EP2(1)
「唯川さんはどうして帝都大法卒というブランドを捨てれたんですか?」
ふいに声に出た疑問だった。帝都大は日本最高峰の大学だ。キャリア組として警察庁に入る事だって出来たはずだった。それなのに、なぜ。
「単純です。現場にずっと居たかった。それだけですよ。それと遅く来た反抗期、というやつです」
「僕だったら手放せません。実際、啓央にしがみついて準キャリアですし」
「いいと思いますよ。やりがいだけじゃ生きていけませんから」
「でも結局、僕がここに居るのはやりがいなんですよね。警察官としての。色々怪我も障害も残ったのに、意地で復職したのはやりがいですよ」
さして署までは遠くはない。その後数分の沈黙があったが直ぐに車は麻布署の駐車場に停められた。
結果わかったことは確かに飛び降りた彼女の名前は盗まれたと見られる期間に薬品庫に入室記録があったということと、彼女のスマホからは何かを取引した痕跡が残っていたことだった。
「まだ確定ではないですが彼女が盗み出した可能性はかなり高いですね」
「ですねぇ」
会議室に通されて見せてもらった資料の中には昨日目にした名前があった。
「久しぶりだな。唯川、元気してるか?」
会議室に入って来たのは50代くらいの大柄の男だった。背は195もある唯川さんよりは低そうだが細マッチョの唯川さんと比べて横にも大きいので170後半でかなりの痩せ型の俺にしたら威圧感はかなりあった。
「誰ですか?」
コソコソ小さい声で隣にいる唯川さんに聞いた。
「西尾勇気警部、刑事課長です。私が捜査一課に来る前は麻布署にいたので」
なるほど、元上司というわけだ。
「今はなんの事件追ってんだ?あんま無茶すんなよ」
色々な人から無茶するなだとか暴れ馬だとか、あぁコイツかみたいな顔をされる隣のコイツはマジ何をどれだけやらかしているのか。
西尾警部はどっかりと目の前のパイプ椅子に座った。
「あ、僕は聖園梛と言います」
「コイツ、ちゃんとやれてる?暴れてない?」
「今のところは......」
「それで、刺殺ではなく毒殺を疑って捜査中というわけか」
「ええ」
「盗み出したであろう、女性のスマホには取引と見られる履歴が残っていたのでその取引相手を今は追跡してもらっているところです。
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