なみだのひみつ

霜月あかり

なみだのひみつ

ある日、ゆうくんはふしぎに思いました。

「ねえ、ママ。“なみだ”って、どうして出るの?」


ママは少し考えてから、にっこりしました。

「うれしい時も、かなしい時も、びっくりした時も……いろんな時に出てくるのよ」


「ふーん……」

ゆうくんは空を見ながら、いろんなことを考えはじめました。



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もしも、“なみだ”に味があったらどうだろう。


かなしい“なみだ”は、しょっぱい。

なめると、海みたいにひろがるんだ。


うれしい“なみだ”は、ほんのり甘い。

サイダーのつぶつぶみたいに、ぴちぴちはじける。


くやしい“なみだ”は、すっぱい。

レモンをかじったみたいに、口をぎゅっとしぼめちゃう。


そしてねむたい“なみだ”は、あたたかいミルクの味がする。

そのままごろんと、眠ってしまいそう。


……もし、ぜんぶまぜたら?

どんな味になるんだろう?

ゆうくんは、ちょっとこわくなって、ぺろりとしたいけど、やめておきました。



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次に思いついたのは――。


「“なみだ”ジュース屋さん」


グラスに“なみだ”を注いで、

「うれしなみだソーダ」「くやしなみだレモネード」「ねむたいなみだホットミルク」

どれにしますかー?


お店は大にぎわい。

でもまちがって、ぜんぶまぜちゃったら……

カウンターからぶくぶく泡がふきだして、大さわぎ!



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こんどは「“なみだ”工場」


ベルトコンベアの上を、ぽろん、ぽろん、と

“なみだ”のしずくが流れていきます。


しょっぱい“なみだ”は、塩としてつかわれて、

甘い“なみだ”は、おかしのざいりょうに。

すっぱい“なみだ”は、ドレッシングに。


工場のおじさんは大いそがし!

でも、“なみだ”がとまらなくなって、ラインがつまってしまい、

「もうムリだー!」と頭をかかえました。



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やがて、ゆうくんの想像は、

“なみだ”をあつめることへ広がっていきます。


コップにいっぱい。

バケツにいっぱい。

それから、プールいっぱい。


やがて「なみだの池」ができました。

そこにはキラキラひかるお魚が、ぷかぷかすんでいるかもしれません。


かなしい“なみだ”のお魚は、しずんでばかり。

うれしい“なみだ”のお魚は、はねてばかり。

くやしい“なみだ”のお魚は、ぐるぐるおいかけっこ。

みんなちがって、おもしろい。



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でもね、もっとあつめたら――。

大きな「なみだダム」ができるかもしれない。

いろんな人の“なみだ”を、せきとめて。


でもダムはだんだんいっぱいになって……

ついにあふれだした!


キラキラの“なみだ”が、町じゅうにあふれて、

「なみだこうずい」になってしまいました。


みんなびしょぬれで、わらったり、おこったり。

でも、びしょぬれのまま顔を見あわせてわらったら、

なんだかとっても、すっきりした気もちになりそうです。



---


そこまで考えたとき、ゆうくんはふと手をとめました。

ほんとうの“なみだ”って、ちょっとちがうんだよね。


ママがそっとほっぺをなでてくれたり、

「だいじょうぶだよ」って声をかけてくれたりすると、

“なみだ”はすうっと、きえていくんだ。


ゆうくんは、ママにぎゅっとだきつきました。

「“なみだ”って……あったかいんだね」

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なみだのひみつ 霜月あかり @shimozuki_akari1121

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