第21話 オーク村
気が付けば、いつの間にか朝日が昇っていた。
でも、森の中は相変わらず薄暗く、ジメジメしている。たぶん、物が腐ったような臭いに包まれているのだろうけど、鼻が慣れて感じなくなっていた。
「せあっ!」
右手のソードでゴブリンの顔を削り取り、左手でショットの狙いを付ける。
左手の向かう先にあるのは、大きな体のオークだ。
「ショット!」
オークに向けて細い糸状の時空間を発射する。これなら敵に知覚されにくいし、敵を切断できる。
「GA?」
オークも糸のように細い時空間には気付けなかったのか、間抜けな声をあげてあっさりと首を刎ねられた。
「ふぅー……」
これで終わりだ。
ゴブリン十一のオーク三か。だいぶ集団の数が増えてきた。これはもしかすると、ゴブリンの巣が近いのかもしれない。
「できれば攻略したいなぁ」
ゴブリンは、彼らにとって価値のあるものを収集する習性がある。人間から見れば価値のないものがほとんどだが、その中には人間の使う貨幣や獣人貨も含まれることが多い。ゴブリンの巣の規模次第だが、中にはとんでもない量の貨幣が眠っているかもしれない。
それに、期待できるのは貨幣だけではない。ゴブリンの使う武器や防具はもちろん、中には高価なマジックアイテムを持っていたなんて事例もあるほどだ。
なぜゴブリンがそんなものを持っているのかは、モンスターの生態を研究する研究者の人たちのお仕事だ。ボクたち冒険者は、ゴブリンの巣は見つけ次第叩いて、大きくなる前に潰すことがお仕事である。
「まぁ、ゴブリンの巣なんてそんな簡単に見つからないけどね……え?」
そんなことを言っていたら、昼間でも薄暗い森の中で明るい場所を見つけた。
「もしかするの……?」
ボクは息を潜めて明るい方へと誘われるように進む。
見えてきたのは、粗末な作りの掘っ立て小屋の集まりだ。だが、この掘っ立て小屋、妙にサイズが大きい。それもそのはず、ちょっとした村規模の中を闊歩しているのは、オークたちだった。中にはゴブリンの姿もあるが、オークの方が数が多い。
ゴブリンの巣を探していたんだけど、どうやらオークの村に来てしまったようだ。
ボクはオークの習性を思い出す。
オークは、ゴブリンと共生している場合が多い。ゴブリンの用心棒としてオークがいる形だ。ゴブリンは、オークに用心棒のお礼として食料や財宝を渡す場合がある。
ボクはこれまで、ゴブリンとオークが一緒に行動しているのを何度も見てきた。たぶん、オークはこの村の出身だろう。
つまり、この村のオークたちはゴブリンが集めた財宝を持っている可能性が高い。
じゃあ、やることは一つだ。
村の規模的にそこまで期待はできないけど、少しでも足しになればいいなぁ。
そんなことを思いながら、ボクは右手で村を歩く一体のオークに狙いを付ける。
「ショット」
発射するのは、細い糸状の時空間だ。
発射した時空間は、狙い通りオークの首を刎ねた。
ずしゃりと地面に落ちるオークの首。遅れて体の方が青い血を撒き散らしながら地面に倒れた。
まだオークたちは異変に気付いていない。
今のうちにできる限りオークの数を減らしてしまおう。
ボクは村の外れや物陰にいるオークから優先的に狙い撃ちする。ショットの威力は強力で、どのオークも一発で首を刎ねることができた。
「PIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
しかし、ボーナスタイムもすぐに終了する。
村中にオークの悲鳴が轟き、オークやゴブリンたちが家の中に隠れ、代わりにわらわらと武装したオークたちが出てきた。
でも、下手人であるボクがどこにいるのかわからないのか、キョロキョロと周りを見渡している。
「もうちょっと減らせるかな……」
小声で呟くと、ボクは武装したオークにショットの狙いを付けた。
ショットを放つと、オークの首が飛び、オークたちが新たな犠牲者に驚いている。
ボクのショットは、高速で飛ぶ細い糸状だ。それを発見し、避けるというのは非常に困難だろう。
オークたちからすれば、なにもないのに急に仲間の首が飛んだという認識なのかもしれない。
それから二体、三体とオークの首を刎ねていくと、オークたちは恐慌状態となってしまった。
その場で棍棒をブンブン振り続ける者、武器を捨てて空に祈り始める者、中には漏らしているオークまでいる。
そのすべてをボクはショットで刈り取った。
これで村の掘っ立て小屋の外にいるオークは片付いた。あとは掘っ立て小屋の中にいるオークとゴブリンだ。
「どうしようかな?」
ボクのショットなら、掘っ立て小屋の壁も貫通して攻撃することはできる。
でも、あてずっぽうになるし、それでマジックアイテムなど売り物になるものを壊してしまうことも考えられた。
それに、できる限り魔力の消費は抑えたい。
「じゃあ、行くかな」
ボクは結論を下すと、森の中からオークの村に侵入した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます