EP3(3)
「君はゼロとしての責務は果たしたよ」
現場までの車の中、その言葉が梛の中でぐるぐるしていた。
「聖園さん......何かございましたか?」
「いえ、大丈夫です。偉い人と会ったので疲れてるだけで」
「へぇどなたですか?次長?」
「貴方の父親とは会ってません。課長です。課長。警察庁時代の」
「そうですか。いい人なんですか?」
梛は少し考えたあと、こう言った。
「いい人ですよ。本当に」
「唯川さん、これも良いですか?」
「良いですよ」
休憩と食料補給のために入ったコンビニで奢ってくれるという瞠に甘えて梛はバナナクレープをカゴに入れた。
とりあえず昼ごはんを確保出来た2人は、再び現場へと車を進めた。
高速に乗った直後、入電した。
道路上で事故ったまでは良いものの、殴り合いの喧嘩に発展しているそうだ。
しかもこの先100mとかなり近い。
「行きますか」
「はい」
梛は窓を開けてパトランプを屋根に設置し、マイクを手に取る。
「現場に急行します。道を開けてください。パトカーが通ります。道を開けてください」
サイレンと共にその現場へと着いた。
数台が玉突きを起こした挙句数人がかなりのヒートアップをしているようで、通行できなくなっており後ろの車は困っていた。
「警察です。警察ですよ。ほら落ち着いて。落ち着かなきゃ何も解決しませんから」
主に喧嘩をしている2人とも体格が良く、177cmでかなりの細身の梛を無視して取っ組み合っていた。
「ダメですよ。こんなところで喧嘩しちゃ」
しかし、195cm細マッチョの瞠を前にして、萎縮したのか2人とも相手の体から手を離した。
話を聞けばまず危険運転の車を避けようとして隣車線にの車にぶつかり、運転手同士で喧嘩が始まりその後喧嘩を諌めようと入っていったが流れ弾で殴られたことにイラついて殴り返したことで数人での殴り合いになったらしい。その後数台が玉突き。大事故すぎる。
「バカなの」
梛はついそう口に出してしまった。
梛は左腕の腕時計を見る。スクエア型で形見の超がつく高級腕時計。
時間がない。まぁ自分たちはとりあえず来ただけであって。交通専務に引き継ぐだけなのだけど。
交通専務はその後すぐ到着したは良いものの、自走できない車ばっかりで道を塞ぐように事故ってしまっているためにレッカーに時間がかかる。それが計5台分。
まさかの足止めにため息しか出ない2人だった。
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