第6話 自室へ

 自室に入る。蒸し暑さが床からこみあげてくる。廊下の冷え冷えとした感とは対極である。カーテンを開け、それから窓を開ける。かと言ってすぐに涼しくなるわけではない。扇風機のスイッチを入れる。首を回して室内の空気が循環していくと、ようやく若干の涼があった。制服を脱ぎ、箪笥からタオルを出して、流れる汗を拭う。背中に張り付いたティシャツは脱ぎにくい。白色のポロシャツに腕を通す。ズボンはハーフパンツに履き替えた。ベッドに身を預ける。質のいい畳敷きの部屋には不釣り合いな簡素なシングルベッド。門野は天上を見つめながら、思い出していた。長木アンジュが見えると言った、自身の身に憑く者との出会いのことを。

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