老人ホームに暮らす「私」は認知症を患っている。
しかし、ある夢を見たことがきっかけで、老人ホームから抜け出して我が家を目指す日々が始まった。
ソファに座って大河ドラマを観ている夢……そしてそのとなりに、大事な何かが――。
記憶力、体力の衰え……人間が生き続けることにおいて避けられない老いの問題。
本作は、この重いテーマと正面から向き合いつつ、とても優しくて明るさのあるタッチで描かれています。
そして、記憶をなくしても心の赴くままに動いた主人公を通して、愛するひとと一緒に生きたという事実がどれほど大事なことなのか、教えていただいたように感じました!
素晴らしい物語です!
是非ともご一読を!!!
私の祖父は、最期の時まで頭がハッキリしたまま亡くなりました。
良き人生の、良き最期だったと思います。
ただ一方で、祖母はなかなか寂しそうにしており、度々私に気にかけてもらいたそうな行動をとっています。
もしかしたら、そういったものが蓄積されていき、ある時に認知症の影が忍び寄るのかもしれません。
その時、人生を共に生き、常に隣にいた存在の事を覚えていられるかどうか……それは誰にもわかりません。
ですが、やはり願うならば、しっかりと覚えたまま旅立ちたいものですね。
ちなみに、自分はボケ老人になるだろうなという謎の確信があります。
恥ずかしながらこのまま生涯独身となりそうなので、忘れて困るものは少ない人生となりそうです。
いつか旅立つときのことを考えながらお読みください。
普段はファンタジーや恋愛を中心に活動されているテマキズシさんの最新作は、純文学路線の短編でした。ちょっと印象が違いますが、とてもいいお話しでした。
主人公は、老人ホームに入っている認知症の老人のようです。毎日のように自宅に帰る夢を見て、毎日のように脱走しますが、都度連れ戻されてしまいます。
ああ、思い出せない。隣にいたのは誰なのだろう、あの人に会いたいんだ!
そして終末にあかされた、彼を突き動かしていたものの正体。
物悲しい中にも魂の救いがある、印象的なお話しでした。
誰にでも可能性のあるお話。一度読んでおくとよいと思います。