第4話 冒険ギルドへ

 チュートリアルはある。運営も武器指南や生産指南などは用意してあるが、全員が必要ではないので、設定からいつでもチュートリアルステージに行けるように出来ているのだ。


 パソコンで説明書を読まなかったウルに気づくはずもなく、噴水前で何をするか悩む羽目になったのだが。


 しばらく呆然としていながらも、まだ人に色々尋ねるほどの精神力もなかった。


 こういう時ってギルドに行けばいいと、ライトノベル知識はあるものの、どこにあるのかはわからない。


 そのため、剣を担いでいるプレイヤーらしき人の後ろをついていくことで、ギルドへ向かうだろうと皮算用をしていたのだった。


 後ろに気付かれることなく、ゆっくり着いていく。


 しばらく歩いていると町並みが変わってきた。先ほどの噴水周りは大きな建物が多く、3階建ての木造建築が多くあった。


 しかし、今は二階建ての小さい家や宿屋の様なものが多くあり、住宅地なのだろうかと凛は考えていた。


 街の中心からどんどん離れていくことに少し疑問を持っていたが、モンスターなどを解体する場所でもあるギルドが中央から外れることもあり得るだろうと考えを改めた。


 そうして10分歩いていくと、西の門に着いてしまった。


 凛は大慌てである。このままだと外に出る上にモンスターと戦う羽目になると。

 しかしこのまま踵を返してどうにかなるわけでもないのだ。


 覚悟を決め、優しそうな門を守る衛兵に話しかけることにした。


「こ、こんにちは。」

「こんにちは?如何されましたか?」

「あ、あの。ギルドはどちらにありますか。」

「それは冒険者ギルドですか?それとも生産ギルドですか?」

「一応どちらも教えて欲しいです。」

「それなら、中央の噴水前にある剣と盾のマークが刻まれた建物が冒険者ギルドですね。」

「中央噴水に確かにあったような…」

「それで生産ギルドは噴水を北に向かった先に槌とポーション瓶のマークが刻まれた建物ですね。この町で二番目に大きいのですぐにわかりますよ。」


「そうなんですか。一番目は。」

「それは当然領主様の館ですね。」

「当たり前でした。商業ギルドなどはあるんですか?」

「この町には小さいながらもありますね。色々相談に乗ってくれるので、南門に歩いていくとお金のマークがある建物がそうですね。」

「ありがとうございます。」

「いえいえ、来訪者の方ですか?最近こちらへ転移してきたんですね。」

「え?ええ、そうです」

「ならあまりこの町には詳しくないのですから、いろいろ私が教えましょう。」


 そう門番の男が色々な場所を教えてくれた。冒険の前には必ず行くべき道具屋、この町では珍しい石造りの武器屋、そして安眠が出来る宿屋。

 冒険ギルドなどの二階にはそれぞれ書庫があり、そこでも情報を得られることもウルに教えた。


 あの時アルテミスが言っていた、この世界の住民は優しいのだという話は本当であり、私自身も何か返していきたいと思った。


「他には聞きたいことはありますか?」

「ええと、門番さんのお名前を教えてほしいです、私はウルです。」


 ぽかんとした顔をした門番は

「私ですか?ルイといいます。西門をメインに守っている守衛ですね。」

「大変そうですね。」

「これが意外とそうでもないんですよ。この町には最強の結界がありますから。」

「最強の結界ですか?」

「詳しく知りたいのなら調べてみるといいですよ。意外と面白い本がありますからね。」


「ルイさんは少し嬉しそう」

 とつい声に出してしまうと

「もちろん。私の名前を知りたいといってくれたのはあなたで二人目ですから。好意的に知りたいと思われるのは嬉しいものですよ。」

「気になった人にはぜひ名前を聞くといいですよ。喜んで教えてくれますから。」

「わ、わかりました。」


 ルイと分かれ、先ほどの道を戻り、中央の噴水までたどり着いた。

 建物の中に一つ大きい建物があり、中央上に剣と盾のマークが彫られていた。


 中に入ると、大きなホールが広がっている。横にはテーブルと椅子が並んでおり、そこで休憩をしたり、プレイヤーや住民が話し合うときに使うのだろう。

 中央奥には受付があり、数人の住人が様々な作業をしている。カウンター下にはプレートが書いてあり、買取などと書いてあった。


 カウンターの横からは階段があり、二階に続いている。


 凜はゆっくりとした足取りで一人の受付のもとへ向かった。プレートには新規登録と書いてあり、冒険者になるためにはここだろうと思ったため。


「あの、すみません。」

「はい、こちらは冒険者の登録専用です。登録でお間違いないですか?」

「はい、登録をお願いします。」


 そう答えたら頭上にボードがでてきた。

【冒険者になりますか?】


【はい】【いいえ】


 すぐにはいを押した。そうすると手元にカードが唐突にでてきた。

「これで冒険者になりました、冒険者についてなどはききますか?」

「お願いします。」



「冒険者というのはクエストを受けてそれを達成する人です。ランクがあり、一番低くFランク、最高はSランクになります。ここまでは大丈夫ですか?」

「はい、問題ないです。」

「冒険者のランク上げというのはCランクまでは同じで、FランクならFランクのクエスト、それを一定回数をクリアすると上がります。」

「Cランクからはギルドから特殊クエストが出るのでそれをクリアすることで上がります。」

「なるほど」

「クエストの種類はお手伝いに始まり、討伐クエスト、採取クエスト、護衛クエスト、緊急クエスト、特殊クエストがあります。」


 詳しく話を聞くとこうだ。

【討伐クエスト】・・・モンスターを規定数討伐する

【採取クエスト】・・・決められたものを規定数採取する

【護衛クエスト】・・・依頼主を決められた場所まで護衛する

【緊急クエスト】・・・モンスターの氾濫や魔王などの発生しすべての冒険者が参加を義務付けられるクエスト

【特殊クエスト】・・・教会や貴族などから依頼される非公式のクエスト


 お手伝い・・・住民がギルドを介するお手伝い程度の軽いクエスト


 特殊クエストだけ異質なものであった。

「特殊クエストというのは。」

「今のランクだと関係はないですが、これから功績を重ねると貴族などから依頼をされることがあります。依頼主と依頼内容はすべて本人たちのみで完結します。」

「すごいですね。」

「ええ。一応ギルドマスターの中でも上の人が立会人として参加しますが。私たちですら特殊クエストはあるのかないのかわからないのですよ。」


「そして、情報の漏洩は禁止です。即刻処刑です。」

「ほ。処刑ですか。」

「来訪者の人は不死ですから、90日の最下層の牢獄行きみたいですね。」

「どちらにしても言わないほうがいいですね。」

「もちろんです。一つそれで処刑された事がありましたね。」


 というのは数年前に最悪の盗賊団がこの大陸の北に居たという。それを討伐するためにAランクの冒険者に貴族の連名で特殊依頼を出した。

 その冒険者がお酒に酔ってしまい、その話をしたのを聞いた悪者の一人が盗賊団に伝えてしまった。


 報復として貴族の一人娘を勢力のすべてを使い襲った。町への移動中だったのもばれていた。門番にも手の内がいたのだった。


 冒険者には頼れないと、王国の勅命により叡智の錬金術師と異端のプリーストが旅立った。1月ですべてを解決した。その中で冒険者が口を滑らしたせいで攫われた事もつかんだ。


 たまたま拉致された男の子が貴族の娘に一目惚れをして自身の命を掛けて逃がしたおかげで死ぬことも何かされることもなかったのが救いだったが。


 王は激しく怒り、有無を言わさず処刑をした。かなり抵抗したが、無事処刑に成功した。


「これより、余は何者でも処刑にする。」


 と宣言したことにより、より一層機密情報をばらすことはなくなった。


「ということなんですよ。」

「ええ。男の子は大丈夫なんですか?」


「ええ。片腕はなくなりましたが。無事生きております。その働きにより爵位が与えられその娘と結婚できたようですよ?」

「よかった。」

「そんな恋愛の話がメインではないんですけどね。しっかりウルさんも依頼が来たら守ってくださいよ?」

「もちろんです。」


「知りたい情報がありましたら、私共に聞くか、二階にある資料室で見るのもいいですよ。」

「資料室ですか。」

「ええ、モンスターの情報屋、町のこと、薬草から、神話までの資料が置いてありますから。」

「では言ってみます。」

「それがよろしいかと。他に聞いておきたいことはありますか?」

「えっとー、なら名前を教えてください。」

「私ですか?私はアリアです。」

「ありがとうございます。アリアさん、資料室へ行ってきます。」


 階段を上り、二階には部屋がたくさんあったが、上にプレートがあり、資料室は簡単に見つかった。


 開けてみると少し埃っぽいが、本棚が何個か、中央にテーブルと椅子が置いてあった。

 資料というのも製本されているものと、紙をひもで止めているものもあった。


 まずは自身のスキルについて、それに周りの情報を知ることが先決だとウルは決めて資料を選んだ。


【始まりの町 オブロン】

【創造神 ガイア】

【オブロンの周辺地図】

【弓の英雄】

【楽しい罠集】

【調合全集1】

【細工に始まり、細工に終わる】

【生活魔法】

【うさぎももわかる、忍者になろう】


 様々な資料をみることにした。




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