第38話 ダンジョン
☆ ★ ☆
「ついに……ついにやってやったっすね!」
帝都から馬車で2時間の場所にあるダンジョン。
初級ダンジョンに分類されてるここは、通称『小鬼の洞窟』と呼ばれてる。
15階層と初級ダンジョンにしてはやや深いけど、出てくるのはほぼゴブリンのみ。想像してたより地味に厄介な魔物だったとはいえ、私達なら問題なしってもんですよ!
あ、ちなみにダンジョンの深さは平均で初級10階層前後、中級30階層前後、上級50階層前後って習いました。
「おうよ!まぁこんなとこで苦戦してらんねぇしな!」
「だな。あの凪を見る限り、下手をすれば上級ダンジョンすら攻略出来そうだったからな」
私と組んで攻略してるのは当然蔵田先輩と高崎先輩。
前衛に蔵田先輩を置き、後衛が私と高崎先輩という蔵田先輩ハードモードな構成っす。
けど高崎先輩の魔法の連打がやばすぎなんで、少なくとも初級ダンジョンでは蔵田先輩が抜かれたからって後衛がピンチ、なんて事には一度もならなかった。
他のパーティを組んでる先輩のクラスメイト達は結構連携で苦戦してるらしいんすけどね。
それなのにこの完成度はすごい……てゆーか、高崎先輩のフォローが上手すぎる。
実質蔵田先輩は前衛で暴れ回ってるだけなんですけど、その隙間を縫うように的確に魔法を撃ちまくるから、結果として高度な連携の形になってる。
パーティリーダーも兼任してる高崎先輩は頼れる司令塔っす。
地球にいた時、凪先輩とこのお二人の三人のまとめ役は高崎先輩だったのかもなぁと思ったり。
「ボスもしょぼかったしよ、さっさと中級に行こうぜ」
じゃあ蔵田先輩はといえば、近接戦闘で大活躍です。
ただひたすら走って距離を詰めて、退く事なんて知らんとばかりの猛攻、敵の攻撃もその場で回避か受けるだけという、媚びない引かない顧みない世紀末なインファイトオンリー。
言っちゃなんすけど、これでもかってくらい脳筋戦法っすね。
なのに、そのくせすっごく強いんすよねぇ。
『剣鬼』は速度に関する身体強化が苦手なのかスピードはイマイチですけど、威力強化に適正があるようでパワーがえぐい。
そのパワーを活かす!と蔵田先輩は途中から二刀流(刀ではなく剣ですけど)になり、有り余る腕力のおかげで片手になっても威力十分の攻撃を、手数倍にして攻め倒すマジモンの鬼になってます。
「ですねー!練習でボスのオークも全員一対一のローテしても勝てましたし、もう初級ダンジョンに用はないっす!」
じゃあ私はって?ふっふっふ、光魔法の操作なら高崎先輩にも負けませんよ!
私が主に使う直線に放つレーザーこと『レイ』も多少は曲げられるようになり、光の球を放つ『ライトボール』も複数かつ自由自在に動かす事が出来るようになったっす!
他にもいくつか魔法を習得しましたし、熟練度も上々。いや〜光魔法超便利っす!
「じゃあ今日のところは帰るかァ。あ〜帰ったらまた花畑劇場見ねぇといけねぇのか」
蔵田先輩がげんなりしてる花畑劇場とは、言うまでもなく花畑王子こと天城先輩のハーレム達が起こすアレコレの事。
「でも最近は聖女サマ来ないっすよね?」
「……言われてみればそうか?」
「気付いてなかったのか?もう1週間以上見てないぞ。以前は2日に一回は来てたがな」
そう、以前は『勇者』狙いだと思われる聖女アリアがハーレム三人衆を蹴散らす勢いでグイグイ来てたのに、最近パタリと全然来なくなった。
ま、どうでもいいんすけどね。なんなら多少劇場も静かになるしむしろ嬉しい話ですらある。
「そういやァクラスの連中がたまたま見かけたらしいんだけどよ、聖女サマお疲れでやつれ気味だったとか言ってた気ぃするなァ」
「そうか。まぁ普通に考えて皇子妃予定で聖女となれば、皇族となる為の教育や仕事、加えて聖女の仕事もあるはずだ。男に粉をかける余裕なぞ最初からあるはずがない」
「あ〜そういう事か。くはッ、そりゃご苦労なこって。でもなんで急に忙しくなってんだろうな?」
「話すようになった文官から聞いたんだが、元々婚約者だったディアナという人が優秀だったらしくてな。その抜けた穴の皺寄せが段々と聖女に乗っかっていってるらしい」
えぇ〜、いつの間に文官と仲良く……?
この前は魔法師団のお姉さんと仲良く話してましたよね?どうせ文官も女でしょう。
実際この人普通にイケメンだし、帝城で割とモテてるんすよね。前に蔵田先輩がそう言って悔しがってたっけ。
っと、それともかく。
いわく、聖女サマが最初余裕こいて天城先輩に擦り寄っていられたのは、聖女の仕事しかしていなかったからだそうっす。
じゃあその間のディアナさんの仕事はといえば、「学生だった
しかし、そんな雑なフォローで埋まるような穴ではなく。
むしろ決裁権もそれなりにあったディアナさんの仕事は、新人では触る事すら出来ないものも多くて、ほとんど無意味だったらしい。
元学生だったとは思えない仕事の重さと量……ディアナさんやべえっすね。
そこで皺寄せが最初にいったのは、当然レオンハルト皇子。
そもそも婚約者の仕事の多くは皇子の仕事の補佐らしいので、いわば大半は元々レオンハルト皇子本人の仕事でもある。
だから当然、レオンハルト皇子に仕事は返ってきた。
それでしばらくは見栄を張って頑張ってたらしい。
けど一向に捌ききれず、むしろ溜まるばかり。
そしてついに痺れを切らした皇帝が登場して、レオンハルト皇子と婚約者アリアをそれはもう激しく叱りつけたそうだ。
それで聖女サマは泣く泣く仕事に向かうが、ここで酷い知識不足が発覚。
もはや手伝うと余計に業務が滞るレベルなので、簡単な雑用レベルの仕事をしながら教育中との事。
聖女としての仕事は元々魔法がメインだし、そもそも情勢が落ち着いているのでどうにかなってるそうだけど、それ以外の時間はがっつり教育を詰め込まれてるらしい。
「なるほどっすね〜。てゆーか、あいっかわらず情報網すごいっすねぇ」
何気に対女性のコミュ力高いんすよね、高崎先輩って。
「あっ、確かに!まさかまた女ひっかけたのか文也ァ!てめぇいい加減に一人くらい紹介してくれよ!」
何の気なしの感想に別角度から食いついた蔵田先輩に、高崎先輩はメガネをくいっとして溜息をひとつ。
「あのな、彼女達とはそういうんじゃない。お互いの情報を共有してるだけだ」
「いやいや……んなワケねーだろ。なぁ凛ちゃん、あいつアレ本気で言ってると思うか?」
「んー、あくまで私の勘ですけど、ガチで言ってるっすね」
「くっそが、鈍感系は凪だけで十分だってのによォ」
へっ、と唾でも吐きそうな蔵田先輩だけど……アナタも似たようなもんすよねぇ。
蔵田先輩も女性騎士から密かな人気があるらしく、何回か私に女性騎士が情報収集に話しかけてきましたもん。
まぁ本人には言わないっすけどね。何故って?その方が面白そうだからっす。
鈍感三人衆(凪先輩含む)。
この二人を観察するのが最近の楽しみなんで。
うん、決して私と凪先輩が進んでないのに、先行かれたら腹立つとかではなくて。ねっ?
「そんな事よりー、天城ハーレムはどうなったとか聞いてないんすか?」
「ん?おー、最近は秋宮がリードしてるって噂だぜ」
コミュ力が対男性方向に突き抜けてる蔵田先輩は、クラスメイトさん達からの情報網が広い。
おかげで天城ハーレムを避けまくってる状態なのに情報はかなり入ってくる。
「あぁ、あのクール美人さんっすよね。意外っちゃ意外っすね、てっきりギャルさんがゴリ押してリードかと思ってたのに」
「だよなァ。なぁんか男子連中的には最近春山と夏沢の勢いが弱いとか言ってたぜ?」
ハーレム連中にも何かしら変化があるらしい。
理由までは分からないし、それを探る程の興味もないけど。
「ふーん。まぁ揉めてる間に私達が強くなればいいですし、勝手にどうぞって話っすけどねー」
「がははは!確かにな!」
「正論だ。天城以外にはだいぶ引き離してきたしな」
そんな私、ただいまレベル25!
初級ダンジョンはパーティならレベル15前後で攻略できるそうなので、もはや過剰戦力レベル。
まぁ私ゲームではレベル溜めて無双する派なんで。ましてや命懸けですから余裕を持たせるのは当然っす。
ちなみに蔵田先輩はレベル27で、高崎先輩はレベル25。最前線で戦ってる蔵田先輩がいくらかレベルが上がりやすいみたい。
そして天城ハーレムは天城先輩がレベル29。他三人衆は大体レベル20前後。
これは天城先輩が他の人の分もしゃしゃり出て戦ってるかららしく、他三人衆も守られて嬉しいとか言って受け入れてるからのレベル差だとか。
ちなみに私達異世界人はレベルが上がりやすいみたいっす。
普通はレベルが上がる毎に必要な経験値的なのが倍々で増加してくらしいんですけど、私達はその増加が緩やかだからっぽい。
これも異世界特典なんすかねぇ?
詳しくは分かんないっすけど、それくらいしてくれないと戦闘とは無縁の私達じゃ生きてけないっすし、ありがたくもらっとくとします。
ちなみに私のステータスはこれです。
【ステータス】
名前 冬野凛
レベル 25
戦闘力数値 3681
残魔力 2898/5920
スキル 聖女
だいぶ高くなった!なんと中堅騎士に迫る勢いっす!
魔力量の伸びなんか特にすごくて、レベルで負ける天城先輩よりも全然多い。まぁ高崎先輩とはほぼ変わりませんけど。
多分『聖女』『賢者』が魔法特化だから、その分魔力も増えやすいんでしょうね。『勇者』は魔法剣士型らしいんで、魔力の増加は純魔法使いより少ないんだと思う。
「そっすね!じゃあ次の中級ダンジョンもサクッとクリアしちゃいましょー!」
どんどんレベル上げて鍛えてやる!
待ってろよぉ凪先輩、次会った時は絶対逃がさないっすからね!
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