Ep.02【04】「メイドさん爆誕!!」





事務所を出ると店内の灯りが点けられて、中の様子がハッキリと判る。

外の派手な様相とは異なり、落ち着いた”古き良き時代”の喫茶店を彷彿させる装い。

椅子やテーブルは本物のオーク材が使われており

白いクロスが掛けられたテーブルの上にはメニュー表のみが置かれてる。

ただ、奥には何故か小ステージがあるのが気にはなるが・・・。

一同がキョロキョロと物珍しそうにしていると、奥の従業員控室から

先程のポニーテールの女性が現れ、大きく手を振る。

「おーーーーっ!新人ちゃんだぁ!!!スゲーッ!今回は2人同時!?」

キャッキャとその場でクルクル回り、どうにも喜びを隠しきれない様子だ。

「はっっはーっ!!セリアくん!!見たかね!ボクの実力ぅぉ!!!」

サル店長が右手で髪をかき上げながら言うが、セリアは全くの無視。

「えっとぉ!何ちゃんと何ちゃん!?まずはお名前から!!!」

サル店長に負けず劣らずのテンションに

リオとセスティアはすっかり威圧されていた。

「あ・・・えっと・・・リオです。で、こっちがセスティア・・・」

とリオが紹介する。

「OKぇ!リオちゃんにセスティアちゃんか!!!!いい名前だね!!!

でもさ、お店では源氏名なんだよねぇ・・・ほら、コンプライアンス?的な?」とセリア

「素敵な名前を隠すなんて無粋の極み・・・・ここはそのまま・・・」

と、サル店長が言うのを完全に無視してセリアが畳み掛ける。

「んじゃ、リオちゃんは、んまぁ・・・・「リオナ」ちゃんでぇ・・・・セスティアちゃんは・・・・あー・・・長いしなぁ・・・・「ティア」ちゃんで!」

と勝手に源氏名を決めてしまった。

いや、安直だな!と心でツッコむが、よくよく考えたらセスティアの愛称って

元々「ティア」だしなぁ・・・等とリオは思う。

「じゃあ、「リオナ」ちゃんと「ティア」ちゃん!こっち!他のスタッフ教えて

衣装合わせて、お仕事内容説明するから、ついてきて!!!」

セリアは軽やかな足取りで2人を更衣室へと誘った。

「あ・・・・・はい」と2人の後に付いていこうとしたハヤテをサル店長が引き止める。

「いや、君はこっちで」

先程のテンションがウソのような落ち着いた口調でハヤテを呼び止めた。


「みんなーっ!新しい子二人入ったよー!!!」


セリアは更衣室を開けるなり大声で紹介を始める。

更衣室の中には3人の若い女性達が開店準備のため衣装に着替えていた。

それぞれが挨拶する中、金髪をツインテールにした女性が近寄ってくる。

「あたし、ミカ!本名もミカ・イトウってんだよね!!ヨロシクぅ!!!

名前とか同じなんだけどさぁ、まーぁアタシ、源氏名とか覚えらんねーし!」

リオはセスティアにこっそり目配せをする。

この娘(こ)が保護対象だ・・・と。

それにしても、やはり依頼にあった「誘拐」には程遠い雰囲気だ。

誤情報?とも考えたが、いまいち確証が得られない。

そうこう思案してると、セリアが奥のロッカーから小走りで衣装を持ってきた。

「はい!ここの衣装!!二人とも着てみて!!!」

持ってきたのは、アンティークな香りすらするモノトーンのメイド服。

何となくだが、初めて着る可愛い感じの服にときめく物を感じるのであった。

「あー・・・ドロイド君、今日から君にはここの経理管理をやってもらう」

サル店長 ゴロウ・タカギは先程の態度とは違う高圧的な態度でハヤテに指示する。

内心ムカつきながらも、レベルの低いドロイドを装い、指示に従う。

「了解しました。ではまず、こちらの状況確認を致しますので端末をお借りします」

ハヤテは平坦な声で返事をし、早速端末のアクセスポートにチューブアームを刺し

全体の状況を把握し始める。

「決して間違えるなよドロイド君。売上金が合わないと事だからね」

そう言い放つと、ゴロウは店長室から出て行ってしまった。

「つーかよぉ、数分前に合ったばかりのドロイドにいきなり経理任せるかねぇ?」

呆れつつ、高速で端末内の情報を走査開始。

数秒後、ハヤテは経理内容におかしな部分を多数発見した。

「あん?・・・なんだこりゃ?どんぶり勘定も大概ひでぇが・・・こりゃあ・・・」

これは色々と変な部分があるとハヤテは確信した。


「この店・・・・・オメガの下部組織と繋がってやがるのか・・・・・」


一筋縄ではいかねぇかもな・・・・ハヤテはホロ・ディスプレイを見ながら考えた。


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