第3話 ステータス設定

 ゲームを開始したら綺麗な青空に一面の花畑に私がいた。息を吸うと美味しいと思うほど綺麗な自然に心を奪われてしまっていた。そのことをずっと見ている人が居たのに。

 VR機の電源を入れると、まずは小さな部屋に移動するのだ。

 一人一人与えられるホームと呼ばれる場所で、そこにテレビを設置してYouTubeなどを流している人も多いという。


 ネットの中でしか使えない家具を購入でき、それを自分以外に見ることはない。友人を数人呼ぶことは可能だが。自宅よりプライベートの空間が人気がある。


 部屋の大きさなども、窓から見える景色に扉を開けて庭のようなものも作れる、ホームすら一つのゲームのようであり、スクショを撮りSNSでアップする人も数多くいて、凛もそれを見るのは好きだった。


 有名なキングサイズのベッドも現実で買うと3桁万円かかるのに、ネットだといろいろあり5千円で購入できる。

 実物ではないデータであり、これを機に買う人もいるためブランド店も安価で提供しているのだ。

 ベッドで寝たとしても睡眠欲は満たせないので形だけのものでもある。


 凛のホームは質素であり、友人も一人を除いてVR機など持っていないので呼ぶ人もいない、いろいろ検索しやすいパソコンにベッド、そしてテーブルに座椅子のみしかなかった。壁紙も床も初期のものだ。


 後でやろうと思いつつも、あまり衣替えに興味がなかったので簡素な部屋になっていた。


 凛はすぐにパソコンに向かい、ゲームをクリックした。スマホと同期しているためエボアドがでてきたのでゲーム開始をクリックした。


【座位か臥位になってください。ゲームスタートと脳で考えるか声に出すとスタートします。】


 ベッドに横になり、ゲームスタートと声に出した。





 ゲームを開始したら目の前には綺麗な青空に一面の花畑の中に凜がいた。

 息を大きく吸い込むと花のいい香りが、まるで天国のような世界にしばらく心を奪われていた。


 そうしていると後ろに気配を感じたので振り返る。するとそこには女神がいた。


 絹のような美しい緑髪、目鼻立ちはくっきりしており、大きな瞳は見る人すべてを魅了するほどで、抜群のプロポーションは女性である凛もびっくりするほどであった。

 神々しい見た目につい女神と思ってしまったが。この人は誰なのだろうか。


 凛が落ち着いてきたのがわかったのだろう、女神は口を開いた。


「ようこそ、異世界から来た来訪者の方。私はこの世界の女神の一柱、アルテミスです。」


「あ、どうも…」


 色々話したいことが溢れてしまい、最終的に発した言葉が変な一言になってしまった。

 もっと自己紹介だったり、来訪者とはなんだとか、神はたくさんいることなど知りたいことは多かった。



「あなたのお名前を教えてください。」

「犬飼凛です。犬は動物の犬です。飼うは飼育の飼です。」

「あらあら丁寧にありがとうございます。しかしそれはあなたの真名ではありませんか?この世界での名前です。」

「あ、ええと。うーん。そういわれると難しい」

「それでは最後に決めましょうか。」

「いいんですか。」

「もちろんです。しっかり自身がどうこの世界で生きるのか。それを確定してから名を思いつく人もいますから。」


 凜は久しぶりの友人や家族以外との会話にひやひやしながらも、女神という優しい存在に安心感を覚えていた。


「アルテミス様。先ほどから目の前にふわふわと浮かんでいるボードのようなものはなんですか?」

「これはあなたのステータスを決めるところです。」

「ステータス?」

「あなたの個を確定させるのです。名前や種族、スキルなどを確定させるものです。触れてみなさい。」

「はい、ってわわ」


 白いボードに触れると


 名前:ーー レベル:1

 種族:--

 ステータス

 HP:0

 MP:0

 攻撃:0

 防御:0

 魔力:0

 精神:0

 器用:0

 運:0

 スキル【】【】【】【】【】【】【】【】【】【】


 と書いてあった。名前に触れるとキーボードが出てきて打ち込めるようだ。まだ考えていないため種族に移動した。


 種族は大枠で4種類あった。それぞれ得意なものが分かれており、ステータスの差がある。さらにレベルを上げると種族が進化することができると書いてあった。


【人族】・・・一番多く進化の先も多岐にわたる種族。ステータスも平均で迷ったらこれ

【エルフ族】・・・自然に愛された美形の民族、器用さと魔力が高い。

【ドワーフ族】・・・小さく力強い種族、火と土の精霊に好かれ鍛冶と槌に適性がある。

【獣人族】・・・獣の力を持つ種族。獣の種類によって得意不得意が分かれる。

 それぞれステータスも異なり、人族は全てのステータスに10ポイント割り振られており、エルフは魔力や器用さに振られている。


 とそれぞれ軽い説明がされていた。そして種族を選ぶとステータスも割り振られる。


 エルフでいうと

 HP・・・30

 MP・・・15

 攻撃・・・5

 防御・・・5

 魔力・・・15

 精神・・・15

 器用・・・15

 素早さ・・・10

 幸運・・・5


 ステータスを見るとそれぞれ説明が書いてあった。

 HP・・・体力の総量、0になると倒れ最後に訪れた教会へ移動する。

 MP・・・魔力の総量、0になると全回復するまで魔法が使えなくなる。

 攻撃・・・相手に与えるダメージが増える。

 防御・・・食らうダメージが減る。

 魔力・・・魔法ダメージが増える。

 精神・・・魔法ダメージと状態異常の確率低下。

 器用・・・攻撃のクリティカル率の向上と生産にプラス。

 素早さ・・・高いほど行動のすべてが早くなる。

 幸運・・・クリティカルと生産での良いものが出る確率が増える。


 どれがいいのだろうかと悩んだ。もふもふは好きだけど、動物にはなりたくない。あまり身長を変えるのも動きがおかしくなりそう。


 人族かエルフの二択になったが。少し悩み、エルフにした。


 決定打は美形という文字だ。

 友人を作りたいと思っているうえ、学校のクラスメイトの人とゲームをしたい気持ちがある。しかしこの慣れないゲームを見られてしまうのは避けたかった。

 そのため美形にすることでバレないだろうと凜は考えた。


 見た目も変更できるので、思い切っていろいろ変更をした。

 まず凜はぼさぼさの髪を伸ばして目元を隠してるので、見た目はあまり良くないとみられているが、本来はかなりの美人であり、一度友達に無理やり身だしなみを整えて、服装もおしゃれにしたら都会で死ぬほどナンパをされた上、男に路上で襲われそうになったことがある。その時は友人がこれ以上ないくらい男どもをぼこぼこにして終わった。

 それから凜は恐怖から二度と綺麗にすることをやめた。


 しかしゲームの世界で綺麗だからとエルフにすると決めたので思い切った。

 髪は黒髪のロングから金髪ショートカット。瞳はもともとパッチリしており、色を藍色に変えた。

 自身の胸が大きいことがあまり好きではなかったので、Bカップ程度に小さくした。

 身長は女子の中では大きく、170センチはあるため長身のモデルのようなキャラクターができた。


「綺麗な顔ですね。私はあなたの瞳が好きですよ。」

「え…どうもです。アルテミス様のほうがお綺麗ですよ。」

「美の女神なのでありがたく賛辞は頂いておきますね。」


 次にスキル設定だが、凜にとっては見当もつかない。ライトノベルなどで少しはわかるが、それだけでは怖いのだ。しかしこの場には心強い女神さまがいるので、アルテミス様に色々聞いてみることにした。


「アルテミス様、スキルについて聞いてもいいですか?」

「当然です。私達はそのためにここにいるのですから。」

「スキルとはなんですか。」

「スキルはその人がもつ技術、例えば剣術のスキルを持つのなら、剣の技術は持たざる者より上ということです。」

「注意点とかはありますか?」

「何個かあります。まずはあなたたちはこの世界を魔王から守るために現れたもの、そのため攻撃ができるスキルは必ず1つ以上は持つこと」

「二つ目に初期に無料で獲得できるスキルはこの場で10個決めること、この場から離れたらたとえ1つしかスキルを得ていなくても9個のスキル権ははく奪されます。」


「最後に、スキルはすべて意味があるもので、しっかり得たスキルは最後まで愛してほしいこと。」

「え?愛ですか?」

「ええ、使えないとかいろいろ言われるものもあります、それを生業に生きている住民もいて、それぞれ個性的ながらも強力なのです。」

「わかりました。私はスキルはすべて愛します。」

「ええ、信じていますよ。」


 それでまず攻撃スキルを選ぶことにした。武器スキルが一番最初にでてきた。剣や槍、変わったところだとプロレスなどのスキルもあるみたいだ。

 かなりの数があるが二択に絞った。

【弓】【鞭】スキルだ。遠距離攻撃で扱いやすそうなものはこの二つだと凛は考えた。投てきなどほかのものもあったが。わかりやすいものにしたかったのだ。

 弓は引いて打つ、鞭は振り下ろす。厳密にはいろいろややこしいのだが、そんなこともわかるはずもなく、

 しかし凜はあの動画を思い出した。エルフが弓を引いていた。なら弓だろうと【弓】スキルにした。


 しかし、弓を引いて敵に当てられるのだろうか、そう考えた末、【罠】スキルを選んだ。拘束としてはかなり優秀だろうと考えたのだ。

 それで敵とはあまり正面から戦いたくないと考え、補助スキルから音を消せる【消音】、気配を消せて敵から見つかりづらくなる【気配遮断】

 こちらから先に発見したいので【気配察知】

 弓や矢を作るのに必要だろうと【木工】、生産をやってみたいと思い細工ができるようになる【細工】、ポーションや薬などを作れる【調薬】、素材を取るために【採取】

 そして気になって【鑑定】スキルを手に入れて10個


 ソロ前提であるが、待ち伏せて罠をかけて倒す、一方的に敵を見つけ出し、敵は気配がわからないという猟師でありながら暗殺者みたいなスキル構成となった。


(エルフはライトノベルでは薬師だったり、猟師とか多いから理想のエルフかも!)


 と凛は暗殺者エルフとは思わずに満足していた。


 最後に名前であるが、先ほどはずっと悩んでいたが、今は思い出したかのようにサラッと打ち込んだ。


 ウル 


 狩猟の女神であり、アルテミスと同じ狩りの神ではあるが、どうやらこの世界にはウルは居ないらしい。


 スキル構成と、ウルはアルテミスの優しさにかなり心を許しており、その心がウルという名前を思い出したのだろう。



「あなたはこの世界で好きに様々なことができます。」

「魔王を倒す、たくさん戦う、魔法を使ってみる、たくさん生産をする。」

「自由に出来ます、ウルはこの世界で何をしますか?」


「この世界の住民も友達になりたいです。」

「友達?」


 少しの静寂の後、アルテミスは大笑いをした。

「申し訳ありません。あなたのような純粋な願いを話したのは初めてだったので。」

「ウル、あなたはとても素晴らしい人です。ぜひその気持ち、最後まで忘れない事です。」

「はい!ありがとうございます。」



「では私たちは友人ですね?」


 パチンとウインクをして、アルテミスは言う。


 美しい所作と話の内容にウルは赤面をしたが、これで断ると友人など作れないだろう。チャンスだと決心した。


「不束者ですが。よろしくお願いします」

「丁寧すぎますよ。しかし断られなくて良かったです。」


【称号『アルテミスの友人』『アルテミスの加護』を手に入れた】


「すぐにお話しすることは出来ませんが、もしかしたらまたお話しできるかもしれませんね。」

「楽しみにしてます。いろいろありがとうございました。」



「困ったことがありましたら、住民に聞くことです。あの子たちはとても優しいですから。


「それでは、行きますねアルテミス様。」

「ええ、ウルの行く道が幸せであることを願っています。」


 ステータスボードを全て埋め、完了ボタンを押すと

【異世界へ旅立ちますか?】と出てきたため、はいを押したら、地面が光り目を閉じたらウルは天界から消えた。



「また会えるのを楽しみにしてるわ」






 光が収まり、ウルが目を開けると、目の前に大きな噴水があり。周りは大勢の人が歩いていた。


 自身と似たような布の服を着ており、大きな剣を持ったり、逆に籠を持ち野菜を持ち歩く人もいた。



 ウルはしばらく止まり、呆然としていた。


 チュートリアルがなく、これから何をしたらいいのか全くわからなかったからであった。




 名前【ウル】レベル:1


 種族【エルフ】


 ステータス

 HP・・・30 

 MP・・・15

 攻撃・・・5

 防御・・・5

 魔力・・・15

 精神・・・15

 器用・・・15

 素早さ・・・10

 幸運・・・5

 SP・・・0

 BP・・・0


 装備

 頭:なし

 外套:なし

 上下:布の服

 手:なし

 靴:布の靴

 アクセサリー1:なし


 スキル【弓】【罠】【採集】【細工】【木工】【鑑定】【調薬】【気配察知】【消音】【気配遮断】


 称号 来訪者 アルテミスの加護 アルテミスの友人




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