第四章 初仕事
第16話 翌日
翌日の放課後、風紀委員会室には腹を決めた二人の二年生が委員長と対面していた。昨日同様、その委員長は二人の前に、冷たい麦茶を置いた。
「それで、お返事なのでしょうか。それとも、もっと話が聞きたいということでしょうか」
弾正は委員長専用の席に座り、二人と対面した。
「前者です」
門野は即答した。弾正が視線を長木に向けると、彼女は目で同意を表した。
「そうですか。即断していただいて助かります」
ニッコリと笑みを作る。引き出しを開けて、そこから取り出したものを二人に渡した。「バッチ?」
それを手にして門野は困惑した。少年探偵団かよと一言を放とうと思ったくらいである。
「まあ、市長命令とはいえ、市的にも学校的にも公的な組織ではありませんし、風紀委員会直属でありながら独特な組織です。僕が長で、お二人が執行委員。それを分かってもらう必要があります。それがこれです。このバッチをしていれば、特殊任務……言い過ぎですかね? そういう特命的な者であることが分かります。あ、デザインの良し悪しは、僕に言わないでくださいね。市長自らが意匠したらしいですから。それに…今日釘を刺されていますし」
テヘペロなんてものが場にふさわしくないのだが、長木はそれが卜部がしたものだと思った。
「市長もバカじゃありません。未成年をおめおめと危険の中に浸すわけじゃない。そのバッチは魔除け効果もあるんです。ある一定のレベルに満たない異人や悪さをする輩は、これが近づくだけで退散するというわけです」
「十分危険だと思うんですがね。だから俺たちが招集された。未成年てことで」
「正鵠を射てますね。まあ、しかし適切な対応策だとも思もいませんか。そのおかげで正規の風紀委員が苦労しましたが」
「これからはその苦労が俺たちにってわけか」
「苦にならなかったりして」
きっと意にも介さずにどんな論でも弾正は返してしまうのだろうと短い会話の中で、門野は思い知らされた。
「とういわけで早速ですが、今晩から仕事開始です」
「ずいぶんいきなりですね」
黙りこくっていた長木がようやく口を開いた。
「ちょっとね。気になることがありまして。もちろん、僕も出張りますから。ご家族にもちゃんと言っておいてくださいね」
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