第2話:時空の歪み<ジクウ・ノ・ユガミ>

ユウキ・ナギの駆るネオ・クロノスは、光の帯となって小惑星帯へと向かった。モニターには、奇妙な脈動を繰り返す時空の歪みが映し出されている。それは、かつてカイトたちが戦ったヴァージンに似ていたが、より複雑なエネルギー構造を持っていた。

「くっ……このエネルギー、まるで生きているみたいだ……!」

ユウキが呟くと、歪みの中から無数の立体的な幾何学模様が飛び出してきた。それらは、不規則な動きでネオ・クロノスに襲いかかる。

「なんだ、この動きは! ヴァージンじゃない……!」

ユウキは戸惑いながら、ネオ・クロノスの武装であるレーザーライフルで迎撃を試みる。しかし、幾何学模様は、レーザーをすり抜けるようにかわし、ネオ・クロノスの装甲に触れると、わずかだが時間軸を巻き戻し、装甲を風化させていく。

「これが……時空を歪める力か……」

ユウキは、攻撃が通用しないことに焦りを感じた。その時、彼の通信回線に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。

「ユウキ! 無茶はしないで! 敵は、実体を持たないエネルギー生命体よ!」

声の主は、アストロ・ハブの管制官、ヒカリ・サワタリだった。彼女は、ネオ・クロノスの開発チームの一員であり、ユウキとは幼い頃からの親友だった。

「ヒカリ! でも、このままじゃ……!」

「落ち着いて! あの幾何学模様は、攻撃しているわけじゃないわ。私たちの時間を『修復』しようとしているのよ!」

ヒカリは、ユウキに驚くべき事実を告げた。この未知の存在は、破壊を目的としているわけではなく、宇宙の歪みを「修復」しようとしていた。しかし、その修復の仕方が、この宇宙の生命にとって有害なものだったのだ。

「修復……? じゃあ、俺たちはどうすれば……」

ユウキが尋ねると、ヒカリは一つの答えを導き出した。

「ネオ・クロノスの力を使うしかないわ! 時空の歪みを、私たちが作り出す新たな時間軸で上書きするのよ!」

ユウキは、ヒカリの言葉に、かつてカイトとリナがシンクロ・クロノ・ドライブでヴァージン・ロードを倒した物語を思い出した。彼は、ネオ・クロノスのメインシステムに、あるコマンドを入力した。

「ネオ・クロノス、システム・タイム・オーバーロード、起動!」

ユウキの叫びと共に、ネオ・クロノスからまばゆい光が放たれた。それは、幾何学模様が作り出す歪みを、打ち消すように広がっていく。

しかし、その光は、歪みの中心へと向かうと、まるで意志を持ったかのように吸い込まれ、消えていった。そして、歪みの中心から、巨大な人型のエネルギー体が姿を現した。

「私たちの歴史を、君たちには渡さない……」

その声は、かつてのヴァージンや時の番人とは異なり、悲しみと孤独を湛えていた。

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