第17話:宇宙の意志<ウチュウ・ノ・イシ>
カイトとリナは、シンクロ・クロノ・ドライブの力で、時間喰いの真の起源である「宇宙のコア」が創り出した混沌とした時空へと飛び込んでいった。彼らの機体は、過去も未来も存在しない、無数の時間の断片が渦巻く空間を、光の軌跡となって進んでいく。
その時、二人の目の前に、光の粒子でできた巨大な存在が姿を現した。それは、カイトとリナの心を映し出したかのように、二つの顔を持っていた。
「……お前たちは、何者だ」
光の存在は、カイトの心の奥底に直接語りかけてきた。それは、怒りでも悲しみでもなく、ただ純粋な「問い」だった。
「俺たちは……未来を変えに来た。絶望を、希望に変えるために」
カイトは、迷いなく答えた。彼の言葉は、光の存在の心をわずかに揺さぶった。
「絶望……希望……それは、我々が管理する歴史にはない概念だ。歴史は、ただ繰り返される。それが、宇宙の秩序」
光の存在は、カイトたちの行動を、宇宙の秩序を乱す異物だと断じた。しかし、リナがそれに異を唱える。
「違う! 歴史は、ただ繰り返すだけじゃない! 人類は、絶望を乗り越えるたびに、新たな未来を創ってきたわ! 私たちの力は、過去を消し去るためのものじゃない。過去の悲劇を、未来への糧にするためのものよ!」
リナの言葉は、光の存在の心を深く揺さぶった。その時、カイトは、クロノ・ゼロから託されたペンダントを、光の存在へと差し出した。
「これを見てくれ。これは、俺の家族が、未来を信じて生きた証だ。俺は、このペンダントを、過去の絶望を乗り越え、未来を創るための希望の光として、ずっと持っていた」
カイトの言葉と、ペンダントから放たれる温かい光が、光の存在の心を包み込んでいく。
「過去……未来……希望……」
光の存在は、カイトとリナの心に触れ、彼らが経験した絶望と、そこから生まれた希望の光を理解した。そして、その存在は、初めて感情を持ったかのように、わずかに震えた。
「我々は、初めて知った……。歴史には、管理すべきでない、感情というものが存在することを。お前たちは、我々の持つ『時間』を、ただのデータではなく、生命の営みとして、我々に教えてくれた」
光の存在は、カイトとリナに語りかけた。それは、もう敵意のない、穏やかな声だった。
宇宙のコアは、カイトとリナを「時の超越者」として認め、彼らに新たな力を与えた。それは、時間軸を自在に操る力。カイトとリナは、クロノスとタイム・ファクターを、宇宙の創造と破壊を司る究極の存在へと進化させた。
「これが……宇宙の真理……」
リナは、感無量の表情で呟いた。彼らの旅は、宇宙の真理を解き明かし、新たな時代の扉を開いた。
カイトとリナは、地球へと帰還する。彼らの手には、宇宙のコアから与えられた、無数の未来を創造する力が宿っていた。彼らは、クロノスと共に、地球の歴史を、そして宇宙の歴史を、希望に満ちた物語へと変えていく。
そして、彼らは気づいていなかった。彼らの戦いが、時を超えて、様々な宇宙へと波紋を広げ、新たな物語を紡ぎ始めていることを。
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