3.12 合縁奇縁因縁
「……使えんな」
池原の確保に失敗し、這々の体で逃げ出す神奇の下っ端を見下ろしながら市木が毒づいた。
「まったく。申し付けられた仕事すらできんとは
向かいの安宿の螺旋階段の手すりにもたれながら、ヴィェルディゴニが嘆息する。
しかし彼らの声は、外れた窓枠から地上を見る二人組の顔を見て凍りついた。
市木たちはおもわず建物の影に身を隠していた。
身を固くする市木らの下で、池原を連れた二人組がタクシーに乗り込む。
親しげに会話する二人組は、阿吽の呼吸の相棒のようだった。
穴が開くほど見つめていた市木とヴィェルディゴニは我知らず呟いていた。
「本郷……なんでお前がここに」
「……小癪な魔法使いめ、よもやここまで追ってくるとは!」
互いの呟きに、互いが驚く。
「知り合いか?」
「ええ。あの小さい方は、殺したいほどに覚えております。そちらも旧知で?」
「ああ。あいつは、本郷は……いい警官だ」
その声には人間らしい温かみがあった。
「ほう。そうですか」
ヴィェルディゴニの口が歪んだ。
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