Ep.00【05】「咆哮」




灯りは付けれない・・・パトカーを移動させてライトで照らすのも悪手に思える。

マグライトもあるが、仮に銃を所持していれば良い的だ。

数秒間黙考する。

リオはパトカーの後部座席から防護バイザーを取り出し、

柄の部分にあるスイッチを押し込み スマートサーマルモードを起動させた。

これなら暗闇でも灯り無しで動く事が可能になる。

リオは唾を飲み込み、018と共に倉庫内へ侵入を開始した。




「ああ・・・・それは危険だ・・・・・。ヤツはまだ戦闘能力を失ってはいない」


「018に介入するか?いや・・・・まだ観察するべきか」


「観察対象が生命の危機に直面したら直接介入しよう」


「同意する」


「やはり・・・・・この娘は危険だ・・・・・・・」


「同意する」




リオと018は倉庫内中央でうずくまるバッヂを発見した。

確かにヤツは生きている。

その証拠にうめき声のような、何かの動物の鳴き声のような声が漏れ聞こえてくる。


「グブウゥゥウウウ・・・・・・・・・・・・・・・・ガハッ!!」


リオは意を決してコンタクトを開始した。

「ガリル”バッヂ”プライズだな。NTPDのシスター・リオ巡査だ。

無駄な抵抗はせず、大人しく投降しろ!」

「こちらはNTPD所属のドロイド・オフィサー018です。

貴方を強盗傷害・公務執行妨害・他17件の容疑で緊急逮捕します。

貴方には黙秘権があります。貴方には弁護士の立会いを求める権利g・・・・・」

018がお決まりの被疑者権利の警告を読み上げていた途中でバッヂが突如立ち上がった。


「グガゲアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


それは到底人類が発したとは思えないほど大きな雄叫びだった。

「!!」

リオはとっさに後ろへと飛び退く。

刹那、リオの隣に立っていた018の身体が右方向に消え、轟音と共に廃材の中へと消えた。

バッヂの巨大な右手で薙ぎ払われたのだ。

「018!!!」

リオは即座に018の元へと駆け出す。

ホルスターからブラスターを引き抜き、銃口を向け数回引き金を引く。

ブラスターから青白い電光が放たれバッヂの胸元や腹部に直撃した。

・・・しかし、バッヂは意に解する事もない。

電光はバッヂの身体に当たるも、淡い光の粒となって拡散するだけだった。

「くそっ!!!やっぱダメかっ!!!!」

リオは悪態を口にしながら効果が無い事を承知で引き金を引きながら018へと走った。

元陸軍兵士でサイバネ手術を全身に行っているのならば、恐らくは軍所属時に施行したはず。

軍用の対ブラスター・コーティング済みの身体に普段でも非力に感じるNTPD支給の

ハンドブラスターが役に立つ訳がないのだ。

「この水鉄砲めっ!!せめて火薬式なら!!!!」

愚痴を漏らしつつもバッヂの行動からは目を離さない。

018が埋もれた場所に到着した時、リオは何か違和感を感じた。

2名中1名を即座に排除し、残る1名の攻撃は全く利かない。

圧倒的有利な状態なのにバッヂは逃げようとも再攻撃しようともしなかった。

バッヂを見やると、それは更に奇妙な光景だった。

バッヂは何か言葉にならない声を発しながら、虚空に腕を振り回していた。

偶然当たった倉庫内の廃材が辺りに破片と化して飛び散る。

リオはバイザーのズーム倍率を上げ、バッヂを注視する。


増幅し修正された映像には目が大きく開き血走り、口から大量のよだれを吐きながら

倉庫が震えるほど咆哮するバッヂの姿が映った。

「こいつ・・・・トランス状態?いや?バーサーカー状態か?」

リオは更に面倒な事になったと察した。



──続く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る