第4話

バス停7個目、その人の前に座っていた人が降りた。

「あぁイケメンくん、拝ませてくれてありがとう。」

座って顔が見えなくなることが分かり、心の中でこう思った。

すると、隣に立っていたいかにも優しそうなおばあちゃんに席を譲ったのだ。

「はい?どこまでイケメンなんですか?」

心の中でそう言った。

良さからの怒りが湧くくらい完璧だなと思った。

おばあちゃんに向ける笑顔もかっこいい。

「だめだ。私もうこの人が好きになってる。」

外に聞こえてしまいそうなくらい大きな心の声。

さっきから心臓の音が大きくなっている。

映画の音がかき消してくれて自分にはバレないけど周りには聞こえているのかな。

そう考えていると降りるバス停に着いた。

そこのバス停は学生も多くおりるため、混雑する。私はいつも最後の方に出る。その人もそうだった。

先どうぞ。と手振りで示してくれて、会釈をして降りる。

座っていたからか、緊張していたからか、それともどちらもなのか、分からないがよろけて出口で躓き掛けた。

すると、

「おっ、大丈夫?」

と手を差し伸べようとしてくれた。

「大丈夫です。ありがとうございます。」

心臓が鳴り止まない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る