第8話 奇妙な共通点

 俺たちは、倒したウォーカーの死体を注意深く調べた。


 ミサキが日本刀で奴の腹部を切り裂き、俺はアックスで頭部を破壊した。


 だが、奴は他のウォーカーと、何かが決定的に違っていた。


「おかしい…」


 ミサキが、眉間に皺を寄せながら呟く。


「なんだ?」


「こいつ…内臓が、ほとんどない。それどころか、骨まで変形してる。まるで、何かの実験体みたいだ」


彼女の言葉に、俺は息をのんだ。


 確かに、奴の身体には、人間のものとは思えない、不自然な変形が見られる。


 そのとき、ユキが、ウォーカーの首元にある小さなタトゥーを指差した。


 それは、三角形を二つ重ねたような、幾何学的な模様だった。


「これ…なんだか、見たことがあるような…」


 ユキの声は、どこか遠い記憶を探るように呟いた。


 俺は、そのタトゥーをじっと見つめる。俺の【危機感知】が、その模様に反応して、微かに震えていた。


 それは、まるで、俺の能力と、このウォーカーが、何らかの形で繋がっていることを示しているようだった。


「おい、ミサキ。こいつの身体に、何か埋め込まれてる痕跡はないか?」


 俺の問いに、ミサキは注意深くウォーカーの身体を調べていく。


 そして、奴の背中から、小さな金属片を抜き取った。


「これ…なんだ?」


 それは、手のひらサイズの小さな機械だった。


 表面には、ウォーカーと同じ、三角形のタトゥーが刻まれている。


 それは、まるで、ウォーカーを制御するための装置のように見えた。


「もしかして、こいつらは、誰かに操られているのか…?」


 俺の言葉に、ミサキは何も言わなかった。


 ただ、その鋭い瞳が、俺の顔をじっと見つめている。


 彼女の目は、この奇妙な共通点が、この世界の真相に繋がることを、すでに理解しているようだった。


 この終末世界は、ただのゾンビパンデミックではないのかもしれない。


 これは、俺の能力を狙う、何者かの仕業なのかもしれない。


 俺たちは、互いの顔を見合わせた。この謎を解き明かすことが、この世界を救う唯一の方法だと、誰もが感じていた。


 そして、その旅路は、俺たちの想像をはるかに超える、過酷なものになることを、俺たちはまだ知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る