第12話
第12章 – ダクトの騒音
壊された扉の向こうで、不良たちが部屋の隅々まで荒らしていた。
椅子をひっくり返し、ガラス片を蹴飛ばし、壊れたモニターを引きずり回す。
「ここには誰もいねぇ!」苛立った声が響く。
別の男が天井を見上げ、目を細めた。
「ダクトの中にいるんじゃねぇか…」
警備員の服を着た少女が最初に動いた。
飛び上がり、通気口の端を掴んで蓋をこじ開ける。
金属が軋む音。
彼女は頭を突っ込み、薄暗い中で目を光らせた。
その瞬間――彼女はヘンと目が合った。
わずかなランタンの光に照らされ、彼はすぐ目の前にいた。
そして手にはグロック。銃口はすでに彼女の額に向けられていた。
銃声が金属の中で鈍く響く。
弾丸は少女の頭蓋を貫き、力を失った身体は部屋の中へと落ちていった。
血が隙間から滴り落ち、仲間の肩を赤く染める。
「やられた! あいつに殺された!」
「ぶっ殺してやる!」怒号とともに別の男が必死にダクトへよじ登ろうとする。
だが中を覗き込んだとき、そこにはもう誰もいなかった。
ただ闇が広がるのみ。
ダクトの中で、ヘンは必死に這い進んでいた。
ランタンが小刻みに揺れ、荒い息が金属の中で反響する。
メアリーの声が甘く、皮肉めいて脳裏に響いた。
「本当にあの子に弾を使う必要があったの?」
ヘンは即答した。震える声ながらも迷いはなかった。
「必要だった。命を遊びのように奪う奴は…自分の命を失う覚悟も持つべきだ。」
短い沈黙。
やがて、吸血鬼は新しい玩具を見つけたかのようにくすりと笑う。
「興味深い…でもね、ヘン。その理屈なら、あなた自身も死ぬ覚悟が必要なんじゃない?」
ヘンは唇を噛み、答えなかった。
心臓が早鐘のように鳴っていたが、挑発には一言も返さない。
メアリーはわざとらしくため息をつく。
「ふふ…思った以上に面白いわ。」
――その時、不運が起きた。
這い進む途中、ヘンの肘が緩んだ金属棒にぶつかった。
ガンッ!
音がダクトの中で太鼓のように響き渡る。
「中に誰かいるぞ!」下から叫び声。
直後、金属を叩き割る轟音。
鉄片がダクトの側面を突き破り、ヘンの体をかすめた。
本能的に後退し、心臓がさらに跳ね上がる。
再び鉄の杭が突き刺さり、火花が散る。
ダクト全体が震え、崩れ落ちそうになる。
ヘンは悟った。
――今すぐ動かなければ、罠にかかった獣のように串刺しにされる。
【生存者残り3,567人】
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