第2話 始まり

次の日、俺は昨夜殺されたであろう裏路地に昼間戻ってきた。


「やっぱ手掛かりはないか…」

何か手掛かりがあるか来たものの、何もない。

俺の血の跡すら残っていない。

俺の身体に何が起きたか分かると思ったが、手掛かりを掴めず、深くため息を吐く。


「誰か、俺を見ている?」

誰かの気配を感じる。殺気は感じないが、警戒しているような視線だ。

どこにいるか気配を探っていると、

「痛てっっ!」

下の方から誰かが落ちたような音がする。

「まさか、このマンホールの下から見ていたのか?」

マンホールに人がいるはずもないと思いつつ、開けてみようと試みると、マンホールの蓋は簡単に開いた。

「まさか、本当にここに人がいるのか?」

マンホールの壁にはハシゴが掛かっており、深さは10メートルほどだ。

「降りてみるか…」

警戒しつつ、手掛かりが見つかるかと思い気持ちが高揚する。


下に降りると、暗いものの長い通路がある。

数十メートル先には、微かな光が見える。

誰かいるかもしれないと、俺は身構えながら進んでいく。光の先には、扉がありそこを開けた瞬間、

「殺さないでくれえっ!」


そこにいたのは、ふっくらした体型に、ボサボサの髪型をした中年男性だった。


「おい、お前はいったいここで何をしているんだ?」

「頼む!もうディザイアについては一切関わらないから!」

なぜこいつは俺を見てこんなに怯えているんだ?それに、コイツはディザイアについて何か知っている。

「お前を殺すつもりはない。それより、お前に聞きたいことがある。」


中年の男は、殺されないと理解した瞬間安堵したとともに、何かと耳を傾ける。

俺の今一番知りたいことを聞く。

「俺は、人間じゃないのか?」

すると、中年の男は不思議そうに俺を見つめながら、

「君は生まれた時からディザイアじゃないのか?」

俺は元々人間という主旨を伝えると、彼は驚いた顔をして、話し始めた。


「君はもう人間じゃない。ディザイアは、この世にいてはいけない存在だ。」


俺は唖然とした。今まで人として頑張って生きてきて、殺されかけて、今はこの世に生きていちゃいけない存在だと?

俺は頭が真っ白になった。

すると、彼は急に話し始める。

「人間からディザイアになるという事例は今までなかったんだ。つまり、裏を返せばディザイアから人間に直せるかも知れない。」


俺は彼に食いつくようにどうすれば良いか聞いた。すると彼は驚きながらも、すぐに答えた。

「今はまだ分からない。ただ、ディザイアのデータを集めれば分かるかもしれない。」

俺は少し残念に思ったが、今は彼を頼るしかない。

「お前に、協力させて欲しい。」

俺は彼に食いつくように言った。彼はまたもや驚いていたが、嬉しそうに承認してくれた。



彼から、教えてもらったことがいくつかある。

まず一つ目は、地球上には、様々なディザイアという怪物があるということだ。ディザイアには人型のものもいれば、肉食動物のようなものもいる。

二つ目は、ディザイアは生まれた時から怪物であるということだ。本来人間からディザイアになることはなく、地球上の人間の欲望が積もりに積もってできたものが、とある場所で生み出されるらしい。それこそがディザイアなのだそうだ。とある場所というのはまだ分かっていないらしい。

そして3つ目は、本来この世に存在してはいけないディザイアを狩る、政府の隠し組織「アンゲルス」によって毎年多くのディザイアが、狩られているということだ。

中には人間を襲う気のないディザイアもいるが、アンゲルスの組織は躊躇なく殺すらしい。


ディザイアが人間を襲う理由は欲望に関連しているようで、強さも個体差があるらしい。


そして中年の男、名前は柏野仁(カシノジン)というそうだ。

俺は、俺は話を理解した上で彼に聞く。

「俺はこれから、どのディザイアを狩ればいいんだ?」

仁は少し考えながらも、即座に答えを出す。

「人間を狩るディザイアを殺して、身体の一部をとる。人間を襲う気のないディザイアは殺さない。これでどうかな?」

俺はそれでいいと頷いた。


だが、一つ困ったことがある。俺は自分がなんの欲を持ってディザイアになったのか分からないということだ。俺が殺したディザイアとの

戦いは正直記憶が曖昧で覚えていない。

それに、致命的なことにどう戦えばいいかも分からない。


俺は仁に、どうすればディザイアとしての能力を引き出せるか聞いてみた。












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