第7話

【残り生存者 3,571 人】


Hen の心臓は激しく鼓動し、死体で覆われた部屋の不気味な静寂に響き渡っているかのようだった。

彼は理解していた――あの少女は人間の姿をした怪物だ。

ここに留まれば死ぬ。 ためらっても死ぬ。


その時、不意に耳元へ滑り込むような柔らかな声が囁いた。


「次の行動はどうするの、Hen?」――Mary の声。

「私を失望させないでね……」


Hen はごくりと唾を飲み込み、猛スピードで回る思考を必死に抑え込んだ。

「落ち着け……冷静になれ。考えろ。」


彼は弾数を思い出した。銃を受け取った時、Glock には 16 発あった。

すでに 1 発撃っている。残りは 15 発。

十五のチャンス。十五の選択が、生か死を分ける。


砕けた扉がきしみ、あの少女の殺人鬼が再び姿を現した。

怒りに燃える瞳、手にしたナイフはまだ生々しい血に濡れて光っていた。


同時に、もう一方の扉が開いた。

Hen が廊下で見た二人の少年が姿を現した。

血の匂いに一瞬ためらったが、すぐに歩みを進め、さらに状況を逼迫させた。


Hen は必死に銃を構え、時間を稼ごうとした。

「止まれ! 近づいたら撃つぞ!」――自分でも驚くほど声は強く響いた。


だが、少女は怯まなかった。

野獣のような叫び声を上げ、Hen に一直線に突進してきた。


Hen は反射的に反応した。

椅子を蹴り飛ばし、全力で彼女にぶつける。

鈍い音と共に少女は倒れたが、ナイフはまだ握り締めていた。


「今だ! 倒れてるうちに!」

一人の少年が叫び、少女に飛びかかって首を絞めようとした。


だが、もう一人は Hen から目を逸らさなかった。

両手をゆっくり上げ、あたかも無害を装いながら彼に近づいてくる。

その瞳には冷たい計算が潜んでいた。


「無駄なことはやめようぜ。」

低く、どこか友好的に響く声。

「なぁ……勝ち残れるのは七人だろ? 無意味に殺し合う必要なんてない。」


Hen は銃口を向けたまま、全身の筋肉を張り詰めさせた。


少年はさらに一歩踏み出し、蛇のように囁いた。

「力を合わせれば、俺たち三人であいつを仕留められる。

その後は一緒に進めばいい。どうだ? お前と、俺と、相棒とで。まずは脅威を排除するんだ。」


Hen は視線を床に落とした。

少女は、首を絞められながらも凄まじい力で暴れ続けていた。

引っ掻き、噛みつき、ナイフで刺し殺そうと必死にもがいている。


彼女は危険なだけではない。――執念深い怪物だった。


Mary の笑い声が、再び心の奥に忍び込んできた。

「さぁ、Hen。撃つの? 信じるの? それとも逃げるの?」


銃は手の中で重さを増していく。

選択肢はどんどん狭まっていった。


【残り生存者 3,570 人】

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