第4話 道端の魔石と秘密の研究
ある日の夕暮れ。
父と一緒に畑仕事を終え、荷車を押しながら帰る途中、俺はふと足を止めた。
「……あれ?」
道端の草むらの中で、青白い光がちらついている。
小さな結晶、間違いなくスライムの魔石だった。
「カイル、どうした?」
父が振り返る。
「な、なんでもないよ」
慌てて手を伸ばし、そっと草の中から魔石を拾い上げる。
掌に収まるそれは、以前父が捨てようとした時に守ったものより少し大きい。
どうやら、この道で誰かがスライムを倒し、そのまま放置していったのだろう。
父は気にも留めず、再び荷車を押し始めた。
俺はその隙に、魔石を服の裾に隠した。
(……よし。これで二つ目だ)
思わず胸が高鳴る。
この辺境の開拓地では、魔石はゴミ扱い。
だからこそ、誰も拾わない。
俺だけが、その価値を知っている。
その夜。
両親が眠ったあと、俺はそっと小屋を抜け出し、石ころを集めた。
魔石を胸に埋め込み、両手をかざす。
「ゴーレム生成」
魔力を注ぎ込むと、光が石を包み、ぎこちない動きで組み上がっていく。
小さな人形のような石の塊が立ち上がり、俺を見上げた。
「……成功だ」
胸が熱くなる。
前回は一つの魔石だけで不安定だったが、今回は新しい魔石で試せる。
わずかながら、動きも安定している気がした。
しかし、数分もすると光が弱まり、ゴーレムは崩れ落ちた。
それでも、俺は落胆しなかった。
(課題は魔力の供給方法……安定化が必要だな)
拾った魔石ひとつが、俺の研究をまた一歩前に進めた。
誰にも言えない、秘密の実験。
それは、確かに未来へとつながっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます