第22話 新能力発見
「ショット!」
「PIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
オークの村。粗末な掘っ立て小屋に入っては中のオークやゴブリンを始末していく。
「ん?」
不思議な生物がいる。まるでゴブリンのような身長のオークだ。オークの子どもか、ゴブリンとのハーフだろうか?
部屋の隅で震えている小さなオーク。そのオークを守るように立ちはだかる必死の形相のメスのオーク。
メスオークは珍しいな。
「ショット、ショット」
まぁ、どうでもいいんだけどね。
たしかに、子どものオークを殺すことに心の抵抗がないわけじゃない。
でも、そんな抵抗はとっくに克服済みである。
オークたちを始末し、掘っ立て小屋の中を漁ると、大きめの木箱が出てきた。木箱を開けると、ぎっしりと茶色いものが入っている。
銅貨だ。人間の使っている銅貨と獣人銅貨が一緒に仕舞われている。
「当たりだね」
たぶん、この村のオークがゴブリンの警護をする代わりにゴブリンから献上されたものだろう。こんなにあるということは、それだけ長い間ゴブリンと協力関係が続いているのか、複数のゴブリンの巣と契約しているのかもしれない。
「もしかして、こっちの箱も?」
見れば、同じような木箱が二つある。
もしかすると、銀貨と金貨の箱かな?
ちょっとドキドキしながら木箱を開けていく。
「うーん……」
二つ目の箱は、またまた銅貨がぎっしりだった。銀貨を期待していただけにちょっと残念だ。
「とすると、こっちも?」
残った一つの木箱を開けると、やっぱり銅貨だった。
「まぁ、これでも大金だし、いいんだけどね……」
変動するけど、銅貨はだいたい六百枚くらいで金貨一枚だからね。これだけあれば、たぶん金貨二十枚くらいにはなるだろう。
「ん?」
その時、ボクは木箱の中に古びた鍵を見つけた。
オークにとって大事な物であるはずの銅貨と一緒に入っているんだ。たぶん、この鍵も大事な物のはず。
「えーっと……」
周りを見渡すと、鍵が必要そうなそれっぽいものがない。
この掘っ立て小屋で鍵を保管しているだけで、鍵は別の所で使うのだろうか?
「ん?」
その時、死んだ子どものオークが何か持っていることに気が付いた。
近くで見ると、小さな宝箱みたいなものだった。
「これかな? ごめんね」
ボクは子どものオークの腕の中から宝箱を取り出す。ちょっと錆びているけど、この宝箱自体も売れそうだ。
「あった、あった」
思った通り、宝箱には鍵穴があった。鍵を差し込むと、カチリと填まる。
ゴクリと唾を飲んで宝箱を開けると、中には金貨と銀貨が入っていた。
「おぉー!」
数えてみると、金貨が二十八枚もある。
大切に宝箱を時空間に仕舞うと、ボクは一番大きな掘っ立て小屋を後にした。
「え?」
大きな掘っ立て小屋を出ると、ずらりとゴブリンとオークに取り囲まれていた。
しかも、かなり殺気立っている。
まぁ、ボクは彼らからしたら村を襲った張本人だし、怒るのも当然か……。
マズいことに、鉄の剣を持ったゴブリンをはじめ、ゴブリンメイジやゴブリンアーチャーの姿も見えた。
でも、ボクは慌てない。
瞬時にボクを包むようにシールドを展開すると、ボクを中心にゴブリンの首あたりの高さで円になって広がるように糸状の時空間を発射する。
「PIGAAAAAAAAAA!?」
「GAAAAAAAA!?」
途端に聞こえる掘っ立て小屋の崩れる音とオークの悲鳴。
シールドを解除すると、そこは地獄みたいな光景だった。首を失って倒れている無数のゴブリン。そして、膝下あたりで両足を斬られ、倒れて蠢動しているオークたち。
ゴブリンとオークの青い血がどんどんと地面にまるで海のように広がっていく。
ボクでも見た中でも一、二を争うほどひどい光景だ。
「ショット」
でも、ボクは動揺を出さずにまだ生きているオークたちを処理していく。
それからすぐに生きてるオークもいなくなった。
「ふぅ……。あれ?」
ホッと息を吐くと、ボクは不思議な感覚に襲われる。
すぐに違和感の原因である時空間に意識を向けると、そこには驚きの結果があった。
「魔法が、収納されてる……?」
なんと、ボクの時空間に魔法が収納されていたのだ。
たぶん、ボクがシールドに包まっているうちに撃たれたのだろう。ゴブリンメイジのファイアボールだ。
ボクの展開する時空間は、透明ではないので、包まってしまうと外の様子がわからなくなる。シールドは強いけど、唯一の弱点と言ってもいいだろう。
だからボクは気付くのが遅くなった。まさか、時空間が魔法まで収納できるとは……。
しかも、魔法は通常だんだんその威力を減衰していくのだけど、時空間に収納されているファイアボールにその様子は見られない。
そして、魔法にばかり気を取られていたけど、どうやらゴブリンアーチャーの放った矢まで収納されているようだ。
この収納された魔法や矢って、外に出したらそのまま飛んでいくのだろうか?
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