EP3(2)
「水死体ですか......」
「はい。その見つかった警察官は捜査2課の刑事でして。最近、通貨偽造を使った詐欺事件を追っていた所、その組織の拠点がヴァルキリーの拠点の一つだった所のようで。それで元構成員の関与を疑って春樹が私に相談を。私達の同期なのですが。残念です」
「それで、その拠点というのは?」
「旧深山運送の第3倉庫です」
そう言った途端梛の顔が曇る。
「1年半前の......」
「そうですね。1年半前の事件現場でした」
「でも、もうヴァルキリーは関係、ないというかヴァルキリーの元構成員なら関わりたくもないと思います」
「どうしてそう言い切れるのですか」
梛は口籠る。あれ、を言いたくはないからだった。どうせバレるとしても今は嫌だった。
「そりゃ、失態を犯した場所ですよ?貴方なら仲間が捕まった場所で犯罪、やりますか?」
「いいえ」
梛のスマホに着信が入った。誰からかは分からないが、偉い人らしい。
「それでは、今から伺います。課長」
「お呼び出しですか?」
「はい。警察庁に行ってきます。すぐ戻ると思いますので帰ってきたらすぐ出れるようにお願いします」
「わかりました」
「何か、ございましたか?課長」
「課長はやめてくれ。もう君の課長じゃないよ」
「では、橘さん。急に呼び出したのには何か訳が?」
梛は、怖かった。目の前にいる元上司という存在が。何を言われるかということが。
「心配しているだけだよ。聖園くん。君は随分頑張り屋さんだからね」
「心配?人殺しのことが?分かってるのに名乗り出れない人殺しのどこに心配する要素があるんですか!?」
怖かった。梛はこの1年半ずっと奥底で恐怖を抱いていた。
「君のせいじゃない。それに君は生きようと、羽島くんを助けようとしただけだ」
「自分で、この手で、僕は、殺したんです。撃ったんです。生きようとした?助けようとしただけ?羽島さんまで撃った、それが事実だ。なんで僕は許されているんですか?拘置所に居ないんですか?僕は......」
梛は床に崩れてしまった。涙が溢れていた。
「君はゼロとしての責務は果たしたよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます