第20話 目覚めの刻 その十
テイルが頭を下げてきた事に慌てた避難民達は、すぐにテイルへ頭を上げるようにお願いをしていった。
「ひ、姫様!?」
「や、止めてください!」
「そうです姫様! 頭をお上げになってください!」
「……ですが……」
避難民達から頭を上げるように言われたテイルだったが、頭を下げたまま困惑気味の声を出していく。
するとそんなテイルに、ダン先生が声を掛けていった。
「……姫様、今は頭を上げる下げるの議論をしているような場合ではなく、一刻も早く今の事態を打開する事が先決だと思います」
「ダン先生……」
「ですから姫様、すぐに行動に移りましょう。早くしないと避難民達の体力と精神力に限界がきてしまいますし……」
「……わかりました。避難民の皆さん!」
「は、はい!」
ダン先生の言葉で頭を下げる事を止め、先に進む事を決めたテイルが避難民達に声を掛けていく。
「私は行きます! だからもう少し、もう少しだけ待っていてください! お願いします!」
「わかりました!」
「我々からもお願いします!」
「頑張ってください、姫様!」
「皆さん……ありがとうございます! それでは行きましょう、ダン先生、トーブル隊長!」
「はい!」
「……あっ、は、はい、わかりました!」
先に進もうとしているテイルから声を掛けられたダン先生とトーブル隊長だったが、その時の反応は正反対のものになってしまう。
ここまでをテイルの隣で補佐する形になっていたダン先生はテイルの声掛けへ即座に反応出来たのだが、テイルの言動に圧倒されていたトーブル隊長は、テイルの声掛けに対してすぐに反応出来なかった。
しかしテイルはそれを気にする事もなく、避難民達が開けてくれた通路を通って目的の場所へ一直線に走っていったのである。
「……よし、ここですね!」
「……え? ここ? 何も、ありませんが……?」
到着した場所はシェルターの一角、ただの壁の前であった。
これにトーブル隊長は困惑したのだが、テイルはすぐに次の行動を始めていく。
「えぇと確か……このように……」
「……え?」
トーブル隊長が困惑しているなか、テイルは壁に特徴的なノックをしていった。
すると壁の一部が横にスライドしてパスワードの入力装置が現れる。
「……え!? こ、これは!?」
「……このシェルターの極秘機構です。今からこれを……」
「え? ええ?」
現れたパスワード入力装置にトーブル隊長が混乱する横でテイルがパスワードを入力していく。
最初は画面を覗き込み、続けて画面に両手を押し付けていった。
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