第13話
第13章 – 肋骨への一撃
ヘンは急いでダクトを這い進んでいたが、金属はすでにきしみ、彼の重さに震えていた。
突然、乾いた音が響く。
ガシャーン!
ダクトが崩れ落ちた。
ヘンは暗い部屋へ真っ逆さまに落下し、床に激しく叩きつけられた。
「ちっ…」彼は呻きながら、急いで立ち上がろうとした。
体中がまだ痛んでいたが、息を整える暇はなかった。
目の前に三つの影が立ち上がる。
鋼の棒を握った背の高い男と、震える手でナイフを持った二人の少女。
「見つけたぞ!」
男が唸り声を上げ、ためらいなく突進してきた。
鋼鉄の棒が唸りを上げ、ヘンの頭目掛けて振り下ろされる。
反射的に身をかわしたが、シャツが裂け、体勢を崩して床に倒れ込んだ。
仰向けのまま、振り上げられた棒が再び頭を狙うのを見た。
咄嗟に、ヘンはランタンを点滅させ、強烈な光を男の目に浴びせた。
一瞬視界を奪われ、男の攻撃は床を掠めて空振りする。
その隙を逃さず、ヘンはグロックを構えた。
引き金を絞る。
乾いた銃声が密室に轟いた。
弾丸は男の胸を貫き、血を吐きながらよろめく。
だが狂気の執念で、男は再び鋼の棒を振りかざし突進してきた。
逃げ場はなかった。
鉄の塊がヘンの右脇腹を直撃する。
鋭い痛みが全身を焼き尽くした。
息が詰まり、体が揺らいだが、なんとか踏みとどまる。
だが相手は違った。
最後の一撃を放った男は、そのまま血を撒き散らしながら崩れ落ち、赤い水溜まりの中で動かなくなった。
ヘンは痛みに顔を歪めながら脇腹を押さえた。
骨は折れていない――だが深く鈍い痛みが体を蝕んでいた。
ランタンの光が二人の少女を映し出す。
彼女たちは震え、涙を流していた。
「わ、私たちは…ついていっただけなの…死にたくなかっただけ…お願い、殺さないで…」
一人がすすり泣きながらナイフを落とす。
ヘンは深く息を吐き、床に落ちた荷物と血塗れの鉄棒を拾い上げた。
銃を握ったまま、二人の間をゆっくりと歩き抜ける。
その瞬間、裏切りが襲いかかった。
背を向けた刹那、少女の一人がナイフを握り突進してきたのだ。
反射で振り返り、棒を振り上げる。
乾いた衝撃音。
鋼鉄の棒が少女の頭を叩きつけた。
壁に弾き飛ばされた彼女は、そのまま床に崩れ落ち、額から血を流して動かなくなった。
残された少女は膝をつき、声を張り上げて泣き叫ぶ。
「ごめんなさい! もう何もしない! 誓う! 絶対に…!」
ヘンは荒い呼吸のまま、二人を見下ろす。
一人は血を流し、意識を失っている。
もう一人は命乞いをしている。
彼は何も言わなかった。
銃を収め、鉄棒をしっかりと握り直すと、暗い廊下へと歩みを進めた。
一歩ごとに、人間らしさが削られていくのを感じながら。
[生存者はあと3,565人。]
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