第39話
★ ☆ ☆
「うわぁーっ!すごいすごぉーいっ!」
マグライラに来て約1ヶ月が経ち、ついに全ての装備が手元へ届いた。
そして今日、初めてパーティとしてダンジョン攻略へ挑む事になった。
朝早い時間もあって周囲に人がいない事は確認しており、フードを外して景色を見回すルミア。
輝くような金髪を背中あたりまで伸ばしているルミアは、普段ならそのまま下ろしてる髪をポニーテールにしている。
緩やかなウェーブのある髪が、キョロキョロする度にひらひらと尻尾のように揺れていた。
装備はガムラさんと美人店員さん――ライラさんが幼女のルミアに気を遣ってくれたらしく、今までみたいに黒一色ではなくなった。
わざわざ着色してくれたらしく、コートは白地に金の刺繍が裾や袖のところに入っている。
可愛らしく、どこか聖女感がある装備に仕上がった。
あと各自渡された100万ディアで購入したインナー装備として、ワンピース型のレッサーアラクネの糸で編んだというインナーを着用している。頑丈さだけでなく、伸縮性や通気性に優れてるとか。
そしてスカートと膝上まであるニーソックス、しっかりとした頑丈な靴。これらも魔物製らしく、それなりに高価で頑丈らしい。
ちなみにスカートや絶対領域が生まれるこの格好、ルミアは当初反対していた。本人はもっとかっこいい寄りの装備にしたかったらしい。
しかしそこを口八丁で丸め込むのが我らがリーダーディアナでして。
あれやこれやと言葉を重ねて見事可愛い装備を選ばせたディアナは、「ルミアは可愛くあるべきよ」と満足そうに笑ってた。
そんな可愛い装備のルミアの左腰には剣、右腰には盾がぶら下がっている。
これが彼女の装備だ。
今となっては余談だけど、ガムラさんの工房でもこのチョイスは揉めたんだよね。
なんせ『聖護術師』のルミアに盾は不要だし。
更に言うなら彼女の体格なら近接戦闘のショートソードより、弓とかの方が余程実戦には向いてる。近接戦闘をさせるのは危険だしなぁ。
それでもルミアが一切譲らなかったのは、物語で見た主人公――勇者と同じ装備がしたかったからだそうだ。
そもそも彼女が冒険者に憧れるようになったきっかけである話でもあるし、これにはディアナも渋々頷くしかなかったという経緯がある。
「わたくしもマグライラのダンジョンは初めてだわ。帝都近くにある『小鬼の洞窟』は薄暗くて狭かったけど、ここは綺麗なのね」
まぁ一面草原でちょいちょい花も咲いてる長閑な風景だしね。たまに魔物いるけど。
ディアナの装備は一言でいうならかっこいい、という印象だ。
ピッタリと体のラインが分かるインナー代わりの洒落たシャツは首元まで覆われており、色合いも赤紫という大人びたもの。
下半身はスカートではなくこれまた脚のラインが分かるタイトパンツといった装備で、色は黒。
それを覆うように赤茶色の膝上ロングブーツを履いており、爪先や踵部分が金属で補強されていたりと実用的だ。
そんな『鎧を脱いだラフな騎士』といった雰囲気のスマートな服装の上からドラゴンの皮で仕立てたフード付きコートを羽織っている。
こちらも着色してもらっており、色は淡い紅色でブーツと似た色合いだが、コートの方は淡くも鮮やかで目に優しい。
腰にベルトをコートの上から巻いているので、コートをしててもスマートなシルエットになってる。
最後に左腰に装備した片手剣だな。
うん、かっこいい。
あとこれは口に出せないけど若干エロい。
体のライン自体がなぁ、実は胸は大きいし腰はくびれてるしで男の目を引く体型してるのに、それが際立つ装備だもん。
肌の露出自体はほぼ無いのに、どうにもエロい。ごめんなさいリーダー、俺も男なんです。
「くぁあ……長閑じゃの。昼寝したくなるわ」
ルナ?ヤツはダメだ。
初期の黒のワンピースオンリーは卒業したとはいえ、今の格好は黒のタンクトップに青のショートパンツ。足元は安物の靴。以上である。
実はこれら全て安物である。なにせ100万の小遣いはほぼ食費に消えたし。
もはや真夏の深夜にコンビニに行く若い女性みたいな格好である。肌色面積がやばい。
いや俺は嫌いじゃないんだけどね?目の保養的にもね。ごめん相棒、俺も男なんだ。
ただその格好でダンジョンに潜ろうとするから、周りからの視線がすごかった。性的な視線ではなく、正気を疑う的な視線がだ。
まぁ上からローブを羽織ってはいるけど、俺とルナはディアナやルミアと違ってただの布だ。
色も濃い灰色の一般的なヤツだから、余計にルナの装備の貧弱さが際立つ。おまけに武器も持ってないしね。
「まぁ初級らしいしなぁ。何気に俺も初の初級ダンジョンだわ」
俺の装備は……実はあんまり変わってない。
変わってないというか、普通にロングTシャツとズボンなんだよね。
実はこれ、ディアナやルミアみたいに『冒険者としての服』とかではなく、ルナと同じく普段着である。
じゃあルナの事言えないじゃんって?いや俺も色々見て回ったんだよ。
せっかくの異世界だし、かっこいい装備を着たい!と思ってさぁ。
でもルナと一緒に見て回ったんだけど、どれもこれも俺達の肉体強度以下、もしくは同程度だった。
じゃあ意味がありそうな装備は、となると手持ちの金では一桁二桁足りなくなる。
結果、普段着のままになった。せめてもの抵抗でちょっと質の良い服を買った程度だ。
ただ高品質なベルトは買ったよ。マジックバッグを吊り下げる用のヤツ。
今までポケットに入れてたし、取り出すのが手間だったのを解消する為だ。
マジックバッグは左腰に下げており、咄嗟にでも手を突っ込みやすい位置にしてる。イメージ的には鞘代わりになる感じだ。
「おっ、魔物だ。何あれ、コボルト?」
「あほう、どう見ても犬じゃろ」
「全然違いますっ、グリーンウルフですっ!ウルフ種でほぼ最弱ですけど、群れで行動するから気をつけないとです!」
「「はい……」」
俺とルナに叱るように説明する幼女ルミア。なかなか情けない絵面である。
「じゃあナギとルナはルミアに一匹残して討伐、その後も魔物が寄らないように警戒。わたくしがルミアのフォローに入るわ」
はーい、と頷き、敵がこちらに走り出したのを待ってから俺とルナが駆け出す。
グリーンウルフは4体。二匹固まってるのでそちらに向かうと、何か言うまでもなくルナは少し離れた位置の一匹へと向かった。
「ふんっ」
マジックバッグから引き抜いた剣を振り抜く。まぁ当然というべきか、一振りで終了。
ただ、その斬れ味に目を丸くした。
「うわやっばぁ。斬った感覚ほぼなかったわ」
これぞおニューの武器よ。
黒い刀身は150センチくらいだろうか。長めにつくってくれと言ったがマジで長い、いわゆる大剣だ。
二次元ならともかく、現実で見たらアホかなってくらいデカく見える。
巨人の黒い角を削り、叩き、圧縮して、と頑張って加工してくれた大剣は、ルナの注文通り片刃で峰が分厚い。
刃先側から見たら、普通の刀なら鋭い二等辺三角形になる刀と違い、こいつは鉛筆のシルエットみたいな五角形だ。
それと不思議なのは元は角のくせに、磨いたのかコーティングしたのか金属チックな光沢がある。
かっこいいから嬉しいけど、どういう技術なんだろこれ……。
ちなみに鍔はドラゴンの牙を転用してる。柄は芯が刃部分と繋がる黒い角から延びた形になっており、その上にドラゴンの革を巻いている。
つまりだ。
「めっちゃかっけぇ」
見た目も性能も最高です!こんなのテンション上がっちゃうって!
しかし振ってみて分かったけど、上手く刃を立てれてなかった。まだまだ剣の扱いは下手くそだが、それでも雑魚なら両断できる斬れ味がある。
しかしまぁ……色々忙しくてすぐ卒業した中ニ心を今更ながらくすぐる黒色の刀身。
やばい、嬉しい。
「何をぼけっと剣を見とるんじゃ。周りの警戒とルミアの初戦闘を見てやらんか」
「あ、うっす」
ルナに叱れちゃった。まぁ完全に俺が悪い。
なんせ謎空間時代は常に切らさなかった警戒までガチで解いてたし。浮かれすぎぃ。
切り替えてルミアを見ると、白地に装飾が施された長方形の盾と、刀身から柄まで真っ白なショートソードを持って構えていた。
後ろには既に片手剣を抜いて構えるディアナ。こちらの剣も真っ白な色合いだ。
二人の剣は姉妹剣として造られ、色合いは共に真っ白。
刀身はドラゴンの牙で、柄もドラゴンの革。まさにドラゴン一色の剣である。
あとやはり刀身には金属を思わせる光沢がある。いやマジで何なんだろこの技術。
「てえいっ」
睨み合っていたルミアとグリーンウルフだが、先に動いたのはルミアだ。
盾を前に構えて駆け寄りながら、右手のショートソードを振り下ろす。
それを横に回避して即座に噛みつこうと反撃するグリーンウルフ。ルミアは慌てて盾を挟むが、体格差で押し倒されてしまう。
馬乗り状態にされてしまったルミアは……まぁ普通ならこの時点で敗北だな。
「うぅうう、『結界』っ!」
しかしここで『聖護術師』の本領発揮。
ルミアを起点とした球状の結界が広がり、グリーンウルフを押しのけるようにして吹き飛ばした
が、攻撃力としては皆無であり、グリーンウルフは綺麗に着地。お互い睨み合い、また振り出しに戻った形だ。
「うーむ、まずは身体能力を高める為にもぱわーれべりんぐ、とやらから始めるべきじゃの」
「だよなぁ。普通の幼女が狼と正面戦闘するとか地球なら大事件だわ」
我らがリーダーも同じ考えのようで、ルミアに声をかけたディアナが代わりに前に出ていた。
今度はグリーンウルフから攻勢に出て跳びかかったが、踏み込みながら斜め前にすり抜けるようにして回避。と同時に片手剣を振り抜いて両断した。
「おぉ、鮮やか」
「うむ、それなりに慣れとるようじゃの」
鍛えていたというのは本当らしく、澱みのない動きだった。
力や速度はイマイチに見えたけど、ドラゴン由来の片手剣の切れ味もあってそこらの魔物じゃ相手になりそうもない。
「うぅうう、勝てなかったですぅ……」
反面、へこむのはルミアだ。
しかしこれは仕方ない。これから強くなればいいワケだしね。
しかしディアナが仕方ないと慰めてもなかなか立ち直らない。
ルミアからすれは憧れの冒険者、その初戦闘だ。勝ちたかったのだろう。
「んー……なぁルミア」
「……なんですぅ…?」
ありゃー、普段元気いっぱいのルミアががっつりへこんでる……。
「物語の勇者ってさ、時には強敵に負けて、それでも立ち上がって強くなって、最後には必ず勝ったりするじゃん」
そう告げると、そろりとルミアが顔を上げて俺を見た。
「だからルミアも、今負けたって次勝てばいいんだよ。また強くなったらちゃんと今の魔物と再戦できるようにするからさ」
彼女の頭を撫でて、口調を軽いものに切り替える。
「それに俺なんて最初はルナが死にかけの魔物を転がしていったのをトドメを刺して回るお荷物雑用スタートだぞ?いきなり戦えてるルミアはすごいよ。俺より強くなれる」
「……ホントですか?」
「おー、本当だ。仲間だから強くなる手伝いもするしな。だって俺達パーティだろ?」
ルミアは俺を見て、ルナとディアナを見た。
視線を一周させたルミアはぐっと噛み締めた後、にっこりと笑った。
「はいっ!絶対強くなって恩返ししますんで、あたしを強くしてくださいっ!」
復活したルミアに安心しつつ、俺達は口々に任せろという旨の言葉を返した。
特にルナなんかは「ナギをゼロからここまで鍛えた我がおるし安心せえ」とドヤ顔してた。
それからディアナの指揮でダンジョンを進む役割分担や連携の練習をしようとしたが、それはあえなく失敗に終わった。
まぁルナどころか俺一人で全部こなせるレベルのダンジョンだし、連携しようにも一瞬で終わるのだから訓練になるはずもない。
呆れたディアナの冷めた目から逃げるように進み、トドメは全てルミアに任せながら潜っていくと、あっさりゴールの12階層のボスを倒して攻略した。
結果、ルミアのレベルは一気に上がり、これならばと帰り道にグリーンウルフと戦う事に。
戦い方もレクチャーして、一対一にするよう間引きも当然した。
そして俺達が手に汗握って見守る中。
「か、かっ、勝ったーっ!勝ちましたーっ!」
「「いぇーい!」」
「よくやったわルミア!」
10分を超える戦闘の末、ついにルミアが勝利したのだった。
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