古墳時代は二度訪れる

五來 小真

古墳時代は二度訪れる

「古墳時代、埴輪が配置されることがありました。一度廃れた風習だったのですが、そこから更に時代を隔てて同じような風習が復活した時期があります」

 歴史の授業では、ここまでだった。

 なぜこの風習が復活したのか?

 それが解明されていないからだ。

 

『味気ない墓石より、生前の姿を生き生きと』

 

 そんなキャッチフレーズで売り出されたリアル人型墓石は、安くない値段だと言うのにそれなりの売れ行きを示した。

 『うちは亡くなった人にも、こんなに敬意を払えますよ』という優越感に、金持ちはこぞってお金を払ったのである。

 味気ない墓場に、人型墓石はとても目立った。


 ——しかし、すぐに問題が露呈した。

 墓場に人がいるように見え、薄暗くなると以前より不気味になった。

 しかしそれはささいな問題だった。

 むしろ問題なのは、リアルな人型なだけにホコリが積もると背徳感が大きくなることだった。

 アフターケアをしっかりしてないと、却って他より酷い人間に思われてしまうのだ。

 自ずと墓場に行く回数が増える。

 しかしそれにも限界がある。

 

 亡くなった人の為に多くの時間を費やし、自分の時間がなくなるとはなんたることか。

 

 そこで墓石を元の形にしようとする。

 しかしリアル過ぎるが故に、業者が壊すのを躊躇してしまうのである。

 これを躊躇せずにやれるのは、殺人をなんとも思わずに実行できる人間だけだろう。

 

 しかしこれを契機と見た業者が、高値でリアル人型墓石を引き取りだしたのである。

 業者はそれを平気で壊せるほどのサイコパスではなかった。

 そこで墓場の地中に埋めたのである。


 その墓石は、時代を経て掘り起こされることになる。

  

 <了>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

古墳時代は二度訪れる 五來 小真 @doug-bobson

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ