第3話:悲しみの声<カナシミ・ノ・コエ>
時空の歪みの中心から現れた巨大なエネルギー生命体は、悲しみを湛えた声でユウキに語りかけた。
『君たちは、この宇宙に属する存在ではない……。君たちの歴史を、我々の歴史に上書きしてはならない』
「俺たちは、歴史を上書きなんかしない! 君たちの歪みを、修復しに来たんだ!」
ユウキが叫ぶと、エネルギー生命体は、悲痛な叫び声を上げた。その声は、ユウキの心に直接響き、絶望と後悔に満ちた過去の記憶をフラッシュバックさせた。
その瞬間、ユウキは理解した。このエネルギー生命体は、彼らの宇宙が滅びの運命を辿ることを知り、その悲しみを背負って、自らの歴史を宇宙から切り離そうとしていたのだ。彼らは、自らを隔離することで、他の宇宙に滅びの連鎖が及ぶのを防ごうとしていた。しかし、その行為が、かえって時空の歪みを生み出し、ネオ・クロノスをこの場所へと引き寄せてしまったのだ。
「ヒカリ! このエネルギー生命体は、破壊を望んでるわけじゃない! 絶望から逃げようとしているだけなんだ!」
ユウキは、通信でヒカリに叫んだ。ヒカリも、ユウキの言葉から、この生命体の悲しみを察知していた。
「わかったわ、ユウキ! ネオ・クロノスのシステムを、通信モードに切り替えて! 直接、彼らの心に語りかける!」
ユウキは、ヒカリの指示通り、ネオ・クロノスのシステムを切り替える。ネオ・クロノスから放たれる光は、もはや攻撃の光ではない。それは、ユウキの心、そしてヒカリの心を乗せた、希望の光だった。
「俺は、過去に囚われ、復讐心に燃えていた人の物語を知っている。でも、その人は、絶望を乗り越え、未来を創る希望の光になったんだ!」
ユウキは、カイトとリナの物語を、エネルギー生命体へと語り始めた。
「君たちの歴史は、悲しいものかもしれない。でも、その悲しみを乗り越えれば、君たち自身の力で、新たな未来を創れるんだ!」
ユウキの言葉は、エネルギー生命体の心を深く揺さぶった。彼らは、ユウキの心の奥底にある、カイトとリナの希望の光を感じ取ったのだ。
『……希望……未来……』
エネルギー生命体は、初めて感情を乗せた声を発した。その瞬間、彼らの歪んだ姿が、ゆっくりと、しかし確実に変化していく。
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