第9話 タトゥーの導き

 あのウォーカーを倒してから数日後、俺たちは新たな謎を抱え、ショッピングモールでの生活を続けていた。


 俺たちは、ウォーカーの死体から見つけた機械を解体し、何が埋め込まれていたのかを調べていた。


「これ、どうやらGPS機能がついてるみたいだ」

 ミサキが、小さな機械の基盤を覗き込みながら呟いた。


「GPS…ってことは、こいつらは、誰かに監視されていたってこと?」


 ユキが、不安そうな声で尋ねた。その顔には、再び恐怖の影が宿っている。


「そういうことだ。そして、この機械には、信号を受信するための座標が記録されている」


 ミサキはそう言って、俺のスマホを手に取った。


 俺のスマホは、この世界に来てからずっと圏外だったが、俺の【再生能力】のおかげで、バッテリーは常に満充電状態だった。


 ミサキは、スマホの画面に、機械の座標を入力していく。


「…出た。この座標、ここから北西に数キロ行った場所にある、廃墟の研究所みたいだ」


「研究所…」


ユキの声が、震える。


俺は、二人の顔を交互に見た。


 ミサキの目は、獲物を見つけた狩人のように、冒険への期待に満ちている。


 一方、ユキは、恐怖で顔を青ざめさせていた。


「…タクヤさん、危ないです。ウォーカーの実験体がいるような場所なんて、行くべきじゃありません」


 ユキが、俺の腕を掴み、必死にそう訴えた。


「ユキの言う通りだ。だが、このままじゃ、何も変わらない。俺の能力も、あのウォーカーのタトゥーも、すべてが繋がっている気がする。この謎を解かない限り、俺たちは、いつかまた、同じようなウォーカーに襲われるかもしれない」


 俺の言葉に、ユキは何も言い返すことができなかった。


 そのとき、ミサキが俺の肩に手を置き、不敵な笑みを浮かべた。


「そうだよ、タクヤ。あたしたちは、ただウォーカーを倒すだけじゃつまらない。この世界の謎を、俺たちの手で解き明かそうじゃないか」


 ミサキの言葉に、ユキは、俺とミサキの顔を交互に見た。

 

二人の瞳に宿る、冒険への熱気に、ユキは、諦めたように頷いた。


「…わかりました。私も、一緒に行きます」


 ユキの言葉に、俺とミサキは、顔を見合わせ、安堵の笑みを浮かべた。


 翌朝、俺たちは、ショッピングモールを後にし、北西の廃墟の研究所へと向かう旅に出た。


 道中、俺たちは、ウォーカーの群れを次々と屠っていく。


 ミサキは、日本刀を巧みに操り、ウォーカーを次々と両断していく。


 その姿は、まるで剣の達人のようだった。


「どうだ、あたしの剣さばきは?」


ミサキが、得意げに俺を振り返る。


「ああ、お前の日本刀は、俺のアックスよりも、ウォーカーの弱点を正確に突いている」


 俺の言葉に、ミサキは、満足そうに笑みを浮かべた。 


 一方、ユキは、俺の背中を追うように歩き、時折、俺の服の裾を掴んでいた。 


「タクヤさん、大丈夫でしょうか…。やっぱり、怖い…」


「大丈夫だ。俺がそばにいる」


 俺はそう言って、ユキの手を握りしめた。


 彼女の手は、小さく震えていたが、俺の温もりに、少しだけ安心したようだった。 


 その日の午後、俺たちは、研究所の入り口にたどり着いた。


 そこには、ウォーカーの死体が、いくつも転がっていた。


 しかし、どの死体もまだ新しく、ここが最近まで稼働していたことを示唆していた。


 そして、死体の間をよく見ると、ウォーカー以外の、人間の死体も転がっていた。


「…ここは、ウォーカーに襲撃されたんだ」


ミサキが、警戒しながら呟いた。


 俺たちは、注意深く研究所の中へと足を踏み入れた。


 あたりは、埃と、消毒液のような、薬品の匂いが混じり合った空気が漂っている。 


 奥へと進むと、俺の【危機感知】が、激しく警鐘を鳴らし始めた。


 そして、その先に、俺たちは、信じられない光景を目にした。


 数体のウォーカーが、一人の女性を取り囲んでいる。


 彼女は、白衣を着ており、実験台に背を預けていた。


 そして、そのウォーカーたちは、彼女の身体に噛み付こうとはせず、まるで何かを待っているかのように、ただ唸り声を上げていた。


 ウォーカーに襲われる女性。

だが、彼女の身体には、噛み付かれた痕跡はない。


 そして、何よりも目を引いたのは、その女性の豊満な尻だった。


 白衣から覗く、その肉感的なラインは、まるで意志を持っているかのように、俺の視線を吸い寄せていた。


「ひっ…いや…来ないで…!」


 女性は、震える声で懇願していた。

ウォーカーたちは、一斉に彼女へと襲い掛かる。


 俺はアックスを構え、ウォーカーの群れへと突進した。


ズバンッ!


 アックスを振り下ろし、ウォーカーの頭を叩き割る。


 しかし、ウォーカーの数が多すぎる。


 次から次へと、新たなウォーカーが湧いて出てくる。


 そのとき、ミサキが俺の横に並び立った。


「あたしが、道を開ける!」


 ミサキは、日本刀を構え、ウォーカーの群れへと斬り込んでいく。


 その動きは、まるで剣舞のようだった。


 ユキも、その間に、小さなナイフを構え、俺たちの背中を、必死に守ろうと動いていた。


 俺たちは、協力してウォーカーの群れをなぎ倒し、ついに、女性の前にたどり着いた。


「もう大丈夫だ。俺たちが来た」


 俺の言葉に、女性は、安堵からか、その場に崩れ落ちた。 


 彼女の顔は、煤で汚れていたが、その瞳は、俺をまっすぐに見つめていた。


「あ…りがとう…ございます…」


彼女は、震える声でそう呟いた。 


 俺は、彼女の身体を抱きかかえた。

その豊満な尻が、俺の腕に柔らかく押し付けられる。


「…私は、リョウコ。この研究所の研究者よ…」


 彼女は、そう言って、意識を失った。


 ウォーカーの実験体、そして、謎のタトゥー。


 この研究所に隠された真実とは、一体何なのか。

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