第19章

第19章 鉄扇鬼 ……てつおうき……


 僕らは マーベルの 大通りを 抜け

 巨大な タイル張りの 門をぬけた マーベルは フェスティバルの 準備でおおわらわ 都に 入ってくる人は多くても 出ていく人はすくない

 みんな浮かれていた

 もしこんなところに ベヒモスなんかあらわれたら

 ぞく……

 考えたくもない

 僕は ちょっと 不安になった

 早く出てしまわなければ!そして

 平原と 岩場を主とした キラヌ平原に でた

 道には岩場から 転げた石がころがっている

 僕は グッとブローチを掲げた

「いくよ!ローニー!アズミ!」

「いいぜ」

「やって頂戴」

 ブローチにかけた封印を解除する!

ぶぶ……ん!

 溜まっていた魔力が放出される

「よし!」

 ぼくは ブローチを付けると マーベルと 次の町の 真ん中あたりで 野営をくんだ

「ここで待とう……」

なんだろ声が震える

「お前?どうした?」

「誰も巻き込みたくないんだ!」

 ぎゅっ!

 ローニーが僕の体を抱きしめた

 折れる!

「ちょ……ちょ……折れる」

「お前にばっかり背負わせてて悪かった……星束ねるだの……なんだの!いいか?俺はいる!な!」

「おいてけぼりにしないでよ!」

 アズミが 僕の額に キスした

「私もいるわ!セレスごめんね!貴方の重圧考えてなかった」

「こんなに!責任感のつよい子なのにね!」

 そして 私たちいるわ!

 責任も 分散よ いいセレス……ね……

「なんで……こんなに弱いんだ!僕」

 僕は 泣いてしまって ローニーに 更に締められた

「げほ……」

「あ……悪ぃな」

「もう……加減わかんないんだから!」

「ふ……」

「あのさ……お前は人1倍強いんだよな……弱さは 強さだってさ……それが無いと癒せないんだってさ!親父が言ってた!俺とセレスは2人で星を束ねるんだってさ」

 こん……

 アズミが 石を投げた!

 がば……!

 僕は

 顔をはね上げる!

 空間の歪み!!

 くる!

「ほぉ!気づかれましたか……王族ともなると厄介ですな!」

 吐き気がするほど緩慢な物言い

 その男が脇に 呼び出したのは巨大な鉄扇を 持った鬼であった

 僕の背を一気に魔力が走り抜けた

 守るんだ!僕

「落ち着きなさい!あれは巨人族よ!厄介だわ!」

 アズミが 僕の 高まりに 気づいたのか 指示をくれる

  要は!あの 気持ちわりぃ男たたんじまえば良いんだろ!

だだん……!

 ローニーの しなやかな足が地を蹴った

 が……

 男に触れる刹那!

 鉄扇が ローニーの 腹を打つ!

 ゲボっ!

 胃液が 舞った

 そして 僕の足元の方へ飛ばされる!

「ローニー!」

「へ!体力バカですよーだ!」

 げほ……息すら上手く吐けないのにローニーは 軽口を 言う

「これはまた!半人前の 王族には!半人前の 従者ですな!」

 男がいやらしく……ねっとりわらった!

「黙れ!2人は従者なんかじゃない!大事な 仲間だ!兄弟だ!相棒なんだ!」

 僕が怒りに震えた

「練れる……いい!1つ!2つ!3つ」

 アズミが そっと カウントする

「その女は 女奴隷としてなら価値ありそうですが!」

「だまれ!きさま!」

 僕の中に!なにかがおりた!

 ドン……

 重力の 柱が巻き上がる!

「4つ……放て!」

 アズミのカウントに 僕の魔力がのった

 ごぅ!

 柱が重力の竜巻となる!

「禁忌の子!おそるるにたらん」

 男は瞬間に僕の前に 立ち

 暗殺剣で 僕の 喉を狙った!

 そして その前に 立ちはだかったのはローニー!

 僕の喉を裂くはずだった短剣は ローニーの 喉を裂いていた!

僕の中で封印が完全に解けた!

 バキ……

 あたりの岩が砕け

 全ての空間がうねりをあげる

ずおおお……

 ローニー……

 ローニー!

 ローニーの 体はアズミが抱え

 ヒールを かけ続けていた


「くそ!」

 男が後退し!鬼が 鉄扇を 振るった!

 ず……

がぎり……

 鉄扇は 重力波に触れると

よじれてのみこまれた

 そして めきょめきょと鬼が捻り潰されていく!

「ち……」

 男は!しゅるん……と宙にとけた

暴走気味だけど僕の 魔力はネックレスで蓋を してしまう

そしてなにより!

 ローニーが

「やるじゃ……んお前!」

 傷は癒えたものの失血の ショックで 痙攣が 出てる

 ローニー!

 セレス!やれる?

「やる!なんだって……」

「いい!ゆるやかに!ローニーだけに的をあてて逆回転!」

 すぅ……

 ガチリ

 僕の中で 魔法陣が 正常に 回転を始めた

 こぉぉ!

 指先から癒しの光

 その光は ローニーの血だらけの 胸にあてる

「う……」

 ローニーが 少し身じろいだ!

「続けて!」

「でも!苦しそうだ!」

 つづけなさい!

「うん」

 かっ!光が ローニーを 包み込み

 ローニーに金のオーラを 与えた

「う……そだろ!」

 光が消えた後には

 無傷の血のあとすらないローニーが 立っていた

「セレスすげ……」

 言おうとしたローニーを 僕は張り飛ばしていた!

「げ……」

 ローニーは吹っ飛び尻もち

「こんのバカ!バカ!!バカ!!!」

 何度となく言って

 ローニーの 胸にすがる!

「ばかぁーーーっ」

 涙が止まんないよぉーー!

 ローニーの 大バカ!アホー!

「セレスってば!」

 アズミが 涙を 浮かべて

  僕の肩を抱く

「お前……怪力だったのな!」

 ローニーが わしゃっと 僕を撫でる

「悪かったよ無茶してさ」

「もう……しらないからね!」

 ぐしぐし……

 見れば ローニーの 革ベストが 涙で べちゃべちゃだ!

 知るもんか!

 わるかったってば!

 僕を なだめようと なでまくる

 お仕置!ご飯抜き!

 おーい!

 それだけは勘弁!!セレスぅ!

 ローニーの 情けない嘆願は 響いたのである

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