第4話 ヒカルとガンリ


明日から夏休み明け中2の2学期が始まる。

男子校の僕は特に制服が変わる悲しさもなく。普通だ。

共学に行った友達は「あー、夏が終わる女子の制服が・・・」と男子のさびしい胸の内を僕に語る。

僕の友達。そう、親友のケイタだ。

小4で塾に入り、そのまま中学受験。

第一志望の共学へ。合格。

遅れて塾に入った僕は結局、

第二希望の男子校。

合格発表直後は少しギクシャクしたが、そこは幼なじみだ。

家が近所だからたまに会う。

時間があれば家でゲームもする。

学校が違ってもケイタはケイタだ。

まだ、彼女はいないらしい。

が女子が学校にいるだけで僕にはうらやましい限りだ。

僕と言えば・・・ちらりと真横をふわふわ飛んでいる天空の姫ガンリを見た。

小学生の時から妄想ばかりしていたから

「はあー。」大きなため息をついた。

ガンリが「ヒカル、どうした?こんなに美少女の姫様が近くにいて嬉しすぎで困ったのか?」

声が聞こえる。姿が見える。

たぶん妄想?いやいや。夢なのか?

「ばーか。そんなわけないだろう。」

信号が変わる。

空を見る。雲がある。横を見る。ガンリがいる。

「はあー。しょうがない。家に来てもいいぞ。」

ふわふわ浮いていたガンリが地上に足をつく。

僕と肩を並べる。

「ありがとうヒカル。」美少女の顔が僕の肩にのる。

「近っ。」

「ガンリ。信号が点滅だ。走るぞ。」

ガンリは「それなら。」と僕を抱えてふわーッと信号を渡り切った。

僕の足が地面に戻る。まわりの人達は誰も驚かない。

見て、見ぬふり。

ガンリが「さっきも言ったけど、地上の人間ってこんなものよ。

他人のことなんか気にしていない。」

「そうなのか。」

そう口から言葉が出たが少し、寂しかった。

信号からまっすぐ歩き右に曲がる。

「着いたぞ。ここが僕の家だ。」

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