第41話 後編 川辺の大決戦!チーム釣りバトル
「へっ、今日の勝負はひと味ちげぇぞ!」
シューユーが腕まくりしながら宣言する。
「……いや、どうせなら“ひと味噌汁”くらい違ってほしいな」
ガイルが真顔でボケをかます。
「なんだそりゃ!? ……よし、わかった。
魚が釣れたら必ず親父ギャグ言うルールにしようじゃねぇか!」
シューユーが唐突に言い出した。
「おもしれぇ! 任せとけって! オヤジギャグなら“俺っちの十八番”よ!」
バルクが豪快に笑い、すぐに仕掛けを投げ込む。
「兄ちゃん……それって、釣れなかったらどうすんの?」
コーガイが心配そうに聞く。
「てやんでい! 釣らなきゃ始まらねぇんだよ!」
シューユーが一蹴した瞬間――バルクの竿がグッとしなる。
「うおっしゃあ! かかったぞ!」
バルクは鮎を引き上げ、満面の笑みで掲げた。
「……で、親父ギャグは?」
ガイルが静かに促す。
「え、えーっと……鮎だけに……“あゆーとおりに釣れたぜ!”」
バルクが汗をかきながら捻り出すと、
「……雑だな」
ガイルの冷静な一言で場がざわつく。
「まあまあ!最初だ、こんなもんよ!」
シューユーが肩を叩きながら豪快に笑った。
次に竿をしならせたのはコーガイだ。
「兄ちゃん!釣れた!」
鮎を掲げ、得意げな顔で言った。
「じゃあギャグいけよ、弟分!」
シューユーがニヤリ。
「えっと……鮎が釣れて、“あゆえに幸せ”……とか?」
一瞬の静寂――。
「ぷはっ! なんだそれ! だけど嫌いじゃねえな!」
バルクが腹を抱えて笑い出す。
ガイルも続いて竿を動かし、見事に一匹釣り上げた。
「……ふむ、これは“鮎(あゆ)みの一歩”だな」
真剣な顔で言うものだから、余計にじわじわ笑いが込み上げてくる。
「ガイル、おめぇのは哲学すぎて親父ギャグってより“説教”だな!」
シューユーがニヤニヤしながらツッコむ。
ところがシューユー本人はしばらく釣果なし。
引きつった顔で竿を握りしめ、ぼそっとつぶやく。
「ちっ……釣果なしで……“超悲しい”……」
その嘆きギャグに、全員吹き出した。
「兄ちゃん! ダジャレっていうか、ただの愚痴だろ!」
コーガイが大笑い。
「良いルアー買ってくルアー」
ガイルが小声でボケを重ねてきて、バルクが転げるほど笑う。
ようやく一匹釣り上げたと思ったら、今度はコーガイの仕掛けと絡まる始末。
「このー! コーガイ、お祭りだ! “お祭りでおまえ釣り!”」
シューユーは竿を掲げて叫んだ。
「兄ちゃん、それ完全にこじつけだろ!」
コーガイが大声で突っ込む。
やっと本調子に戻ったのか、シューユーの竿も大きくしなり、鮎が飛び出した。
「よっしゃあ! ……ったく、こんな簡単に釣れちまって、“あゆーまに一丁あがり”よ!」
四人は川辺で爆笑。
その後も魚が釣れるたびに、無理やりひねり出したダジャレと笑い声が飛び交い、
まるで“釣り大会”というより“ダジャレ大会”のようになっていた。
川辺に響くのは、鮎の跳ねる音と――おじさんたちのダジャレ。
「よーし、また来た!」
シューユーが竿を振ると、水しぶきと共に鮎が飛び出した。
「……おっとっと、逃がすもんかい! “鮎(あゆ)ことながら、いい引きだねぇ~”」
「出たな兄ちゃんの親父ギャグ!」
コーガイが大笑い。
「シューユー、それ……ギャグというより居酒屋のメニュー紹介みたいだな!」
バルクが竿を持ちながらゲラゲラ笑う。
「やかましい! てめぇらも考えろってんだ!」
すると、ガイルの竿がグッとしなる。
静かに鮎を引き上げると、真顔で言った。
「……これは、鮎(あゆ)しい勝利だな」
「ガイル、渋い顔で言うなって! 余計に笑えるだろ!」
バルクが地面を叩いて爆笑する。
続けざまにコーガイが鮎を釣り上げた。
「兄ちゃん、見ろよ! “鮎(あゆ)えに俺もうれしい!”」
「コーガイ、それ前にも言っただろ! ネタのリサイクルすんじゃねぇ!」
シューユーが即座にツッコむ。
「いや、魚だから“リサイクル”じゃなくて“リリース”だな」
ガイルがさらっとボケる。
「……おっさんチーム、だんだん崩壊してきたな」
僕は遠巻きに見ながらほくそ笑む。
しかしそんな心配をよそに、バルクが次の鮎を釣り上げ、ドヤ顔で叫んだ。
「見ろ見ろ! “鮎(あゆ)ことに俺っち天才!”」
「……バルク、それはダジャレじゃなくてただの自己紹介だ」
ガイルの冷静なツッコミに全員吹き出す。
結局、おじさんチームの釣り場は、
鮎を釣るたびに「誰が一番くだらないギャグを言えるか」という戦場になっていた。
やがて太陽も傾き、川辺の喧騒はようやく静まった。
皆が釣竿を置き、鮎の入った籠を持ち寄る。
「さーて、結果発表といきますか!」
僕が声を張ると、一同がざわめき立った。
第4位 おじさんチーム
「まずは――おじさんチーム! 釣果は……16匹!」
「おぉー! 思ったより釣れてんじゃねぇか!」
バルクが胸を張る。
「……でも途中から“ダジャレ大会”になってただろ」
僕が突っ込むと、コーガイが慌てて手を振った。
「兄ちゃんのせいだよ! ギャグ言わなきゃ釣らせてくれなかったんだから!」
「このー、スットコドッコイ! ギャグは魂だ! 鮎も笑って釣られたんだ!」
シューユーが豪快に笑い飛ばす。
ガイルは静かに鮎を一匹掲げ、真顔で一言。
「……これは“鮎(あゆ)しき敗北”だな」
「最後までギャグで締めるのね」
第3位 ガールズチーム
「次! ガールズチーム! 釣果は……18匹!」
「わぁ~! やりましたぁ!」
フローラが両手で鮎を掲げて、嬉しそうに飛び跳ねる。
「恋と一緒で、焦らして勝負だったねっ!」
ベータがピースサイン。
「けっこう釣れてたわね!」
ミナもニコッと笑い、竿を軽く振った。
ゼータはおっとりと告げる。
「……まあ、勝負事は順位よりも、楽しんだもん勝ちどすえ」
「カッコいいこと言うなぁ」
第2位 子供チーム
「そして……子供チーム! 釣果は……24匹!」
「副船長! オラたち勝ったぞー!」
シュンヘイ君が岩の上で海賊ポーズを決める。
「んだんだ! “イモリ丸”の勝利だぁ!」
イモリスちゃんも両手を腰に当てて胸を張る。
「違ぇ! “シュン丸”だぁ!」
「イモリ丸!」
「シュン丸!」
また始まった言い合いに、場がドッと笑いに包まれた。
「……あ、危なかった」
釣りの天才、恐るべし。
第1位 ヤングチーム
「そして栄えある1位は――ヤングチーム! 27匹!」
「……ふむ、やはり装備の差だな」
ヒューが無表情で鮎の籠を掲げる。
「いやいや、自分で言うな!」
僕は全力でツッコむ。
エプシロウは腕を組み、静かに目を閉じた。
「……魚が避けてくれたおかげで、結果として仲間が釣れた」
「ひとりだけ違う趣旨だったような」
皆が大爆笑。
「というわけで――優勝はヤングチーム!」
僕の声に拍手と歓声が広がる。
夕暮れ。
川辺で火が焚かれ、網の上に鮎が並べられていた。
香ばしい匂いが広がり、全員の腹が同時に鳴る。
「うおおおっ、いい匂いだぁ!」
バルクが両手を広げて立ち上がる。
「……待て。鮎は逃げん」
ガイルが真顔で制止する。
「焼き魚はもう逃げないだろ!」
シューユーがすかさずツッコミを入れる。
「焼けたよっ!」
ベータが嬉しそうに串を差し出す。
串を片手に、それぞれが今日の感想を口にする。
「恋より鮎っ! ……いや、どっちも欲しいかなっ!」
「わぁ~、お魚さん……いい匂いですぅ。
……お魚さんのお味、心までほぐれるんですぅ~」
フローラがほわっと目を細める。
「これは我慢できない!」
ミナは熱々の串を受け取り、ふーふーと息を吹きかける。
ゼータは涼しい顔で串を手に取り、舞妓の所作でかぶりつく。
「……ふふ。鮎の味は、恋より甘いどすなぁ
魚も恋も、香ばしゅう焼けてなんぼどす」
「ゼータさん、それ何か色っぽすぎない?」
僕が慌てると、ミナとフローラが顔を赤くして笑った。
「焼き鮎サイコー!」
シュンヘイ君が大口を開けてかぶりつく。
「この川、オラの胃袋の領海だぁ!」
「んだんだ、骨まで食えっぺ! 」
イモリスちゃんも真似してかじり、歯をカリッと鳴らした。
「おらも副船長として完食するだよ!」
「お、おまえら元気すぎ!」
コーガイが呆れながらも、思わず笑う。
「鮎だけに……あゆる限り食ってやるぜ!」
「兄ちゃん……そのギャグ、もう酔ってるだろ。
この香ばしさ……“鮎(あゆ)だけに、あゆるがたし”だな!」
コーガイが親父ギャグを決めると、
「わっはっはっ! 弟分、やるじゃねぇか!」
シューユーが豪快に肩を叩く。
「旨い……焼き魚は“あゆの塩梅”だな」
ガイルが渋くつぶやけば、
「また説教じみたギャグだな!」
バルクが腹を抱えて転げ回る。
その横で――。
ヒューは鮎を静かに口へ運び、真顔で一言。
「……なるほど。……装備ではなく、食べ方の差だ。
……豊漁。……ただし、胃袋の」
エプシロウは目を閉じて低く渋い声で呟く。
「……避け続けた甲斐があった。魚の旨味は、一層深い」
「いやあ……僕は結局ツッコミ疲れただけな気がするんだよな」
こうして川辺の夜は、鮎の香りと笑い声で満ちていった。
釣り大会の順位なんて、もう誰も気にしていなかった。
おいおい、ここまで読んでくれた粋なあんた、まいどありがとなぁ!
こちとら、釣りに笑いに大騒ぎだったが、楽しんでくれたかい?
もし「おっと、こりゃ面白ぇ!」って思ったら、
いいねにブックマーク、サクッと押しておくんなましよ!
by シューユー
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