46."アイオン・ヴァレフォール"
ヴァレフォール家、今より約三百年前。まだ魔法が自由に使えた時代に名家と呼ばれた一族。優れた魔道師を多く輩出しその名を世界に
そんな家系に一人の男児が誕生する。彼は"永遠"という意味を込められた名を与えられた。皮肉なことにその名の通り彼の名は永遠に語り継がれるーー悪名として…。
"アイオン・ヴァレフォール"。魔法の天才そして…魔王と呼ばれた男。
ヴァレフォール家が栄えたのは世界にまだ魔法が満ちていた時代。人々は魔法と共に暮らし魔法の実力こそ地位に繋がった。各都市には魔法学校が設けられ魔法は一つの学問として扱われた。優れた魔道師は優遇され富を得た。
西の海底都市。その都市の小高い丘の上にヴァレフォール家の豪邸が街を見下ろすように建っている。
ヴァレフォール家は魔力量に恵まれ、優れた魔道師を輩出する血筋だった。世界最高の魔法学校でも、一族の名は常に首席として刻まれている。
そんなヴァレフォール家の中で史上最強の天才と云われたのが"アイオン"である。この世界はイメージが魔法となる。魔道師の質は魔力量だけに依存しない。もっと重要なのは優れたイメージ力。アイオンは空想力が他より優れていた。
特に異質なのが瞬発力。炎をイメージすれば一瞬で燃焼し、冷気をイメージすれば瞬間的に凍りつかせる。イメージの早さと切り替えが異常。その早さは考えるより先に世界が変わるようだった。
五歳の時にはすでに神童として名を知られる存在となった。幼いながらも大人と張り合える魔法力。しかし、誰もこの少年が将来、魔王になるとは思わない。
アイオンはヴァレフォール家に生まれたことを誇りに思い、才能を自覚している。大人たちは彼を賞賛し褒め称えた。だが、本人は自分は神に近い存在と自覚し魔法の才能も「当たり前」と思っている。
やや傲慢な性格だが世界に干渉しようなどとは思わない。少年自身そう思っていた。
十歳の時である。名家でヴァレフォール家は幾人もの使用人を抱えている。その年一人の使用人が産休に入るため代理の者が雇われた。
「アサガオと申します。よろしく。」
その女性は短い挨拶をした。年は二十代前半。十歳のアイオンにとってはずいぶんお姉さんに見えた。水色の髪のショートカット。中性的に見える整った顔。スンとした表情からは感情が読めない。
アイオンはアサガオに苦手意識をもった。他の使用人は天才である少年に必要以上に気を使っていた。イメージが魔法の原動力の世界において心の状態は魔法に反映する。その為アイオンの機嫌を損ねないことも使用人の仕事である。腫れ物をさわるように丁寧に接してきた。
しかし、アサガオは忖度しない。業務は完璧にこなす。アイオンへの態度は冷徹と思うほど淡々。少年はこの女性は感情がないのかと思っていた。こっそり心の中で"鉄仮面"とあだ名をつけた。
アイオンは才能に対しては傲慢であったが態度は紳士であった。内面では毒づくこともあるが名家の誇りにかけて表面には出さない。
礼儀正しく褒められても反応せず謙虚。周りはそう評価した。
しかし、内心アイオンは褒められるのは当然と思って反応しない。心の中では他者を格付けし自分を格付けの頂点に置く。
そんな彼の内面を見抜くように冷めた目で見てくるアサガオの物言わぬ顔をアイオンは不気味に思っていた。
異世界転移【海の中で呼吸ができる世界】~古井戸の先は想像が魔法になる場所~ オオツキヒロミ @UmiNOnakade
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