似た怒涛の歓声が轟く。


「うぉおおおお!!!すげぇえええ!!」

「せ・・・拙者、感動でゴザル!」

「ああああああっ!神様ありがとうございますぅぅ!」

「ねぇえええ!!!!名前なんて言うのぉ!!!!」


とにかく、ありとあらゆる歓声が2人を包んだ。

「はーーい、落ち着いて御主人様たちーっ!では一人ずつ、御主人様にご挨拶ー」

と言うや、リオはいきなりマイクを手渡さえる。

「な・・・・なにを言ったら・・・・?」突然の事で思わず口ごもるが

「あー、テキトーに名前とか元気にこんにちはーとかでOKよ♥」

セリアがウインクしながら言う。

異様な熱気に気圧され、いまいちモゴモゴしながらも

「ぁ・・・・あの、リオナと申します・・・・今後ともヨロシク・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・おねがいひます」最後は噛んだ。 


 『 う ぉ お お お お お お お お お お お お!!!!! 』


店内がさらなる歓声で揺れる。

「はーい、では次ーっ」

歓声を物ともせずセリアはセスティアにマイクを渡す。

「セス・・・じゃない、ティアでーーす♪ よっろしくぅううーーーー♪♪」

セスティアはノリノリでぴょんぴょんと跳ねながら自己紹介する。

その度にあまりにも豊かな胸が普段以上に揺れ、先程ちょっと小さいと言っていた

制服から零れ落ちる勢いだ。


『 グ ぉ お お お お お お お お  お っ ぱ っ っ !!! 』


先程を上回る狂気めいた歓声が上がり、リオは少々の恐怖さえ覚えた。

コイツ・・・実はバウンティハンターよか、こっちのほうが向いてるんじゃ・・・とさえ思う。

「はい、では順にテーブルにご挨拶に向かいますので、大人しく待っててねー♥」

セリアがそう閉めると、更にもう一段大きな歓声が上がる。

リオは思う・・・・この熱気・・・・他に使えば良いのにと。

 

それからは、まさに目が回る忙しさだった。

各テーブルを廻り、ありとあらゆる質問攻めや何だか意味不明なやり取りを繰り返す。

「リオナ殿!拙者、ツンデレメイドに弱い侍っ!『ば、ばかっ!そんな目で見ないで!』って

言ってくれませぬか!?」や

「うっわぁあ!ティアちゃん、マジ胸大きいですねぇ!!触ってもいいですか!?」と聞かれ

「え?ベツにいいですよ~」と答えかけて、セリアが慌てて止める等など・・・・。

とにかく、その熱量の高さは2人を疲弊させるには十分だった。

そして、新しい客が入店すれば、また同じ作業を繰り返す。

当初はテンションの高かったセスティアでさえ、今は疲れた表情を浮かべていた。

「うわ・・・まだお客さんいっぱい待ってるよぉ・・・・・・」とセスティアが泣き言を言う。

「拷問よね・・・きっと新手の拷問よ・・・きっと」何か違う世界が見えてる目でリオが呟く。

そんな2人を見かねて、ミカが耳打ちをしてきた。

「いま、パパっと(控室に)下がって、休憩してきなよ!ここは大丈夫だからさ!」

「ア、ハイ・・・」何故か固い返事をするリオ

「うへぇーい・・・・」疲れで変な返事になるセスティア

二人は歩きながら客に聞こえないよう、小声で話し始める。

「ティア・・・アンタ、ステージでぴょんぴょん跳ねすぎ!胸揺れすぎて客の目がヤバかったわよ」

と疲労困憊の表情でリオが言う。

「え~?でも皆さん喜んでましたよ~ 姐ぇさんこそ、自己紹介で噛んじゃってましたよね~?」

と同じくヘロヘロのセスティアが反応した。

「うっさい!あれは熱気に気圧されたの!・・・ったく、何なのこんな拷問みたいな仕事・・・」

例えバウンティハンターで失敗しても、絶対にメイド喫茶は止めよう!とリオは心に強く誓う。

「テンション凄いよねぇ・・・・なんかずーっとお祭りやってるみたい」

と呑気なセスティア。

「こういう熱気は社会貢献に使えばいいのよ!とリオは怒気さえはらんでいた。



2人は疲れた身体で足早に控室へと消えていく。


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