第3話 謎の投手の正体


 夜中まで「謎の投手」が気にかかって、ショーヘイは輾転反側していた。


 「若い美女で…剛球投手?…なぜ真夜中に?…誰もシッポをつかまえられないってか?」

 思考は堂々巡りしていて、結局、自分でその「幽霊エース」を探しに行くことにした。

 スポーツマンらしく、若くてアクティヴ。

 即断即決で、果断迅速なのが彼のいつもの行動パターンだった。


 闇雲に走り廻っていても、あまりに雲をつかむような話なので、バイクを使うことにした。

 

 15分ほど、友人に聞いた「出没疑惑地点」を、次々に徘徊してみた。

 くだんのオンナは、杳として見当たらない。


 その夜は、結局、無駄骨だった。


 …そういう「捜索」を10日ほど続行した挙句、あきらめかけていたタイミングで、ショーヘイは、遠くで微かに硬球が壁に弾けるときのくぐもった、例の爆発音が

聴こえる気がして、耳を欹てた。


 「あっちだ!」


 だんだんと、規則的な断続的な”破裂”が、近づいてきて、マックスになった時に、…


 「いた!」思わず声が出た。


 工事現場のかなり広々した空き地で、髪を振り乱しながら、懸命にピッチング練習をしている、アンダースローのピッチャーが確かにいた!

 ショーヘイの気配に気づいたオンナは、映画のヒロインのようなしなやかな体躯と美貌で、佇立し、こちらを見ていた。


 「うわあ、すげー別嬪さんだあ! あんた誰?」

 素っ頓狂な声が出て、恥ずかしかったが、謎のオンナは戸惑いを見せつつも、逃げる様子もなく、すこし間をおいてから、嫣然と微笑んだ。


 「ダアレ? もしかして、例の超高校級スラッガーのショーヘイさん?」


 「え? お、オレを知ってるんですか?」

 

 オンナはケラケラと笑った…


<続く>

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