栞(しおり
ある日の店長と店員の会話
カランカラーン
「ありがとうございましたー。」
「はい、今日もお疲れ様。」
「店長・・」
「何?」
「仕事だから言ってますが、今みたいに買った方はともかく、買わなくても『ありがとうございました』は必要ですか?下手したら万引き犯にまでお礼言ってる訳ですし。」
「万引き犯も幸運を対価に頂いてる以上は『お客様』。無下には出来ないわ。それに、言葉にすれば出入りは全て見てますよってプレッシャーなるでしょ。抑止力になるかは微妙、だけど。」
「そう言われたらそうですが・・そういえば前々から気になってた事を聞いて良いです?」
「何?」
「以前、店長は誰が何の本を持って行ったか分かるって言ってましたよね。」
「分かるわよ。」
「その後、ここで運を失った犯人がどうなるか分かるんですか?」
「そこまでは分からないわ。ハッキリ分かるのは本と犯人だけ。店外に出たらなにが起こるかまでは予測不能よ・・ただ、大変な事になるだろうなってのが分かる程度よ。」
「店長が罪を決めてる訳じゃないんですか?」
「そこまでは無理。仮にそんな事が出来たら・・私の感情が入って公平さが失われるわ。因果応報を決めてるのは私も知らない『誰か』。私はあくまでもお店の管理と、万引き犯や迷惑客から奪った幸運をお店の維持費に充ててるだけよ。」
「店長がこの店の経営者になって長いんですか?」
「・・・・」
「ご!!ごめんなさい、今のは聞かなかった事に・・目が語ってますね・・」
「気になるのは分かるわ、けど・・それは内緒。貴女がこの店を継ぐ日がくれば、全て教えてあげるわ。」
「へ!?」
「結構大変よ、誰が何を持ち出したか分かるって・・見た感じ悪人面ならざまぁみろだけど、小さな子とか・・高齢者とか。見た目によらずそんな事するんだって知ったら、人間不信一直線よ。決して楽じゃないわ・・」
「じゃ・・それこそお店畳めば・・」
「したくても出来ないの。このお店を維持管理するのが・・私がこの店で犯した罪滅ぼしだから。」
「!!!一体何が・・」
「私の犯した罪に比べたら、万引きなんて軽いものよ。何があったかは想像にお任せするけど、私はここを辞めたくても辞めれないの。誰が引き継いでくれるまで、ね。」
「それで私を社員に・・?」
「それが半分、かな。本気で引き継ぐ気なら変わってあげるけど・・おすすめはしないわ。今は繋ぎにして、どっかいい働き先があれば転職した方がいいわよ。」
「・・この話を知った以上、簡単に『はい、そうですか』は無理ですね・・そして、私がここを引き継いだとして、その後は店長はどうするんですか?確かに宝くじの賞金あれば悠々自適な生活かもですが。」
「引き続きが終われば・・帰るだけよ。」
「何処にです?お店に住んでるわけじゃないのは知ってますが・・」
「さぁね・・さ!余り長話してると遅くなるわ、売上の回収とお釣りの調整は任せたわよ。私は在庫確認してくるから。」
「はい・・」
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