解説 槍天翔

 渋谷古書堂蔵 『戦国戦闘力学概論』より


 槍天翔(そうてんしょう)


 戦国時代、沼地に築かれた難攻不落の城として知られる、鰻氷城(まんひょうじょう)の攻略戦において、攻城兵器が一切機能しない泥濘(でいねい)の中で、ある足軽大将が編み出したとされる奇策が、この「槍天翔」の起源である。


 これは、槍をただの突く、薙ぐといった武器としてではなく、自らを天高く飛翔させるための「第三の足」として用いる、異色の体術である。

 術者は、槍の穂先を、地表の硬い岩盤や木の根などに突き立てて強固な支点とし、全身の体重と、特に鍛え抜かれた脚力をもって、その強靭な槍の柄(え)を極限までしならせる。

 最大まで蓄えられたその反発力が、解放される瞬間に生まれる凄まじい運動エネルギーが、術者の体を、あたかも鳥の如く、天高く飛翔させるのである。


 平面的な戦場において、突如として「高さ」という三次元的な機動力を得るこの技は、敵の包囲網を脱したり、あるいは、敵将の頭上から奇襲をかけたりと、その応用範囲は計り知れない。


 ※あまりに人間離れしたその跳躍力から、当時、敵対した忍者軍団からは、妖術の一種であると、本気で恐れられていたという。

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