第19話 目覚めの刻 その九

瞬く間に静寂に包まれたシェルター内に、テイルの次の言葉が響き渡る。


「皆様の言葉はわかります。私自身も信じてほしいと言うだけでは皆様の理解を得る事は難しいとわかっています。ですがどうか、今回だけはなんとか私の言葉を信じてはもらえないでしょうか?」


「……姫様……」


「……もしも今回、ここにいる皆様のなかで一人でも死者が、いえ、負傷者が出た時には、皆様に私が嘘を吐いたという事で、この首を刎ねて手土産にし、魔王軍に降伏すると良いでしょう」


「え、ええっ!?」


「ひ、姫様!?」


テイルの言葉を聞いた避難民達やダン先生、トーブル隊長が悲鳴を上げる。

そんな一同の姿を見たあとでテイルは、言葉を続けていった。


「それが私の覚悟です。そしてこの覚悟を聞いた上で、皆様に思い出してほしい事があります」


「……え? 思い出してほしい事……ですか?」


「そ、それは一体……?」


「私はフェリアシティの玉座に座る以前から、出来る限り私の味方をしてくれる方々には嘘を吐かないようにしてきました。三年前のあの日もそうです」


「姫様……」


「ですが奮闘虚しく王国は滅びてしまいました。そんな私の言葉ですから、皆様のように私の言葉は信じられないと言うでしょう」


「……」


「ですから今回は私の首を皆様に差し上げると約束をいたしました。その上で皆様に約束いたします」


「……はい」


「必ず、一人の死者も負傷者も出さずに皆様をここから生きて帰らせてみせます。どうかその為に道を開けていただきたいのです。皆様、どうかよろしくお願いいたします!」


ここまでを話したテイルは、避難民達がどのように行動していくのかを注視し始める。

その一方で避難民達は近くにいる者達と簡単な話し合いを始めていき、テイルの言葉にどう答えていくのかを考えていった。

その時である。

テイルが突然頭上に目を向け、とある魔法を使用していった。


「……むっ!」


「うん? 姫様?」


「攻撃されました。魔導シールド展開!」


「え? ……うっ!?」


「わっ!?」


「……え? な、なんだ!?」


避難民達が相談をしているところに撃ち込まれたバンカーバスターは、テイルが展開した魔導シールドで完全に防がれる。

しかしバンカーバスターの爆発音や振動はある程度が魔導シールドを貫通してシェルター内に響いてきた為、テイル以外のすべての者が悲鳴を上げていく。

するとこの事態が避難民達の話し合いを早めていった。


「ふう、すべて防げましたね」


「ひ、姫様、今のは……?」


「バンカーバスターでしょう。まあ私がすべて防ぎましたが」


「そ、そうですか……」


「ええ」


「……あ、あの、姫様……」


「うん? どうしましたか、皆様?」


「結論が出ました。我々は姫様の道を開けさせていただきます」


「そうですか! ありがとうございます、皆様!」


避難民達の言葉を聞いたテイルは、避難民達に深く頭を下げていく。

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