海賊の愛し子~転生したら海を守る人々に溺愛されてすくすく成長中です~
千代木 なの
第1話 樽の中の赤ん坊
ふわふわ、ゆらゆら、真っ暗だけど暖かい。あぁ、ブラックな企業で上司に理不尽に怒られるくらいなら、ずっとここにいた方がマシ……。
「ふにゃっ!?」
穏やかだった暗闇の中が急に縦や横に大きく揺れ始め、顔面が何度も壁にぶつかった。
幸い、周りが布団の様なもので囲まれているのでぶつけてもそこまで痛くはなかった。
なに?なんなのもう!後もう少しで眠れてたのに!!
それにしても、ここはどこだろうか?確か昨日は久々に家に帰って玄関に辿り着いた所で記憶が途絶えているけれど……。見渡しても真っ暗だし、フカフカの布団でぐるぐる巻きにされていて脱出は難しそう。
耳をすますと、ザザーッっと波の音が聞こえる。ここは、海が近いのだろうか。
「_____!__。」
「___!!_____?」
突然上から、少し高めの少年の声が二つほど聞こえる。もしかしたら、出られるかもしれない。
「あー!うー、あー!!」
自分の出せる最大の声を出して、助けを求める。それにしても、なんで思い通りに話せないのだろうか?
少し疑問を抱いていると、ガコンッとまたもや揺れた……。けど、前の揺れとは異なり上に持ち上げられるような揺れだった。
「____?」
「______。」
揺れが治まって暫くすると、恐らく天井に当たる部分がメリメリと音をたててゆっくり持ち上がり、光が射し込んだ。
「さて、一体何が入って……」
天井もどきが一気に外されて、久しぶりの日光が慣れない目を刺し、視界は眩しさで真っ白になった。
ようやく目が慣れて、一番最初に見えたのは_____
「……赤ん坊?」
驚きで目を丸くした美少年二人だった。片方はサラサラの長い水色の髪を黄色のバンダナでまとめている深い青色の目の大人っぽい子。もう一人は群青色の髪と淡い緑色の目の活発そうな子。この子は、大人っぽい子とお揃いのバンダナを腕に巻いていた。
普通じゃありえない髪と目の色が目を引く。
何、コスプレイヤー?それに赤ん坊?私は成人女性ですけど……。
活発そうな子に抱き上げられ、珍しい物を見るような目で見つめられる。
「しかもこの赤と黄色のオッドアイ……。もしかして、陸の民の子か?」
陸の民?というか私の目は純日本人の黒なんですが?
不思議に思いながら自分の手を伸ばしてみた。
「……えぶぅっ!?」
……な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?
ぷくぷくと血色の良い小さくて短い手。
私の手は日頃の疲れでもっと荒れていたはず……。
混乱で一人あわあわしていると、鼻の奥を潮の匂いが通った。
見渡せば、息を飲むほどに美しい海が何処までも続いている。青とも、エメラルドグリーンともいえるこの世のものとは思えない色。こんな綺麗な海、見たことがない。
360度全てが海。ここは船の上なのだろうか。
……もしかして、これって異世界転生ってやつ?
それなら、私が赤ん坊でオッドアイだのなんだの言われているのも、少年達の髪や目の色が人間離れしている事にも納得出来る。
じゃあ、あっちの世界で私は死んだってこと?
そんなの、そんなの……。
最っ高じゃん!!これでブラック企業とおさらば出来る!!さようなら理不尽パワハラ上司!!転生させてくれてありがとう神様!!
心の中で小躍りしていると、大人っぽい子が活発な子の手から私を奪うように抱き上げた。
「レイ、とりあえずキャプテンの所に行こう。この子は陸の民だし、どうするかを俺たちは決められない。」
「あ、そっか……。じゃあキャプテンの所に行かないとな。」
「んにゃぁっ!?」
そういって二人は物凄いスピードで駆け出した。
ちょっ、速すぎるって!!
もうちょっと優しくしてよっ!!
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2025/09/10 1話を修正・加筆しました
海賊の愛し子~転生したら海を守る人々に溺愛されてすくすく成長中です~ 千代木 なの @Chiyogi-nano
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