第二幕 part2


私はドアを開けた。するとそこには、1人の美少女が立っていた。

「こんにちは、朝比奈さん」

 その優しい声にドキッとしてしまう。

「い、いらっしゃい」

 こんなに可愛かったか?この人?制服もとても似合っていると思っていたが、私服はそれ以上だ。

「どうしたの?じっと見つめて。そんなにわたしが可愛かったの?」

「えっ……」

 図星を疲れてしまった。ただ今回ばかりは本当に可愛くてどきっとしてしまった。なので本音を言っておく。

「その……うん。宮原さんがすごく可愛くてドキッとしちゃってた」

 少し照れながら言うと、宮原さんは顔を赤く染めていた。

「あっ、そ、そうなんだ………………ありがと……」

 なんだこの空気。少し本音を言っただけなんだがな……。とにかく、この空気をどうにかしなければ。

「と、とりあえず中に入りなよ」

「……うん」

 そうして、私は宮原さんを家に招き入れた。

「お、お邪魔します」

「とりあえず私の部屋まで案内するね」

 なんというか、宮原さんが緊張しているのを見るのは新鮮な気分だ。流石に好きな人の部屋というのは緊張するのだろうか。

「今日って親とかはいないの?」

「っ……」

 少々びっくりしてしまった。

「あー……親はしばらく帰ってこないよ」

「じゃあ今夜は2人っきりだね♡」

「変なこと言わないでよ……」

 そんな軽口を叩きながらゲームの準備をする。

「とりあえず初心者でもやりやすそうなゲームからやってみようか」

「うん、ありがと」

 そうして2人で並んで座りながらゲームをする。ゲームをしている時の宮原さんは見ていてとても面白かった。やられた時は悲しそうな顔をしたり、逆に敵を倒した時はめちゃくちゃいい笑顔だったり、時々「あぁ……」とか、小さな声が漏れていたり。正直、可愛かった。私としても、普段1人でゲームをしている分、誰かと一緒に、それも同じ空間でやるのはとても新鮮で楽しかった。そして、そんな楽しい時間も終わりを迎える。


「いやー今日は楽しかったよ、ゲームって面白いね」

「ゲームの楽しさをわかってくれたようで何よりだよ」

 ゲームに没頭して気づかなかったが、外はもう月が上り始めていた。

「そろそろ帰るでしょ。駅まで送って行くよ」

「それなんだけどさ、今日泊まっていっていい?」

「は?」

 何言ってんのこいつ。頭おかしくなったか?今泊まりたいって言ったのか?

「だめかな?」

「いや……親とか心配するんじゃない?」

「それなら大丈夫、うちの親そういうの寛容だから」

「……だいたい着替えとか持ってきてないでしょ?」

「うん、だから貸してほしいなぁって」

 こいつ……なかなかやるな……。何を言っても全て言い返されてしまう。何か、何かこの状況を抜け出せるものはないのか……。

 …………いや待てよ。この状況は逆にチャンスじゃないか?宮原さんは案外攻めに弱いことは今日の出来事でわかっている。つまり、宮原さんを泊まらせることで私が攻める状況を作り出せるのではないか?そして宮原さんの照れているところやテンパっているところを観れるのではないか?これは……やるしかない。いっつも私ばかりが照れているからな。これは仕返しだ。宮原さんも照れているところを見せてくれないと不公平だ。そうと決まれば善は急げ。

「どうしたの?急に黙っちゃって」

「宮原さん、泊まっていいよ」

「え!いいの!?やったぁ!」

 宮原さんは呑気に喜んでいる。これから私に何をされるか知らずにね……。



 「宮原さん何か食べたいものある?」

 宮原さんに仕返しするにしても、まずはご飯だ。腹が減っては戦はできぬ。

「ないよー。もしかして朝比奈さんがご飯作ってくれたりするの?」

「そうだよ。流石に泊まりにきた人に作らせるわけにはいかないからね」

「朝比奈さん料理できるの?」

「これでも結構得意なほうだよ」

 料理をするのは結構好きな部類に入る。普段から自分で作っているからというのもあるが、自分で作ると自分好みの味付けにできて個人的に好きだ。なにより美味しいご飯を嫌いという人はいないだろう。

「じゃあなんか適当に作るね」

「手伝おうか?」

「いや、宮原さんはくつろいでていいよ」

「じゃあお言葉に甘えようかな」

 さて、何を作ろうか。とりあえず冷蔵庫を見てみる。……うーん…………オムライスでいっか。材料を取り、パパッと作り始める。


 

「美味しい!」

「でしょ」

「隠し味に愛情とか入ってたりする?」

「強いていえばチキンライスに味噌を入れたくらいかな」

「そんな真面目に返さないでよ……」

私の作ったオムライスは好評だった。まぁ当たり前だ。普段から作りまくってるからね。これで美味しくないと言われたらなくぞ。

「普段からご飯作ったりしてるの?」

「そうだね、基本的に私が作ってるよ」

「朝比奈さんと結婚する人はこんなに美味しいご飯が毎日食べられるなんて羨ましいなぁ」

「褒めても何も出ないよ」

「婚姻届も?」

「オムライス没収ね」

「ごめんって!」


 


「お風呂沸いたから先に入ってきていいよ」

「ありがとー」

「着替えは適当に用意しておくから。下着は新品の安いやつがあるからそれ使って」

「それ大丈夫?ちっちゃくて入らないとかないよね?」

「うっさい」

 こいつ……私より胸が大きいからって……。普段ならキレているところだが、今の私は気分がいい。ようやくチャンスが回ってきたんだ。これから私が宮原さんにすることを考えたらこの程度簡単に水に流せる。ひとまず、宮原さん用に下着と着替えを用意する。少し大きめのシャツがあるからそれを渡しておけばいいだろう。よし、準備はできた。


 「宮原さん、着替え置いておくね」

 「ありがとー」

 大丈夫、今の私ならいける。私は、勇気を振り絞って服を脱ぎ、宮原さんがいる

「は!?」

 宮原さんが驚いたように叫び声を上げる。

「背中洗うよ」

 私はにっこりと笑みを浮かべながら言葉を発する。

「えちょちょまって、なんで当たり前のように入ってきてるの!?」

「宮原さんと一緒にお風呂に入りたかったんだけれど、だめだったかな?」

「ダメ……じゃないけど!恥ずかしいよ!」

「まぁまぁ落ち着いて。体洗ってあげるから」

 宮原さんの背中にタオルを当てる。

「ひゃんっ!」

「どうしたの?そんな声出して」

「だ、だってぇ……くすぐったいんだもん……」

 ……やばい……癖になりそう…………

 いつも余裕のある感じの宮原さんがこんなにも弱々しくなっている。なんだか、宮原さんを観ていると新たな扉が開きそうな感じだ。今ならなんでもできそうな気がする。そんな全能感で口を動かす。

「宮原さんって胸おっきいよね。何カップあるの?」

 ……あれ?なんかキモいおっさんみたいになっちゃったな……。まぁいい。気にせず行こう。

「えっ、そ、その……最後に測った時はFだったよ」

「でっか……本当に同じ高1なの……?」

 私の貧相な体とは大違いだ……


「はい、後ろは終わり」

「あっ、うん」

「じゃあ次は前ね」

「えっ」

 すかさず腕を前に回す。そして、宮原さんのその豊満な胸にタオルを当てる。

「んっ」

 タオル越しに伝わってくる柔らかさに頭がおかしくなりそうになる。私は夢中になって胸を触る……もとい、体を洗う。ときどき宮原さんの声が漏れていて、なんかだか……その……少しだけ、変な感覚に襲われてしまった。仕方ないよね……宮原さんの顔もすごい……えっちだったし……………………ん?少し気になって宮原さんの顔を覗く。すると私の目には、顔を紅潮させ、どこか上の空な顔をしている宮原さんが映った。

「あっ!ごっごめん!その、夢中になっちゃって!!!」

 慌てて私は謝る。何やってんだ私!どう考えてもやりすぎだろ!?

「い、いやその……全然大丈夫だよ……嫌じゃなかったし……。それに、その…………気持ちよかったし…………」

 宮原さんは恥ずかしそうに口にする。……すごくえっちだ。



 風呂から上がり、部屋に戻った後も私はひたすら宮原さんに謝っていた。流石にあれはいくらなんでもやりすぎた。反省しなければ。ちなみに、案の定私の用意した下着はサイズが合わなかったため、結局下着は着けていない。


「そういえばわたしってどこで寝ればいいの?」

「あぁそれなら布団出してくるよ。多分どこかに直してるはずだから」

「同じベットで寝たりは?」

「ないです」

 



 不思議な気分だ。ちょっと前までは話すことのなかった人と、今ではこうして一緒に眠りについている。普段の私であればまずしないような行動だった。私も、変わってきているのだろうか。変わっているとしたら、それはきっと宮原さんのせいだろう。今はただ、この時間が心地いい。ずっとこんなふうに他愛のない時間を過ごしていたい。そんなことを思っている私は強欲なのだろうか。ずっと同じなんてありえない。永遠なんてものは存在しない。だからこそ、私は今を大切にしたい。そうして、私は眠りにつく。



 


 

 

 

 

 

 

 

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迷える少女は恋をする あぽちー @apochy

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