第二章 門野治

第4話 帰宅

 門野治は重厚な門の前に立っていた。分厚い表札には「門野」の文字が見える。木製の門を開けて内に足を入れる。和風住宅のでかい屋敷がそこにあった。玄関を開けると広々たした廊下に

「ただいま」

 というあいさつはこだましなかった。ひんやりとした感じがするのはクーラーが効いているというだけのことではなかった。

 足音が近づいてくる。壮年の体つきがしっかりとした男性が和服に身を包んでいる。

「おかりなさいませ」

 門野に向かって一礼をする。

「ああ、ただいま」

 この風景。日常毎日繰り返されているにもかかわらず、門野には慣れることができなかった。

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