詩「バス停」

金子よしふみ

第1話

たしかそのバス停は商業ビルの裏にあったと記憶していた

人波がそちらに向かって流れていた

バス停に行きたいのに大勢の人に阻まれてなかなか方向を変えられない

そんな時に限って悟りのようなひらめきがある

情報の確認と言った方が正しいのかもしれない

スマホを開く

検索をしてからバス停を調べた

不確かなおぼろげが明晰に訂正された

バス停は移動していた

バスステーションの一カ所にそこはあるのだ

時計を見る

今から戻ってみるしかなさそうだ

人波から外れて近くのバスステーションへ向かった

乗りたいバスと発着番号の経路図と時刻表をスマホで見て

そこへ進む

バスはもうすでに来ていた

中央の乗り口からバス内に入っていく

キョロキョロと前方後方を見やって

空いている一人掛けの椅子に座った

ほんのりと額が滲んでいた

ハンカチを使うまででもない

先ほど見やった座席に座る人々はまるで孤独なようだった

このバスは川を渡る

私はそこを通って向かわなければならない

バスのドアが閉まった

ああ、間に合った

その安堵だけが心に残った

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詩「バス停」 金子よしふみ @fmy-knk_03_21

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