第5話 ヒカルの部屋
「ガチャン。」
「ただいま。」
僕は家に入る。
ふわふわとガンリも家に上がる。
台所から声。
「ヒカル、もうすぐご飯よ。」
「はーい。部屋にカバン置いてくる。」
いつも通りの会話だ。
僕は手を洗い部屋に行く。
カバンを机に置いた。
さて、このガンリどうしようか。
家に来てもいいぞと言ったものの。ご飯は?
「そうだ。ガンリ。ご飯は?
お腹空かないか?」
「ヒカル。私のことを心配してくれるのか?」
「まあーな。家に連れて来た責任がある。」
「ヒカル。お前は相変わらず、真面目だな。
だから天空の姫ガンリ、私と目が合うんだ。
一億万年に1人だ。最初に言ったぞ。
小4の時もヒカルも中2のヒカルも同じね。
ヒカル、今も子供みたい。空ばっかり見てさ。
そ普通の人間は、さっきと同じで
見えていても見ないふり。あえてスルーだ。
ヒカル、お前は優しすぎる。」
「僕は優しくなんかないぞ。」
少しガンリになめられている気がして
僕のプライドが傷ついた。
「それだ。それ。」ガンリがふわふわ僕の部屋で浮きながら僕の心の中に侵入する。
「やめろガンリ。勝手に僕の心を読むな。」
「きゃあ。ヒカルが怒った。ははは。」
ガンリが軽く笑った。
「でもヒカル、ありがとう。
私のこと心配してくれて。
でも大丈夫。
ビジュアルは美しい美少女の姫だけど、
ほら私は雲でしょう。水があれば大丈夫。
人間のような固形のご飯は食べないのよ。
水。水をちょうだい。
でもヒカル、人間が飲むジュースはだめよ。」
「そうか?ジュースの方が甘くて
おいしいのにな。」
ガンリは「それじゃダメなの。」と少し強めに断った。
「そうだ。」僕は机の上に置いたカバンの中からペットボトルの水を出した。
さっき図書館の帰りに暑くてさ、ジュースを買おうとしたらみんな売り切れ。
水だけあったから買ったんだけどさ。
結局飲まずにカバンに入れたままだった。
これだ。
「ガンリ、ほら。」と渡した。
ガンリは水をゴックンと飲んだ。
「おいしい。見てみてヒカル。
私、なんだか人間みたいでしょう。」
「そうだな。」
うれしそうに水を飲むガンリの姿が、
小さな子供のようでとても可愛かった。
「じゃあ、僕はご飯を食べてくるよ。
部屋、好きに使ってていいから。」
「ありがとうヒカル。」
僕は部屋を出た。
エアコンの温度をガンリは下げた。
そして「カチャカチャカチャ。」とPCを使いはじめた。
『雲』検索。『水蒸気、水と氷でできている。』
「地上は暑いよ。ヒカル。」
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