第4話 湯煙揉捻
/ / S E:ぱしゃぱしゃ、ざぶん、と、お湯をかき混ぜる音
「うん、いいお湯加減。ちょっと熱いかな……ん、どうしたの。ほら、こっち。こ、っ、ち、だってば」
/ / S E:ぽんぽんと風呂椅子を叩く音
「いまさら恥ずかしがっても遅いよ。さっきからもう、身体の隅々まであたしに触られてるんだから……」
「え、違う。じゃあ、なに……ああ、あたし? だって服を着たまま入るわけにはいかないからねえ。そりゃあ、脱ぐさ」
「だけど……今日はよっぽど、昼間に見た外の世界の刺激が強かったんだねえ。まだ半分くらい、君のなかに人間が残ってる。ふふ、いつも見てるのにね、あたしの裸くらい。さ、椅子に座って、向こうをむいて……お湯をかけてゆくから」
/ / S E:かぽん、ちゃぽん、と、湯桶にお湯を汲む音
/ / S E:ばしゃ、ばしゃ、と、あなたの背中にお湯がかけ流される音
「それじゃ、人形用のせっけんをつけて、擦ってゆくからね。少し、腕を持ち上げて……そう」
/ / S E:スポンジを泡立てる音、肌にふにゅっと当てる音、擦る音
「背中を……ゆっくり、おおきく、擦って。それから……」
/ /ヒスイの声が右の耳の後ろに移動する。
「……身体の前に手を回すからね。ほうら、動かない。に、げ、な、い。え、くすぐったいって? ふうん。どこが? ……ここ?」
/ / S E:ぺたぺたと、濡れた床で脚を暴れさせるような音
「あはは、冗談だよ。だけど興味ぶかいな。君はなんだか、毎日すこうしずつ、敏感になっていってるみたいだ。もしかしたら、君は……うん。後で、ゆっくり調べてみようかな」
/ / S E:ふたたび身体を流す音
「じゃあ、こっちの台に頭をのせて。そう、上を向いて。髪を流していくからね。君の髪はね、春の若葉のちからを封じ込めて作ってある。だから放っておくとぴょんぴょんと跳ねるし、荒れやすいんだ。そら、流すよ。目を閉じて……」
/ / S E:額(左右中央)にさらさらとお湯をあてられる音
/ / S E:左右の耳元をお湯が流れてゆく音
「……指で、漉いていくからね。額の生え際から、ゆっくりと……頭の上、そうして、耳の裏を通って、首筋まで。ゆっくりと、ゆうっくりと……何度も」
/ / S E:左の耳の上で髪をくしけずる音、そして右で同じ音、何度か繰り返し
/ / S E:左右の耳元をお湯が流れてゆく音
「次は、シャンプー」
/ / S E:手のひらにシャンプーをとって泡立てる音
/ / S E:右の耳元に泡の塊がぽふっと置かれる音
/ / S E:しゃくしゃこ、しゃくしゃこ、と、指を立てて頭皮を擦る音、左右を入替え、強弱をつけて
「……流すよ」
/ / S E:お湯を額から流す音、頭皮を擦る音、左右を入れ替えながら
「はい、これでよし。あたしはもう洗ったから、お湯に入ろうか」
/ / S E:ちゃぽん、と、お湯に脚を入れる音
「……ほら、おいで。いいから。ほうら」
/ / S E:少し暴れるように、ばしゃん、とお湯に入る音
/ /ヒスイ、浴槽であなたを後ろから抱く、横髪に顔を埋める。
/ / S E:左の耳元ですんすんと匂いを嗅ぐ音
「ああ、いい匂い。こうやって二人で入るのは久しぶりだねえ。ずっとまえ、君を作ったばっかりの頃は、よくこうやって入ったのにな」
/ /ヒスイ、あなたをぎゅっと抱きしめる。声が左の耳元にぐっと近づく。
/ /ためらうような吐息、それから少し寂しそうな声で。
「……まだ、ならないで。人間になんて」
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