第18話 目覚めの刻 その八
テイルの言葉と仕草に恐縮しながら、避難民達の代表は約束について話していく。
「今このシェルターにいる我々全員が、無事にここから生きて帰る事が出来る。そう約束していただきたいのです……宜しいでしょうか、姫様……?」
「……なるほど……そういう事ですか……ふむぅ……」
代表の言葉を聞いたテイルが、顎に手を当ててどのように返答していくかを考え始めていった。
そんなテイルにダン先生は、服の裾を引っ張って自身の方を振り向かせる。
そうして振り向いてきたテイルにダン先生は簡単に承諾しないように、と首を左右に振って見せていく。
これを見たテイルは、同じようにダン先生に向かって首を左右に振ると避難民達に向き直り、力強く宣言をしていった。
「……わかりました! 約束しましょう! ここに避難してきている方達全員を、必ず全員無事にここから生きて帰らせてみせると!」
「おお!!」
「なんと!?」
「すごい!! さすがは姫様だ!!」
テイルの宣言を聞いた避難民達から大歓声が上がり、逆にダン先生は頭を抱える。
こうして大歓声を上げていった避難民達だったのだが、その一部からテイルに質問する者達が現れた。
「……あ、あの、すみません……本当に、その約束って、守ってもらえるものなのでしょうか……?」
「なっ!? お前はなにを言っているんだ!?」
「いや、わかってるよ! 俺がどれだけ無礼な事を聞いているのかは! でもただの気休めを言っている可能性もあるだろ!?」
「だからってお前……」
テイルの言葉に疑問をぶつける避難民に、テイルと交渉していた避難民がなんとか落ち着けようとしていく。
そこに別の避難民が参戦していった。
「……俺も同じ考えだ」
「なにっ!?」
「お前も!? どうしてだよ!?」
「だって姫様は三年前にも絶対に勝つって言っていた戦いに負けてしまったし、それでフェリアシティ王国も滅亡したんだぜ!?」
「い、いや、それは……」
「なんで口ごもるんだよ!? 姫様の事を心の底から信じていたら、口ごもったりはしないはずだろ!?」
「い、いや、そんな事は……」
「あるんだろうが!?」
テイルに対する不信感をぶつけてきた避難民達と、テイルの言葉を信じようとする避難民達の口論は徐々にヒートアップしていく。
そうして口論から殴り合い蹴り合いの大乱闘に発展するかと思われたその時であった。
突然辺りによく通る澄んだ大声が響き渡ったのである。
「皆さんそこまで! 静かにしてください!」
声の主は、テイルであった。
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