有理

戸瀬先生に頼まれたはじめてのおつかい。そこは古びた建物。一部だけシャッターの開いた場所。中からは不思議な音がかすかに聞こえた。

かたん、とベランダから新しいキューブ状の炭を持ってきてシーシャのてっぺんに乗せた。

白いマグカップの隣にはタブレット。駅から少し離れたこのカフェで、受け取った原稿を確認するのが俺の日課になっていた。

世界の終わり。 やっと、世界は終わります。 “救済”ですね。あなたにとってこの世界の終わりは。 『救いの詩/滅びの詩-世界が終わる時、ぼくらは-』参加作品

世界の終わり。 あなたのデータを私に。 『救いの詩/滅びの詩-世界が終わる時ぼくらは-genocide』参加作品

彼のペンケースには赤やピンクのシャーペンが何本も入っている。その内の一本は私のものだ。

世界の終わりは、うーんとながい息で消えない火を消して。 『救いの詩/滅びの詩-世界が終わる時、ぼくらは-』参加作品

世界の終わり。 やっと、世界は終わります。 “救済”ですね。あなたにとってこの世界の終わりは。

プライベートをあまり話そうとしない彼女。だから、初めてだった。誕生日が嫌いなことを知ったのは。

神の宿る島、神代村封鎖。新聞の三面記事にそっと書かれた文字。僕は今日この島を出る。

彼女に初めて会ったのは駅から近いわりに人気がない、トイレの掃除がなってないこのカフェである。二度と来るかと思ってはいたがここのコーヒーが美味すぎて通い続けてしまっていた。

病院の中庭。備え付けのベンチに座ってなかなか帰れないでいると、ふと見知った顔と目が合った。左腕のなくなった彼女と私は。

だから、いいんじゃん。人間なんて

人気女優には似つかわしくない雑多な居酒屋の個室。目の前に置かれた銀の皿には、スペアリブ。

初版、私の言葉達が形になったことをまるで自分のことのように喜んで頁の音が耳に焼きつく程何度も何度も捲った。その音が心地よくて何度も何度もサインペンを走らせた。

ふと、つけっぱなしのテレビに目をやった。知った顔、知った名前。 高校の同級生だった、花韮 いずみが死んだと言う

隣人に痴話喧嘩を注意される程の香澄と和人。閉め切った窓、靴箱の中で眠る白い包み、日曜には必ずバターの香りがする。

アイドルの細い指が絡め取った肉塊。大口を開けて彼女は歯を突き立てた

キッチンから出汁のいい香りがする。ダイニングテーブルには並べられた小鉢と焼き魚、完璧な朝食だった。

なんて、残酷なことを言うんだろう 私はまた、死に嫌われた

資生社周年イベント。設けられた特別ブース。文豪間藤恭平とベストセラー作家戸瀬知代子の対談は定刻通りに始まった。

レースのカーテンが揺れる、日曜日。駅から少し離れたこのマンションは2LDKの新築。カウンターキッチンから聴き慣れた声が飛んでくる。

お誕生日おめでとう、私の愛しいあなたへ

彼女に、何気なく渡したその記事が後にとんでもないことになるなんて、僕はまだ知らなかった。

躾、とは。私にとってそれは、単なる支配に過ぎない

鬼ころしにストロー、左右合わせたピアスの穴は16個。ケタケタ笑う私の彼女は赤が似合う女の子だった。

私はここで夢を買う。愛に似た夢をあなたのために。

“あなたは私を愛してくれますか？”そう綴られた帯を纏う一冊の本。僕は彼女を知っている

税別300円均一のありきたりな居酒屋でやたらでかい串物を頬張るベストセラー作家、戸瀬知代子。俺はあの日彼女を化物にした。

私達はいつも誰かになろうとするあまり、人であることを忘れていく

私のパパ、恭くんは簡単には結婚を許してくれなかった。 聖なる夜に酌み交わすのは、紛れもない愛だった。

「兄さん、久しぶり。」 年子の弟、達也はいつもこうだった。 俺は、残されたたった1人のこいつが嫌いだ

何でもできるスパダリの彼には、秘密の部屋があった

高校を卒業して適当に選んだあの子のいない女子短大は特に何の思い出もできないまま、呆気なく2年の月日が過ぎていった。 それ程までに私の大学生活は枯渇していた。

人気女流作家“戸瀬知代子”。決して顔を明かさない彼女は、酒瓶に埋もれて今日を生きている。

フラワーデザイナー巌水燈のさいごの仕事は、とあるアイドルの写真集だった。

トラロープで羽交い締めにされたブランコの側で銀色の缶とその隣で白い百合が揺れていた。 去年。会社の部下がここで自殺した。

違う高校に進学したあの子との待ち合わせはいつもこのバス停だった。

“私は所詮誰かになる事でしか、生きられないんです”そう言う君の頬に残る火傷痕は誇らしげに見えた。

彼女は言う。“私の愛は重すぎるから”と。

北海道の青い湖。“恍惚”の主人公が心中する場所。絡まり合った彼らの行く末は。

プチ同窓会として集まった3人。それぞれの過去を背負い、それぞれ決まった未来へ進む途中で、そっと愛について語り出す。

「愛花。いこう、」 一緒にいこう ずっと、ずっと隣で待ってるから

「今度は、間違えたりしないから もう一度、愛してよ」

僕だけが彼女の特別で、僕だけが知っている彼女のこと。

高校3年の秋、私は葛西栞里に告白した。 赤く染まった教室。私達はここからはじまった。

僕らを結ぶ黒い布。最後に見たのは彼女の笑顔だった。

毎朝見る星座占い。木村 理々華の呪いは今日も解けない。

残暑お見舞い申し上げます。

快楽のままに生きる。 それを、可哀想だと思いますか？