Ep.01【10】「高かったんだからぁ!」


 


「なに!!!アレ!!!なんなのっ!?」

セスティアは聞かずにはいられなかった。

唯の火薬式拳銃にあんな威力は絶対に無い。

魔法?んなのはゲームかファンタジーだ。

爆薬?拳銃から?

とにかく、セスティアの頭の上には???のマークが飛び交っていた。


「・・・・・・・・トールハンマーよ」


リオは運転しながらボソっと答える。

「『トールハンマー』ってのは、拳銃弾に超高性能の化学爆薬を詰めた弾の事だよ。

一発で対戦車ロケットの威力と互角の破壊力を持ってんだ」

ハヤテが肩をすくめて事も無げに説明した。

「え?え?・・・・なにソレ・・・すごくない??」

セスティアは呆気にとられた顔で言葉を絞り出した。


「高いのよ・・・・・・」


正面を向いたままのリオが、またもボソボソっと答える。

「まぁ・・・・・トールハンマー一発で10万クレジットすっからなぁ・・・」

とハヤテ

「それを・・・・・・・そんなに高いのに・・・・8発も・・・・・・・

くっ・・・・・・!」

リオは心底悔しそうな声で手をワナワナと震わせていた。

「ま、まぁ・・・・でも、ピンチは脱した訳だし・・・・

ねっ?元気だして!ねっ?」

セスティアはリオを宥めようとしたが、リオの深い悲しみは止まらなかった。


「ずぇえええええええったい!アンタに請求するからね!ワン公っ!!!」


リオの目には、あまりにもキレイな涙がキラキラと溢れ、後方へと消えていった。

だが、その件のワン公、ゴールドマンはケージの中で格子に鼻を押し付け

泡を吹いて気絶している。


「高かったんだからああああああぁあああぁあああぁ!!!!」


リオの悲痛な叫びが甲高いモーター音と共にビル街へと掻き消えていった。


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