第3話 初めてのゴーレム誕生
夜。
開拓地の粗末な小屋の中で、父と母は疲れ果てて眠っていた。
薪は足りず、暖炉の火は小さな赤い光を残すのみ。
俺は布団の中で、昼間手に入れた“それ”を握りしめていた。
魔石。
冷たく、それでいて体の奥でわずかに脈打つような結晶。
胸が高鳴り、眠れるはずもない。
(ついに……実験ができる)
音を立てぬように布団を抜け出し、小さな手で外の石ころを拾い集めた。
拳ほどの石を二つと、丸い小石をいくつか。
その中央に魔石を埋め込み、両手をかざす。
「ゴーレム生成」
スキルの言葉を心の中で強く念じた。
掌から熱のような魔力が流れ出し、青白い光が魔石を包み込む。
やがて光は石の隙間へと染み渡り、全体がわずかに震えた。
ガタ……ガタッ。
石が自ら動き、組み合わさり、形を作っていく。
丸石が胴体に、小石が手足に、そして魔石が胸の中心に収まった。
やがて、そこに立ち上がったのは、膝丈にも満たない小さな人形。
ぎこちなく腕を上げ、足を一歩踏み出す。
「……できた」
俺は息を呑んだ。
前世で夢見た“自律ロボット”が、今この異世界で、魔法の力によって動いている。
胸の奥が熱くなる。
ゴーレムはカタカタと首を傾げ、俺を見上げた。
その姿は拙いが、まるで命を得た子供のようだった。
「お前は……俺の最初のゴーレムだ」
そう呟いた瞬間。
パリンッ。
魔石の輝きが揺らぎ、ゴーレムは崩れるように倒れた。
魔力の消費に耐えられず、わずか数分で動きを止めてしまったのだ。
だが、俺は絶望しなかった。
「……そうか。魔力供給の安定化が課題だな。制御アルゴリズムをもっと単純化して……」
石の残骸を前に、俺は研究者としての血を再び燃やしていた。
たとえ開拓民の子であろうと、この手で世界に“新しい命”を創り出す。
それは、確かな第一歩だった。
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