Primula【完全版】
有理
「Primula」完全版
「Primula」完全版
【配役】
テンシ 物音&西田役が兼役
西田 シオン (にしだ しおん)
東 サクラ (あずま さくら)
南原 ユキ (なんばら ゆき)
東N「終末。ぼくらは、恋をした。」
西田N「真っ当に、ただ、真っ直ぐに。息をした。」
南原N「ただ、ただ。たった、それだけだった。」
西田(たいとるこーる)「Primula(プリムラ)」
______
東「あちー。日本に四季があったって本当の話?」
西田「習ったじゃん。春と夏と、あー…」
東「雪!」
西田「…そうだっけ?」
東「違った?」
西田「えー?」
東「あ、決めた?第二次性」
西田「決めらんないよ。今後を決める性別ーとか卒業と同時に決めろだなんて早すぎない?そもそもさあんまり関係ないじゃん?男だ女だとかどっちでもいいっていうか。」
東「ジェンダー問題って昔は大変だったらしいよ。今じゃもうどーでもいい話だけどさー。」
西田「でも決めなきゃいけないんだ。男になるか、女になるか。」
東「区別があるわけだ。」
西田「国境とおんなじか」
東「トイレも未だ別れてるしね」
西田「体の作りが違うから仕方ないでしょそりゃ」
東「二次性、今のと違う方選んだらどうなるの?」
西田「そりゃあ、体も合わせるでしょ。」
東「どっちに」
西田「選んだ方に」
東「…あーあ」
西田「何?」
東「どっちでもないってやつは、どうなんのかな。」
西田「…カウンセリング受けたら?」
東「嫌だよ」
西田「なんで」
東「…あちーから。」
西田「何それ」
南原「東!西田!!」
東「うわ!」
西田「南原、な、何、」
南原「て、天使!!天使!落ちてきた!!天使!!!」
東N「17歳の真夏日。日本の四季は遠い昔に崩壊し、1年は雨季と夏季で構成されている。じめじめした雨季と暑い夏季の違いが僕らにはいまいち分からない。暑い日、イかれたカルト教信者が校門の前でビラを配っているのを押し除けて全速力で走ってきた同級生がそんな僕らの、」
西田「南原。この暑さでついに頭までイかれたか」
南原「違う違う!本当!本当なんだって!白い羽生えた天使!落ちてきたんだって!」
東「バカ!あんまり大きな声で…ああ、こっち見た…ほら、あそこでビラ配ってるの…」
南原「あ、白装束だ。天使さま崇拝してる宗教だっけ。ああ、やばい、こっち来る」
西田「面倒だぞ、あそこ今燃えに燃えまくってる」
東「…あー、南原。もう一回!登場シーン!やり直し」
南原「…え?」
西田「…ほら、あっちから。もっと必死に走ってきて。」
南原「何?何言って」
東「ほら!」
南原「あ、はい!」
南原「東!西田!!」
東「うわ!」
西田「南原、な、何、」
南原「て、天使!!天使!落ちてきた!!天使!!!」
東「うん。今度はよかった。次のシーン練習しようか。」
西田「そうだね。次は階段のシーンだから…室内か」
東「じゃあ校内かな」
南原「ああ、じゃあ4階の踊り場が綺麗だよ。職員室に許可取りに行こう。」
西田「そうだね。」
南原「…」
東「…行った?」
西田「諦めたみたい」
南原「…はあああ。よかったー!」
西田「でもよく思いついたよ。さすが東だった。」
南原「本当!助かったー!」
東「南原、その単語は嘘でも気をつけなきゃ。」
南原「いや、本当に嘘じゃなくて、天、…いたんだ」
西田「冗談じゃなくて?」
東「…今はどこに?」
南原「ボクの家」
西田「家、って」
南原「ベランダに落ちてきたんだ。見つかったらまずいと思って隠してきた。」
東「…」
西田「冗談じゃ、なくて?」
南原「本当だってば!見に来てよ!」
西田「だってさ。東?」
東N「運命を変えた日だった。」
______
南原N「母は言う。“完璧でないものは、生きている意味がない”と。だからボクは生きている意味がないのだと。学年順位ではいつも一位に東がいた。ボクはいつだって2番目で、その度母に呆れられてきた。」
南原N「スポーツでは西田に勝てたことはない。ボクはいつだって2番目だ。徒競走も持久走も握力も幅跳びも砲丸投げも。記録は2番だ。いつしか、母は学校に来なくなった。どうせ同じだからと。ボクを見てくれなくなった。どうせ同じ、2番だからと。100点も0点も同じだ。」
南原N「少し前の日本であればネグレクトと言い張れたかもしれない。出来損ないのボクに呆れ返った母は年に数回しか帰らなくなった。その代わり毎日チャージされる10,000円。口座には減らないお金が常に入っている。そこに愛はとうにない。これはただの家畜の餌に過ぎない。ボクは、ボクの世界は、色の掠れた水彩画だ。」
__
西田「南原の家、久しぶりかも」
南原「そうだね。今日親いないから。」
東「仕事?」
南原「そ!2ヶ月出張。」
西田「南原置いて?」
南原「そうだよ?」
西田「いや、もう高校生だけどさー」
南原「よくあるから。…あ、しっかりお金とか置かれてるからね!」
東「そうだろうけど、いいの?それって」
南原「え?」
東「文句言ったりしないの?南原はさ」
南原「…うん。しないかな」
西田「偉いなー。頭もいいし性格もいいときた。頭でっかちな誰かさんとは大違いだ」
東「誰のことだよ。」
西田「1人しかいないー!じゃあ、たくさん、遊びに来てやらなきゃね」
南原「え?2人が?」
東「迷惑?」
南原「…何言ってんの!大歓迎だって!」
西田「あ!それより!例の天使!」
南原「あ、…ほら、…おいで。」
テンシ「(物音)」
東「っ、」
西田「うわ、…本物?これ」
南原「言ったじゃん。」
東「喋れないんだ?」
南原「喋らないみたい。見た目はボクらと変わらない。ただ羽が生えてるくらいで。でも」
東「赤いね」
西田「え?」
南原「うん」
東「瞳が赤い。」
西田「ああ、本当だ。」
南原「アルビノ?と同じかな。」
西田「何。アルビノ」
東「知らない?色素が不足してる病気。」
西田「それ習う?」
南原「習いはしないかな」
西田「じゃあ知らないよ」
東「…綺麗。」
南原「そうだね。」
西田「…天使って綺麗なんだな。」
東「でも、瞳が赤いとまるで…悪魔みたいだ。」
南原「…」
西田「…」
東「…これって、さ。僕ら、」
西田「ん?」
東「とびっきりの自由研究、してみない?」
南原「自由研究?」
東「そう。僕らで、やらない?」
西田N「そう沸るように言う東の目の方がよっぽど悪魔のようだった。」
南原N「そんな東の顔を見て、もしかしたら東ならボクの願いを叶えてくれるかもしれないと、ボクは、この日からようやく色を得た」
______
西田N「ぼくには1人家族がいた。家で酒に溺れた父親だ。仕事にも行かず毎日ぼくに酒を盗ませに行かせた。誰よりも足が速くなったのはそんな父のおかげだった。」
西田N「そんな父が最近家を留守にする。宗教にハマったからだ。無宗教と言われていたはずのこの国はいつの間にかたくさんの宗派で満ち満ちている。幸い父はぼくを勧誘しようとはしない。ただ毎日赤いリボンを握りしめてぶつぶつと念仏のようなものを唱えている。そしてたまに酒に溺れては当たられる。」
西田N「でもぼくは、それでも父が好きだった。好きでいなければならなかった。散らかったダイニングの窓際、少しだけ片付いたその一角は、ぼくら家族の聖域だ。死にたくなるほどの聖域だ。笑う写真立て中、もう1人の家族の顔をぼくは知らない。ぼくの世界は、生まれた瞬間から濁った水槽だ。」
___
南原「西田?」
西田「ん?」
南原「泊まっていく?」
西田「…なんで?」
南原「いや、なんとなく」
西田「…あれ。東は?」
南原「トイレ」
西田「ああ、そっか」
南原「ほら、天使と2人っていうの、東があんな事言うからさ怖くなって…。」
西田「…悪魔って言ったから?」
南原「…うん」
西田「悪魔だと思ってるんだ?」
南原「思ってない!!」
西田「う、るさ…」
南原「あ、…ご、めん」
西田「じゃあ、いいじゃん。」
南原「でも、…やっぱ、なんか、ほら…天使だと思っててもさ、」
西田「…泊まるの東でもいいじゃん。」
南原「…そりゃ、そうだけど」
西田「…いいよ。じゃあ泊まる」
南原「本当?」
西田「東、別にやりたいことあるだろうし。」
南原「…よかった」
西田「うん」
東「なに、何がよかったって?」
南原「西田が泊まるって!」
西田「うん」
東「監視?」
西田「そう」
南原「君も、ほらこっちにきて」
テンシ「(物音)」
東「…何」
テンシ「(物音)」
西田「なんか…」
南原「東に懐いてる?」
西田「この人のこと好き?なの?」
テンシ「(物音)」
東「な、」
南原「…」
西田「ああ、そうだってさ」
東「未確認生命体に好意なんかあるわけない!」
西田「照れるなよ。」
東「じゃ、先に帰るから。明日また。」
南原「うん、またね」
西田「また!」
南原「さて、君にも名前をあげようね?」
西田「天使じゃだめなんだ?」
南原「だって外で呼んだらだめだって2人が言ったんだから!」
西田「そうか…」
南原「うーん。」
西田「…あー、でも」
南原「何?」
西田「東に付けてもらえば?」
南原「なんで?」
西田「気に入ってたみたいだから。好きな人につけられた方がいいよ。名前は」
南原「…意味深だね」
西田「そう思うだけ」
南原「…そうだね」
西田「…東が言ったこと、賛成なんだ?南原は」
南原「…この子を偶像に新しい宗教を作るって?」
西田「うん」
南原「うん。偶像っていうか本物だからね。願ったら本当に叶ったりして。」
西田「願い?」
南原「うん。どうする?ボクたちのお願いが、もし3つ揃ったら叶えてくれる?」
テンシ「(物音)」
西田「適当なこと言うなって」
南原「でもボクは信じてるんだ。東は頭がいいからさ。」
西田「…」
南原「西田は信じないんだ」
西田「そういうの、好きじゃない」
南原「そっか。じゃあボクのお願いは一生叶わないわけか。」
西田「…。」
南原「何食べる?」
西田「ピザ」
南原「何枚でもいいよ」
西田「捨てるほど頼むよ?」
南原「いいよ。お金は捨てるほどあるから」
______
東N「ジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界、黒い影。甘い匂い。花の丘。眠くて、ただ眠くて目を開けていられなかった。」
東「…」
テンシ「こんばんは」
東「え」
テンシ「こんばんは」
東「や、あの」
テンシ「あなたの夢になら出てこられそうな気がした」
東「夢?」
テンシ「そう、夢」
東「ああ、夢」
テンシ「ああ、でももう いっちゃうの?」
東「え?」
テンシ「ずっとここで、話していようよ。」
東「あ、」
テンシ「待って」
東「何」
東「待って!」
東N「頭の上で鳴る控えめな音。朝のアラームだった。寝ぼけて伸ばした腕が空を切っていた。昨日見たアルビノの目と白い羽。あんなものを見たせいだ。散乱したままの机の上。昨日、西田と南原と別れてから家に帰り急いでホームページの土台だけを作り上げた。本物であろうあの天使を元にした新しい宗教“北天教(ほくてんきょう)”。大人達を化かしてやろうと思った。」
東N「僕は、宗教が嫌いだった。天使や神が大嫌いだった。人あらざるもの全てが大嫌いだった。存在しない、と信じてきた。それが、どうだ。あれは。あの天使は。」
東N「だったら、だったら。利用してやろう。とことん、利用して、この夏休みに、自由研究代わりにでも、利用してやる。」
東N「世間への軽い反抗心と淡い復讐心が、じくじくと胸を燃やしていく。」
______
南原「おはよ!」
東「お、はよ」
西田「うわ、凄いクマ。寝不足?」
東「これ作ってた」
西田「何」
南原「…一晩で?」
西田「すげー」
東「言い出したの僕だしさ」
南原「言ってよ。ボクもやったのに」
西田「きた、てんきょー?」
南原「“北天教(ほくてんきょう)”でしょ?ここ、ローマ字打ってある」
西田「ああ、本当だ」
東「ほら僕ら3人とも苗字に方角が入ってるし、北だけ足りないからさ。足りない北とあの天使を合わせたんだけど、どう?」
南原「えー!いいじゃん。そういえばボクら方角コンビだね」
西田「気付かなかった、確かにそうだ。」
南原「苗字で呼び合ってるのに!」
東「ちなみに下の名前、知ってる?」
西田「…」
南原「西田、怪しい」
東「僕は知ってるよ」
南原「ボクも知ってるよ。西田シオンでしょ?」
西田「…いや、呼ぶことないしさ。仕方ないじゃんか」
東「はは」
南原「じゃあさ、…よかったらこれからは名前で呼ばない?」
東「そうだね」
南原「嬉しいな!なんか友達みたい」
西田「友達じゃん。」
東「本当だよ。今までなんだったの?」
南原「…そっか。そうだね!」
東「ああ、僕は東 サクラ。西田覚えた?」
西田「覚えたよ!」
南原「あ!ボクはね南原ユキ、ユキだよ!」
西田「分かったって!2回も言うな!」
東「あはは、今から世界相手に喧嘩売るって言うのにさ自己紹介して遊んでるんだもん。何してんだろ、本当。呑気だよなあー」
西田「…」
南原「あず、あ…サクラはさ。」
東「ん?」
南原「世界を良くしたいの?」
東「うーん。良くしたいとかそういうんじゃないけど。今ってさ、なんか変じゃん。欲望ばっかりが水面下でぐるぐる渦巻いてて、子どもの僕らには分かんないようにコソコソ姑息な真似してさ。でも僕らの未来を無碍にして良いのかって話じゃん。嫌なことは全部先送り後回し。その皺寄せがこの異常気象なわけでしょ。終わってきてんじゃん。一回、怖い目に合わせなきゃ分かんないんじゃないって思うわけ。世界は終わらないと思ってるんだよみんな。でも、それって誰が決めたんだろ。いつか救われるって思ってんだって、誰が救ってくれるって思ってるんだろ。だからさ。分からせてやりたいんだ。誰も救わない、自分達で動かなきゃいけないって。そのための“北天教”なんだよ。信じさせて覚まさせる。天使なんていないって目を覚まさせる。宗教なんて信じないで自分だけを信じるんだってそうさせるための運動なんだ。」
西田「東…」
南原「でも、天使は本物だったでしょ?どうするの?」
東「…死んでもらうしかないね」
西田「な、に言って」
南原「…」
東「もし、本当に本物なら。そうするしかないね。」
南原「…まだ信じてないの?」
西田「ぼくら見たじゃんか。一緒にこの目で」
東「でも、本物を見たことは一度もない。」
東「だから。まだ、あれは天使かどうか分からない。」
______
南原「ただいま」
テンシ「(物音)」
南原「おかえりって言ったの?」
テンシ「(物音)」
南原「はは、そんなわけないか。だって、悪魔かもしれないんだもんね。」
テンシ「…」
南原「…東は、頭がいいからさ。ボクなんかが思いもしなかったこと、気付くんだ。そうかもしれないと思った。でも、それでもいい。もし、そうでもいい。君が悪魔でも天使でもそうでなくてもどうでもいい。ボクはそんなのどうだっていいんだ。」
南原「怖い?ボク。そんなに震えないで。何もしないよ。ほらおいで。ご飯にしよう。この前、あず…サクラが来た時はスープなら飲んでたね。同じものにしようか。…どうぞ。今日は来ないよ。2人とも。君を主体に宗教を作るって話、どんどん話が進んでる。今年の夏は忙しくなりそう。」
南原「あのさ。昨日言ってた話。ボクたち3人のお願いごとが揃ったら、叶えてねってやつ。まだ生きてる?」
テンシ「(物音)」
南原「ボクのお願い、1番に言ってもいい?きっと揃うことないから叶わないと思う。はは、本当は叶ってほしいけど。君が悪魔でも天使でも、そのどちらでもない何かでも。なんでもいいから、ボクの願い叶えてほしいんだ。」
テンシ「(物音)」
南原「必ず世界が終わりますように。」
テンシ「(物音)」
南原「ふふ、この世界ではボクは1番になれないから。母さんも誰も、ボクを見てくれないんだ。サクラもシオンも大好きだけど、もちろん君も。でも、きっとボクはずっとどこか妬ましく思って生きていく。叶わない願い事だろうけど、これがボクの本当の、心からのお願い事。もう、どうしようないんだ。救われない。おしまいだ。終わりにしたい。ね?君は言葉を話さないから本当のことを言っても誰にも言わないって信じてる。」
テンシ「(物音)」
南原「何?ボクが可哀想になった?」
テンシ「(物音)」
南原「そうだね。ボクは可哀想だ。さあ、サクラが遊んでくれるって言うんだ。お互いたくさん役に立とうね。」
______
東N「ジジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界と甘い匂いに花の丘。白い羽の彼女が座って待っていた。」
東「…」
テンシ「こんばんは」
東「また、出てきた」
テンシ「ここでしか話せなくて」
東「出てこなくていいんだって」
テンシ「“北天教”」
東「な、んで。名前」
テンシ「名前は好きな人からもらったほうがいいって」
東「何それ」
テンシ「名前、つけて?」
東「は?」
テンシ「?」
東「…じゃあ、天汰(あまた)。」
テンシ「あま、た」
東「天使、天の使いって書くの。ほらその白い羽。一応空からきたんだろ?だから天。この漢字。そんで、この漢字が、た、って読む。これは選び取るっていう意味があるんだ。」
テンシ「…選ぶ」
東「そう。もともと人には自分で選ぶ権利がある。忘れてはいけないんだ。なのに、たくさんの人がそれを忘れてしまっている。」
テンシ「サクラはそれが許せない?」
東「…どうだろう。許せない。許せないんだろう、な。きっと。僕は、多分、ずっと、」
テンシ「あ、」
東「ん?」
テンシ「ユキに、夢の話は」
東「え?何?」
テンシ「…東、」
東「あ、」
テンシ「待って」
______
東「アクセス数バグってる?」
西田N「“北天教”は天使のシルエットのロゴをモチーフにユキの撮った天使の写真を毎週金曜日にアップして信者を募っていった。全てネット上で、それもまだ2週間しか経っていない出来事だった。」
南原「警察に目つけられるんじゃない?サーバーから場所がバレるとか。こんなに早くそんなこと考えるなんて思ってもなかったけど。」
東「そっちも手を打たなきゃね。サーバーの方は結構色々噛ませてあるけど時間の問題だもんなー。信者の中にもっと詳しい人、ってより弱みを握ったほうがいいのかな。どうだろう。」
南原「うーん。ボクなら後者がいいと思うな。」
東「え、意外だった。ユキはそんなこと言わないと思った。」
南原「え!だ、だって!ネットは顔も見られないし、そ、その、こわいじゃんか!」
東「ああ、そういう意味でね」
南原「そうだよ!そうに決まってるじゃん」
東「はは。…シオン?」
西田「…あ、のさ。」
南原「ん?」
西田「これだけの人が、信じかけてて…本当に全部嘘でしたって、天使なんかいませんでしたって…やんの?本当に」
東「…なんで?」
西田「…天使、何も悪いことしてないじゃん。」
東「…可哀想って言いたいわけか」
西田「そうだよ」
南原「シオン」
東「わからせてやらなきゃ意味がないだろ。それにあれは本物かどうか」
西田「本物とか偽物とかの前にさ。生きてんじゃん。」
東「…」
西田「生きてるものにさ。死ねって…最低だって分かんないお前は狂ってるよ。」
南原「…」
西田「南原。なんとか言えよ!」
南原「…喧嘩、やめてよ」
東「やるよ」
西田「…」
東「僕は、最低だって分かっててもやる。」
西田「僕は、嫌だ」
東「降りる…ってこと?」
南原「サクラ、」
東「辞めたっていいよ。この計画を誰かに言わなきゃいい。シオンなら言わないって分かってるから。いいよ。降りる?」
西田「…考えさせて、ほしい。」
南原「そんな、シオン!」
東「ユキ、シオンだって選ぶ権利があるんだから。」
西田「ぼくは。」
西田「…ごめん、」
南原N「学校で1番足の速いシオンはあっという間にいなくなってしまった。」
東「…」
南原「どうしたんだろ、シオン。」
東「はじめから、あんまり乗り気じゃなかったじゃん。」
南原「…」
東「事がどんどん大きくなるから嫌になってきたんじゃない?仕方ないよ。…ユキも、やめたくなったらやめたっていいんだよ」
南原「やめないよ。」
東「気遣ってんでしょ?」
南原「違う」
南原「違うよ。」
東N「いつも笑顔のユキが笑うのをやめた。今考えると僕はこんなに怖いユキの顔を見たのは最初で最後だった。」
南原「さいごまで、やるよ。ボクは、サクラと。」
東「あ、りがと。」
南原「うん。…じゃあ、官僚から抑えようか。」
東「…セキュリティの話?」
南原「そう」
東「シオンは?」
南原「戻ってきたら、その時は、おかえりって言おう。」
東「…」
南原「そのつもり、なんだよね?」
東「…そうだね」
南原「うん、じゃあそれまでにボクらにできることをボクらはしよう」
東「…うん」
______
西田N「家を出た。」
西田N「父が、酔って暴れたのだ。酒瓶を振り回し、庇った腕が無惨にも血塗れだ。近くにあった綺麗なのか汚いのか分からないタオルで止血してとにかく走って家を出た。逃げた。」
西田N「走って走って、行き着いた先が天使のいる家だった。ここに縋るしかなかった。そんな自分に酷く呆れた。そして、」
南原「シオン、靴…」
西田N「偶然出てきたユキの一言を受けてからようやく自分が靴を履いていないことに気がついた。」
南原「…今からでも行く?救急。」
西田「いい。保険証持ってないし、警察呼ばれそう。」
南原「保険証はなんとかなるけど、警察は呼ばれるかもね。」
西田「面倒だからいい。血、止まったし。」
南原「…」
西田「ごめん。あんなこと言ったばっかりなのに。家押しかけて。」
南原「それとこれとは別でしょ。」
西田「巻き込んでごめん」
南原「巻き込まれてないよ、まだ」
西田「…」
南原「…」
西田「聞かないんだ」
南原「言いたくないんでしょ?」
西田「まあ」
南原「言いたくないことは聞かない主義だからボク。空気読むの得意だから。」
西田「意外」
南原「ね。」
西田「天使は?」
南原「ん?部屋だけど」
西田「会っていい?」
南原「…お願いごとでもするの?」
西田「そう。」
南原「いいよ。同じお願いごとだといいね」
西田「…」
南原「3人一緒じゃないと叶わないでしょ?」
西田「じゃあ叶わないか」
南原「…かもしれないね」
西田「会ってくる」
南原「…」
テンシ「(物音)」
西田「よ。久しぶり。元気だった?」
テンシ「(物音)」
西田「あーこれ?ちょっと色々あって。会いに来なかったのは、サクラとユキと喧嘩したわけじゃないんだけどさ、あー、いや喧嘩か?…それも色々あって。まあ色々あるわけ。…あのさ。願いごとしにきた。ユキもしたって聞いた。だから、ぼくもと思って。」
西田「…叶わなくていいと思ってる。他人に叶えてもらう願いなんて叶わないほうがいいと思ってる。でも、願うくらいいいじゃんか。そのくらい、許されてもいいじゃんかって、思ってる。」
テンシ「(物音)」
西田「ぼくさ。父親がいるんだけど、お前みたいな存在が、所謂神様が大好きなわけね。そういうの宗教っていうの。ハマっちゃってて。それがさ、今日崩壊しちゃってさ。帰ったら荒れに荒れまくってて…金ないし幹部でもなかったはずだから傷は浅いだろうけど心の支えだったろうから。こりゃ暫くは続くぞーって思ってさ。」
テンシ「(物音)」
西田「そもそもさ、ぼくのせいなんだよね。父親があんな風になっちゃったのって。ぼくが母さん死なせちゃったんだ。お前のせいでって言うんだ父さん。ぼくが生まれてこなきゃ母さん死ななかったんだから。ぼくの人生自体が父さんへの償いそのものなんだ。でも、それって父さんが死ぬまでじゃん。はは、長いなあって。思って。仕方ないんだけど。ね。」
西田「部屋に、母さんの写真が飾ってあるんだ。でもぼくさ、嫌いなんだ。知らない顔。はは、そんなこと言ったら何されるか分かんないな。逃げたい、」
テンシ「(物音)」
西田「だから、願わせてよ。せめて叶わなくていいからさ。」
西田「世界がさっさと終わりますようにって」
______
東N「ジジジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界と甘い匂いに花の丘。白い羽の彼女が花を摘んで待っていた。」
東「天汰?」
テンシ「サクラ、遅い」
東「遅い?」
テンシ「これ、何の花?」
東「え?あー、ハナニラとアネモネ、マリーゴールド。なんか季節感のない花。どこから摘んできた?」
テンシ「あの丘と、あっちの谷。」
東「ここ、夢なんだよね?」
テンシ「そう。ここはサクラの夢だよ」
東「うーん」
テンシ「これ全部サクラにあげる」
東「ああ、ありがとう」
テンシ「サクラはお願いする?」
東「え?」
テンシ「ん?」
東「何?お願いって」
テンシ「3つお願い」
東「え?」
テンシ「…」
東「…」
テンシ「ううん。」
東「気持ち悪いな。ちゃんと言えよ」
テンシ「サクラ」
東「ん?」
テンシ「恋って何?」
東「は?!」
テンシ「恋」
東「し、知らない!」
テンシ「ユキは恋は甘いって言ってた」
東「ふ、ふーん!」
テンシ「食べ物?」
東「知らない!」
テンシ「…」
東「…」
テンシ「食べたい」
東「…」
テンシ「ね。」
東「何」
テンシ「食べてみたいね」
東「な、」
テンシ「?」
東「…そ、う、だな…」
______
東「あ、おはよ」
南原「おはようサクラ」
東「…え。」
西田「…はよ。」
東「シオン」
南原「やめるの、やめるって。」
西田「…ごめん。」
東「いいって。謝ることでもないんだしさ。」
西田「サクラ、」
東「ん?」
西田「一個だけ、約束してほしい」
東「何?」
西田「全部が終わって、もし、あの、天使が本物だったらってやつ。」
東「…ああ。」
西田「殺すのは、やっぱりさ、やめてやってくれないかな」
東「…」
南原「…」
東「分かった。」
南原「死んだように見せかけることなんてどうだってできるよきっと。」
西田「…ありがとう」
東「…うん。」
南原N「ボクらはまた微笑んだ。」
______
東N「ジジジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界と甘い匂いに花の丘。白い羽の彼女が座って待っていた。」
テンシ「サクラ?」
東「ん?」
テンシ「最近は前よりうんと長くここにいるね。」
東「シオンとユキがよく働いてくれてるから。」
テンシ「そっか。」
東「お前もだろ?」
テンシ「功労者?」
東「よくそんな言葉知ってるなあ」
テンシ「ユキが言ってたから」
東「ああ、そうか。それでかあ」
テンシ「…サクラ、学校は?」
東「行く暇なくなっちゃったなー。シオンもユキも。北天教がこんなに大きくなるなんて思わなかった。」
テンシ「本当?」
東「嘘。大きくなるのは分かってた。だってお前、本物みたいだもんね。信じたくなるもんなあー、こんなのに縋りたくなるような終わった世界だってことだよな。」
テンシ「本物だよ?」
東「偽物だ。」
テンシ「意地悪」
東「はは」
テンシ「…」
東「…天汰。」
テンシ「ん?」
東「人間はどう見えてる?」
テンシ「サクラのこと?」
東「僕もだし、シオンもユキも、他の人達も。みんなだよ。」
テンシ「うーん」
東「…バカだなって思ってる?」
テンシ「ううん。愛しイ、?」
東「愛おしい?」
テンシ「天汰のごはんを分けてあげたいと思う」
東「…憐れんでるってこと?」
テンシ「違う気がする」
東「何」
テンシ「こうやって、ずっと。サクラとずっとお話ししていたいような。こういうのと同じ気持ち。こういうのは何ていう?ユキはこういう事、言葉使わないから分からないんだけど」
東「ああ、じゃあ合ってる。愛おしいで」
テンシ「うん。だからサクラも愛おしい」
東「愛おしい…か。」
テンシ「うん。」
東「…」
テンシ「サクラ?」
東「僕さ」
テンシ「あ」
______
南原N「北天教はどんどん大きくなっていった。ボクの母すら入信した。騙されていることも知らずに。ボクが関わっていることも知らずに。」
南原N「そしてあいも変わらずボクに言う“あなたもこの天使様に願いなさい。少しはマシになれますようにって”。電子音の母の声、変わり映えのしないそれは1つの希望を唱えた。“一度帰るから”。」
南原N「ああ、今度こそ。今度こそ。ああ、今度こそだ。失敗してはいけない失敗してはいけない。確実に確実に。叶えてもらわなければ。ボクはボクはボクはボクはボクは」
西田「ユキ?」
南原「あ、シオン」
西田「電話中だった?」
南原「うん。終わったけど。」
西田「泣いてた?」
南原「泣いてないけど?」
西田「そ?」
南原「…天使に何お願いしたの?」
西田「今更そんな事聞くんだ?」
南原「そういえば聞かなかったなと思って」
西田「言いたくないことは聞かない主義じゃなかった?」
南原「ああ、言いたくない?」
西田「いいけど別に」
南原「ボクのも教えてあげるからさ」
西田「一緒だったらどうする?」
南原「一緒なわけないよ」
西田「はは」
南原「ボクは、」
______
東N「ジジジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界と甘い匂いに花の丘。白い羽の彼女が微笑んで待っていた。」
東「天汰?」
テンシ「ん?」
東「ほら。これ」
テンシ「これ、鉢?」
東「そう。プリムラって花。」
テンシ「花束じゃないんだ」
東「何回も咲く方がいいかと思って。」
テンシ「何色の花が咲く?」
東「何色だろ。」
テンシ「プリムラ。可愛い名前。」
東「サクラソウ科なんだ。」
テンシ「サクラ、と同じ名前なんだ。だからくれたんだね?」
東「それもあるけど、」
テンシ「?」
東「…」
テンシ「あーあ。サクラ、また起きちゃうから」
東「何?」
テンシ「ずっとここでお話ししてたい。」
東「…それは、僕も。」
テンシ「本当?」
東「うん。」
テンシ「愛おしい?」
東「…かもね」
テンシ「そっか。」
東「…」
テンシ「よかった。」
東「プリムラ、咲くといいね」
テンシ「うん。楽しみ。夢の中でもちゃんと咲くかな?」
東「咲くよ。夢の中くらい、しあわせじゃなきゃ、」
テンシ「あ、サクラ、」
東「あ」
_____
南原「サクラ。シオンのお父さんが、警察に捕まったって。」
東「…シオンは?」
南原「今、病院。迎えに行こう。」
東「うん。」
南原「シオン!」
西田「ごめん、大したことないんだけど思いの外、血が凄くてさ。昼間だし近所の人に見つかっちゃって大騒ぎで…」
東「シオン…」
南原「笑わなくていい」
西田「っ、」
南原「そんな顔、しなくていいよ。」
西田「っ、ごめん、」
南原「帰ろう。」
東「タクシー、停めてくる。警察へは僕が代理で行くから。2人はユキの家で待ってて。」
南原「うん。」
東「ユキ、シオン頼むね」
南原「うん。分かった」
______
西田N「北天教に入信した父親は毎日熱心に祈りを捧げていた。お布施を稼ぐために始めた仕事も休まず通い、酒もやめ更生したのだと思っていた。この活動を始めて良かったのかもしれないと少し思っていた矢先、会社の反北天教の人と揉め暴力沙汰を起こし早々にクビになった。それからはまた酒に飲まれるようになり、元の暮らしに逆戻りだ。」
西田N「ボロいアパートの2階。外階段から転げ落ちたぼくを近所のおばちゃんが介抱してくれた。気が付いたら警察と救急車が来て、ああ大事にしてしまったと思った。父親は連行され、ぼくもすぐに担架に乗せられた。手当てをされて、今に至る。いつまで、こんな世界でぼくは生きていなければならないのだろう。」
テンシ「(物音)」
西田「ああ、ただいま」
南原「温かいもの、淹れようか」
西田「ねえ、ユキ。サクラ、」
南原「ん?」
西田「…願って、くれないかな」
南原「…」
西田「…無理か」
南原「…北天教」
西田「何?」
南原「ボクたちも入信しようか」
西田「え?」
南原「きっと叶えてくれるよ。」
西田「ユキ、何言って…」
南原「シオン。」
西田「…」
南原「お祈り、しよう」
テンシ「(物音)」
西田「天使様。」
南原「ボクたちの願いが叶いますように」
______
東N「ジジジジジジ、と。擦り切れたテープの音がする。揺らぐ視界と赤い瞳。甘い匂いに花の丘。白い羽の彼女が鉢を抱えて待っていた。」
東「天汰?」
テンシ「プリムラ」
東「咲いたって?早すぎない?」
テンシ「だってここは夢の世界だから!」
東「何でもありなんだから」
テンシ「白だった!」
東「うん。」
テンシ「…サクラ。」
東「ん?」
テンシ「咲いたら言おうと思ってたんだけど」
東「何?」
テンシ「ずっとサクラといたい」
東「…それ、は僕もそうだよ」
テンシ「うん。」
東「でも、夢でしかいられないじゃん。現実じゃ天汰は話せないし、ユキが不審に思う。」
テンシ「うん…」
東「…夢が醒めなきゃいいんだけど」
テンシ「サクラがいなくなったら、北天教がなくなっちゃうよ。困る人たくさんいる」
東「そんな、偽物の宗教に頼らなきゃやっていけない世界なんて終わっちゃった方がいいんだよ。」
テンシ「そうなの?」
東「ああ、そうだね。そうしたら、僕は天汰といられるのか。あ、でもユキやシオンが…」
テンシ「世界終わる?」
東「いや、でも」
テンシ「天汰はサクラといられる?」
東「いたいけど、天汰待って僕は」
テンシ「嬉しい」
東「一緒にいられるのは嬉しいけど、ユキやシオンにも聞かないと…」
テンシ「天汰、嬉しい。」
東「…僕も。うれしい。…」
東N「甘い、甘い匂いがする。眩んだ視界。白い羽。プリムラが落ちた音がした。」
______
東N「浴槽。血まみれの女が1人。南原ユキは果物ナイフで女を刺している。女はとうに絶命しているようだった。」
南原「お帰りなさい、は言いました。ボクは1番になりたかった。母さんの1番になりたかった。母さんの母さんの1番が欲しかった。褒めて欲しかった。なのに、なのに母さんは。母さん。母さん。ボクは1番になりたかった。愛されたかった。抱きしめて欲しかった。何もかもが欲しかった。なのに、なのに、どうして。ボクは。母さん、100点取れたよ。花丸、血まみれだ。」
東N「女を引き摺りキッチンへ。冷蔵庫から食材を出し小柄な彼女を代わりに入れた。そして何事もなかったように掃除を始める。南原。」
テンシ「(物音)」
南原「ぼやけてるね。叶えてくれたんだ。ニュース見た。だからやったんだ。ありがとう。」
テンシ「(物音)」
南原「君が天使だろうが悪魔だろうがどうでもいいって言ったでしょ。世界が終わればいいんだ。罪が消える。なかったことになる。そうでしょ。」
テンシ「(物音)」
南原「ありがとう。これでボクはやっと救われた。」
______
南原「もしもし?シオン?サクラ?…ネットニュース見た?」
東「…見た」
西田「8時間後、世界が終わりますってやつ?」
南原「朝から天使が変なんだ。なんかぼやけててさ。」
西田「え、」
東「…やっぱり。」
南原「とりあえず家来てよ」
西田「おーい。ユキ?」
南原「ああ、いらっしゃい。」
西田「何これ、パーティ?」
南原「冷蔵庫の中身全部出した。好きなものだけ食べよう。」
西田「…嬉しいんだ」
南原「うん。多分、天使のおかげだろうね。」
西田「外見た?」
南原「見てない。どうかした?」
西田「窓の外、見た方がいい。すごいから」
南原「え?」
南原N「終末、そこは地獄だった。慌てふためく人々とアスファルトの地割れ。遠くで立ち上る煙と喧騒。何も聞こえなかったのはボクが大きな音で好きな音楽をかけていたからだった。」
西田「ね?」
南原「本当だ。」
西田「ユキだけだよ。そんなニコニコしてんの」
南原「シオンも喜んでるくせに」
西田「え?」
南原「その手に持ってるのは何?」
西田「これ?タバコ!」
南原「ボクらまだ未成年」
西田「いいじゃん。成人しないままなんだからものの試しに?」
南原「…そうだね」
西田「それにさ、ぼく母さんの写真割ってきた!」
南原「え?」
西田「嫌いだったんだ。最後だし!と思ってさ。思い切って。父さんまだ捕まってていないし今だと思ってさ。」
南原「やるじゃん。」
西田「地獄じゃ会わないだろうし」
南原「シオン地獄行きなの?」
西田「盗みやってたやつは地獄行きでしょ」
南原「じゃあ仲間だボクと」
西田「ユキも?」
南原「ボクはもっと大罪だけど」
西田「え?!」
南原「地獄で会おう!」
西田「何したの?!」
南原「内緒!」
西田「なんだそれ!」
南原「はは」
西田「てかサクラは?」
南原「ずいぶん早くに来て、天使と2階にいる」
西田「へー」
南原「ボクらに謝りたいって言ってた。」
西田「…お礼言いたいくらいなのに。」
南原「ね。」
西田「できてたのかな。あの2人?」
南原「…さあ?」
______
東「天汰。これが世界の終わり、夢みたいだ。」
東「僕は、正しかったのかな。…結局僕もただのエゴでしかない。初恋だったんだ。君が、だからきっとこれは。」
東「…叶わない」
東「そうだろう?」
______
テンシ「お疲れ様です。はい。終了しました。」
テンシ「いいデータは取れましたでしょうか。」
テンシ「次はどの世界の破壊をお望みで?」
ファタル「帰って書類に纏めなさい。」
Primula【完全版】 有理 @lily000
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