第3話閃光の拳
「仁さん、俺は自分の欲がなんなのか分からない。どうすれば力を引き出せるんだ?」
仁は、さん呼びされたことに対して驚いたが、すぐに俺の問いに答えた。
「僕は、長年ディザイアを研究してきているけど、力を引き出せないディザイアなんて見たことないよ。力の使えないディザイアはただの人間と変わらないからね。」
まさか、俺が力を使えないことに少し驚いているようだ。俺も、力が使えなければディザイア倒せない。倒せなければ人間に戻る道は閉ざされてしまう。早くなんとかしなければいけない。
「ディザイアがどのあたりにいるのか分かるのか?」
俺は、ディザイアと出くわせば能力が引き出せると思い、仁に問う。
「ディザイアは基本、夜に活動するんだ。昼間は人も多く、なんせアンゲルスの人間に殺される。最近は、この近くだとここから3キロほど離れた商店街の方だね。」
アンゲルスという組織は人間なのにディザイアを殺せるのか?だが、今はそれよりも力を引き出す事が先か。
「じゃあ。今夜はそこへ向かってみる。もし近くに、ディザイアが出たら教えてくれ。」
仁は誇らしそうに頷いた。彼の研究室には、ディザイアに関する資料や機械が置かれており、探知する装置もあるそうだ。
午後23時半。
「まだ出てこないな…」
俺は、商店街の中心でディザイアが現れるのを待つことにした。あの時と比べ、今の俺の身体は、人間とはかけ離れた身体能力を持つ。
ある程度のディザイアなら対応できると信じたいが、、、
「仁さん…本当にここにディザイアがいたのか?」
時計型の連絡装置で彼に問いかける。
「あぁ、今夜ここに現れるはずだ。最近は毎日のようにここに現れる。」
もう少し待ってみようとしたが、俺は周囲の異変に気づく。
「ズリズリ…」
何かをひきづる音?気配を感じる。
すると、後ろから泥のような液体がものすごい勢いで飛んでくる。俺は、ギリギリのところで避け、そこにいる化け物と距離を取る。
泥のような液体は、地面のアスファルトを瞬時に溶かす。
「人間の形をしてる怪物か…あの液体にあたれば、致命傷どころじゃないな。」
化け物は人の形をしているものの、本来の人の姿とは、かけ離れている。
「臭いな…」
あの化け物から放たれる匂いは、人間生活をしていれば嗅ぐことのないような匂いだ。
「さて、どう戦うかだな。」
俺は、ナイフを一本。これだけだ。
俺は全速力であの化け物に接近する。泥のような液体を飛ばしてくるが、俺は華麗に避け、奴の腕を切り落とした。
「やっぱ倒せないか。ナイフじゃ、仕留めきれない。」
切り落としたはずの腕は瞬時に再生し、奴は俺の身体に強烈なパンチを与える。
「痛えっ……!」
殴られたところは、泥のようなものが皮膚を溶かし、強烈な痛みと身体の一部が麻痺している。
能力の使えない俺じゃ、身体能力が上がってもディザイアは倒せないのか?奴には近づけない。おそらくどこを切り落としても、あいつは再生する。近づけば、最悪泥の液体を浴びて終了だ。
「俺があの時殺した、あの女のように斬撃をとばせれば…」
そう考えた時だった。なぜかは分からない。
俺の周囲から、黒い霧のような物が出ており、俺はその斬撃を奴にとばしていた。
「斬撃が使えるようになった?」
あの怪物は、斬撃で切り刻まれ、少しの間だったが、核のような物が頭の中に入っていた。
「あれを壊せば死ぬのか。」
俺はまた、全速力で奴に近づく。怪物は、泥を広範囲に吐き出す。その瞬間を見て、俺は空高く飛んだ。
それと同時に、怪物に数十発の黒い斬撃を叩き込む。
「勝敗あったな。」
俺は着地してすぐに、奴の身体の一部を人からもらったカプセルに少量入れる。
「こんな奴の身体調べて何かわかるのか?」
不安に思いながら帰ろうとした途端、俺は背後から殺しきれていなかったディザイアに不意打ちを喰らった。
まずい…
背中から、強烈な激痛が走る。まともに喰らってしまった。身体は溶けていないようだが、麻痺が身体中に回る。
動けない…
どうにかしなければと色々考えている時、周囲が眩い光で包まれた。
「ミクロス•光電拳」
誰かの声と共に、俺の前にいたディザイアは瞬時に弾け飛び、跡形もなくなった。
俺は背筋が凍った。こいつは俺よりも、圧倒的に強い。
容姿は、女性で俺と同じくらいの年齢だろう。背は低く、短い髪型に、茶髪だ。だが、見た目とは裏腹に、肉食動物の頂点のような圧力を感じる。
「お前いったい誰なんだ?」
俺は、恐る恐る聞く。すると彼女は、人がいる事に今気付いたのか、驚きながらも俺の問いに応える。
「今あったことは忘れなさい。私はあなたの敵ではありませんので、夜道に気をつけながら、早く家に帰ること。」
俺の質問には答えない気か…こいつは、ディザイアのことを知っている。何か情報が引き出せるかもしれない。
「俺は今のディザイアと戦っていたんだが…」
俺はこの瞬間、俺の元から離れていたはずの彼女が、俺の胸に拳を突きつけていた。
「お前、ディザイアの事をなぜ知っている?」
速い…!俺は、彼女の速度に追いつけない。ここで下手に言葉を間違えれば即死だ。
おそらく彼女は、ディザイアじゃない。ディザイアは人間しか殺さないはずだ。あの怪物を殺したということは、アンゲルス組織の人間か。
「アンゲルス組織の部下です…たまたま
ここにいたディザイアと出くわして、戦っていました…」
彼女は数秒後、拳を引き下げ申し訳なかったと謝罪した。
助かった。俺が安堵していると、彼女は俺に一言注意をした。
「昨日の夜中、ここら周辺区域で強力なディザイアが出現したらしい。ここでの活動は控えなさい。」
彼女は、そう言い残しどこかへ飛んで言った。
強力なディザイア?
仁はそんなこと一言も言ってなかったんだけどな。先にそういうことは言ってくれよ。
「仁さん。ディザイアの身体の一部を手に入れたから帰るよ。」
仁はほっとしたかのように、
「良かった…じゃあ、すぐに戻ってきてくれ!今そっちの方に、ものすごいエネルギーを持つ
人間がいる!」
ここら辺は、化け物ばっかなのか?
身体中の麻痺が落ち着いてきたし、すぐに戻るか。
「わかった。今からすぐに向かう。」
「どうしたんだ!その身体の皮膚は!えぐれてるよ。早く治療しなければ!」
「あぁ、頼む。」
簡単な処置をしてもらっている間に、俺は仁に聞いた。
「アンゲルス組織の人間は、ディザイアを瞬殺するほど強いのか。」
仁は少し考え、
「もちろんディザイアの個体差によるけど、基本は、アンゲルスの戦闘員3人につき、ディザイア一体を倒すのが組織のやり方だよ。」
あの異常に強い女性は、俺が倒し損ねたとはいえ一撃でディザイアを倒した。もしかして、あいつは組織の中でトップなのかもしれないな。もう少し情報を聞き出すべきだった。
「アンゲルス組織には、ものすごく強い奴はいるのか?」
俺は、仁に尋ねる。
「アンゲルス組織には、倒したディザイアのDNAを体内に埋め込まれている人間が複数人いるんだ。もちろん、彼らは人間だよ。それで、彼らは一人でもディザイアと戦える。その中でも5人怪物のように強い奴がいる。名前は分からないんだけどね。」
なるほど、つまり俺が会ったあの女はディザイアのDNAを埋め込まれた人間ということか。
「仁さん。俺は、ディザイアとの戦いで能力を使えるようになった。いまだに俺の欲望が分からないから、本来の力は使えないが。」
仁さんは、少し考え、
「もしかすると能力がわかったかもしれない!千里くんの言うようには、最初の女性のディザイアの時は、黒い布のような者で、今回は黒い斬撃だった。そして、最初の女性のディザイアは斬撃を使っていたと言うことは、倒した相手の能力が使えるということだ!つまり本来の力なくとも戦える!」
仁さんは、なぜか嬉しそうにしている。ただ、今回のディザイアは、あの女性に倒された。
あの泥みたいな能力欲しかったな…
それと、一つ確認しなければいけない事があるな。
俺は彼に黒い斬撃を向ける。彼は多くのことを知りすぎている。秘密裏に動いているはずのアンゲルス組織の情報。ディザイアのこと。
場合によっては、ここで…
「仁さん。あんたの目的は一体なんなんだ?
ディザイアと人間どっちの味方なんだ?」
この世界は欲望が支配する @Huyuo
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